あらすじ
井上ひさしが生涯考え続けた、日本と日本語のこと。母語と脳の関係、カタカナ語の弊害、東北弁標準語説、やまとことばの強み、駄洒落の快感……溢れる知識が、縦横無尽に語られる。「日本語とは精神そのもの。一人一人の日本語を磨くことでしか、未来は開かれない」――母校・上智大学で行われた伝説の連続講義を完全再現。日本語を生きるこれからの私たちへ、“やさしく、ふかく、おもしろい”最後の言葉。
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Posted by ブクログ
井上ひさしさんが大学で講義した内容をまとめた作品。
非常に面白いです。
正直読んでいて、自分自身がしっかり日本語使えているのか
心配になります。
井上ひさしさん独自解釈の日本語の起源や
現在の日本語のついての説明は、
ユーモアもあり、非常に分析されていると思いました。
(作品中では何となくそう思ったといった感じですが)
小学~高校で学んだ国語の文法とか正直
よくよく思えば、あまり厳密に思い出せない。。。
なんだか学校の参考書を読み直したくなる本でした。
Posted by ブクログ
日本語教室
著者:井上ひさし
発行:2011年3月20日
新潮新書
2001年、当時、最も正しい日本語を使う作家とされていた井上ひさしが、母校の上智大学で4回にわたって日本語について講演したものを書き起こしてまとめた新書。軽いタッチで非常に充実した、しかも誰しもが興味津々となる内容でした。
著者が手書きで思いつくままにまとめた現在の日本語成立過程の図は圧巻でした。仙台一高出身の著者、縄文時代の標準語は東北弁だった、と主張。
主格を示す格助詞「は」と「が」の使い分けについても、我々が教えられた常識とは違うことで結論づけていて、誠に勉強になりました。
外来語の問題点
再生、改良、仕立て直し、改築、増築、改装。日本語にはたくさんの意味があるのに一言で「リフォーム」と言ってしまうことが問題。
「イエスかノーか」はだめ
デジタル思考にすぎない。本当はイエスとノーとの間に大事な領域がある。国連の公用語に戦勝国の言葉だけでなく、なぜスペイン語が含まれるか。それはスペインがどちらの立場の国に対しても間に入って大きな貢献をしたから.
理想に一番近い文章を書く人
丸谷才一か、大江健三郎か(でも少し漢字が多い)
言葉の長さ
英語やフランス語で2時間の芝居を日本語に訳すと4,5時間かかる。言葉が母音で終わり、音節の種類が少ないから。
濁る、濁らないの区分け
茶畑の畑は「ばたけ」と濁るが、田畑の畑は「はた」と濁らない。前者は畑がメインだから。つまり、茶の畑だから。田畑は田と畑で同等。「弾きがたり」と「弾きかたる」は、用言と用言が重なるから濁り、用言と体言だと濁らない。
そばの数詞
ざる蕎麦は、更科系が「枚」で、天竜系が「杯」。
「は」と「が」の使い分け
格助詞の「は」について、以前は区別の「は」と言われていたが、大野晋が研究を重ねて結論を出した。
例えば、「おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」
これは区別の「は」ではなくて、既知の旧情報は「は」、未知の新情報を受ける場合は「が」を使っているに過ぎない。未知の情報、おじいさんとおばあさんのことは「が」であり、すでにそれが出てきた既知の旧情報だから柴刈りや洗濯は「は」となる。
日本語の成立
①原縄文語
↓
②前期九州縄文語→琉球縄文語→琉球諸方言
→表日本縄文語→山陽・東海方言
→裏日本縄文語→東北方言
↓
後期九州縄文語 ↓
↓ ↓
③原弥生語=後期九州縄文語+裏日本縄文語+渡来語
↓
弥生語
↓
関西方言
↓(+漢語やラテン語、ポルトガル語など)
官制日本語
↓
現・日本語
↓(+英語)
?語
*つまり、昔は東北弁が標準語だった、その一部が今も出雲地方に残る
後、大野晋「タミール語源説」通りに渡来語が入り、弥生系、関西方言になり、それが広まった
日本語をあてた際の罪
例えば、「ライト」を日本語に訳した時、仏教でいう力ずくで得る利益の意味の「権利」をあててしまったのが過ちだった。西洋では当然の「ライト」が日本ではやましいニュアンスもある「権利」となった。権利を主張するなら義務を果たせ、という風潮が出来てしまった。
標準語とは
東京の山の手言葉だけとは限らない。
例えば、おまわりさんの官制標準語は常陸(ひたち)弁。「○○であります」は山口の言葉。
日本はよい国か?
ボストン大学の社会学者メリー・ホワイトの言葉。
「アメリカはよい国か。イエス。ただし、奴隷制や、先住民族抑圧や、日系人の強制収容や、無差別爆撃や、原子爆弾の投下や、ベトナム戦争がなければの話だが。日本はよい国か。イエス。素晴らしい国である。ただし、台湾・朝鮮の植民地化、満州国のでっち上げ、それからオキナワとアイヌに対する差別、被差別部落、それから在日韓国・朝鮮人に対する抑圧、それから従軍慰安婦問題、そして南京虐殺を除けばだが」
山梨県の奈良田という村、名古屋弁
戸数が50戸ぐらい。「つ」という音が巻き舌になって「トゥ」になる。月見はトゥキミ、狐はキトゥネ。名古屋弁は「え」が「ええー」、「お」が「おおー」になる。だから、「エエービフリャー」となる。