あらすじ
【最新研究から見えてきた精神疾患のしくみと治癒への道筋】
・うつ病の脳では炎症が起きている?
・遺伝要因と環境要因、どちらの影響が強いのか
・統合失調症の幻覚は、脳の神経回路の配線障害が原因?
・ロボットが、自閉スペクトラム症の患者を支援する
・ゲノムの中を飛び回る遺伝因子が統合失調症を引き起こす?
・認知症薬でPTSDのトラウマ記憶を消せるかもしれない
・精神疾患の根治薬の開発を実現するには ……など
うつ病、自閉スペクトラム症・ADHDなどの発達障害、PTSD、統合失調症、双極性障害……
多くの現代人を苦しめる「心の病」は、脳のちょっとした変化から生まれます。
誰にでも起こりうるこの病は、何が原因で、
どのようなメカニズムで生じるのでしょうか?
さまざまな角度から精神疾患の解明に挑む研究者たちが、研究の最前線をわかりやすく解説。
そのしくみから、「治る病」にするための道筋まで。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
精神疾患や発達障害といえば、脳そのものの異状がわからないということであったが、最近の研究で、脳自体の小さな変化がこうした疾患や障害の発症に関わっているということが判明しつつあるというのである。
私自身発達障害の当事者ということもあり、自分自身どのような状態にあるのかを知りたくて読み始めたが、この状態について知ることができた。今後研究が更に進めば、その脳の変化に働きかけられるような治療法も確立できるのかなと、期待を持てるような1冊だった。
Posted by ブクログ
一読では充分理解しきれないが、心の病気を医学的に理解できれば、心の病気を持つ人を理解するのに役立つのは間違いないと感じる。再読再再読して、理解を深めたい。
Posted by ブクログ
専門用語満載だけど、分かりやすくて面白かった。
精神疾患を「心の病」だと思っていたが、「脳の病」である。心は脳の働きで生み出されるのだから(そもそもそんな認識がなかったのだけど)、脳の病なのだろう。
でも、この本を「初めから」読んでいくと、複雑な脳のメカニズムやら、なんやら?で、色々あるのに?何故かとても素直に納得できた(不思議だ)
ただ脳はあまりにも複雑で、環境等々様々な影響を受けるし、生きている人間の脳の状態を細部まで調べるのは不可能に近い。このような厳しい状況下で人間界を代表するトップクラスの頭脳の持ち主である数多の研究者たちが模索し根気よく精神疾患を「治る病」にすべく奔走されていることに敬意を払わずにいられない。
Posted by ブクログ
レビューが追いつかない…
新生活が始まってすぐにゴールデンウィークに入って、そのまままた新しい一週間が始まった。
仕事も、楽になったはずの通勤にもあんまり慣れなくて、なかなか読書の時間がとれない。当然、レビューを描く時間なんてもっととれない。
先月読み終わった作品のレビューを、今さらながらに描いてみることにする。
これだけ医学が進歩しても、未だに解明されていない、うつ病、統合失調症、発達障害などの精神疾患の謎に迫った作品。
無事精神保健福祉士の資格を取得したわたしとしては、とても興味深い作品として手に取った。
(みなさん本当に応援してくださりありがとうございました!)
細胞学、遺伝学、神経学など、それぞれの専門家がそれぞれの立場で、最先端の研究をもとに、精神疾患の謎に迫る。
どのように発症するのか。
脳の、細胞の、神経の、どの部位が反応しているのか。
日々、実験を重ねる。
途方もないことだなと思う。毎日仮説検証していく日々というのは。
だからこそ、そこから得られる発見はとんでもないことで、山中伸弥さんが発見したiPS細胞は、こうした研究を重ねる人たちにとって、とてつもない成果だったことがわかる。
ただ、分かりやすく描かれているとはいえ、やはりすごく読むのに労力というか脳みそを使う作品で、かなりエネルギーを使った。
「シナプス」なんて言葉も、精神保健福祉士の勉強の中で触れたものの、当時教科書のどこを見ても鼻と鼻クソにしか見えない図しか載っていなくて、全然分からなくて、結局理系の知人に猿でも分かるように解説してもらったのだ。結局、脳の話に触れるには、まずはこの「シナプス」を理解しなきゃならない。わたしはそうやって事前に知人から聞いていたから、この作品の冒頭でシナプスが出てきた時になんとなく読み進めることができたけれど、その後出てくる塩基配列やDNAについて触れられている部分なんかはもう大苦戦!
各専門分野で、精神疾患について分かってきている部分も増えてきている。ただ、現在のように、体調不良を抱えた患者が病院を訪れ、自分の症状を伝える、というやり方では根本的な原因が分からず、対処療法にしかならないのだ。
その体調不良(例えば、抑うつ状態)の原因が、脳にあるかもしれないし、遺伝子にあるかもしれないし、環境にあるかもしれない。もしくはそれら全てが関与している可能性だってある。それらは、患者が自分の状態を伝えるだけでは見えてこない。さらに、それを伝えたところで医者がそれをどう捉えるかもわからない。ここで紹介されている研究が実用化され、誰でも平等に検査が受けられて、ふさわしい治療を受けられることができるようになるには、どうすればいいのだろう。そしてそれには、何年かかるのだろう。
例えば、ここで様々な分野の専門家が発表した最先端の実験結果を、それぞれの分野の専門家が共有して「なるほど!」ってなって、また新たな発見があったりするんだろうか。そうやって分野を超えて横断的に精神疾患を捉えた時、精神疾患はもはや精神疾患ではなく、脳の疾患、遺伝子の疾患、とかになっていったりするんだろうか。
わたしにはそこまでの発展的な理解はできなかった。
「なるほどー」と思ったり思わなかったりして、とにかくついていくのに必死だった。
そして今は、新しい職場で、新しい日々についていくのに必死な毎日を送っている。
Help!
Posted by ブクログ
ADHDの原因は以下の4つであるという仮説がある。
1.実行機能不全
2.時間感覚の障害
3.報酬系の障害
4.デフォルトネットワークの障害
4.は、新しい刺激に対して、ネットワークが上手く作用せず過剰反応してしまうという仮説。
ADHDは、感覚が鋭く傷つきやすい特性がある。投薬療法のメリットは、行動が慎重になること。リスクを取らない傾向になる。デメリットとして、興味が湧かなくなったり慎重になりすぎて行動ができない、などの弊害がある。投薬の良し悪しを判断して、ある期間は止めることも選択肢として入れることが重要かもしれない。
Posted by ブクログ
ややハードな内容であったが、論文を読んだときのような満足感があり、現状で最先端の研究を知れたのではないかと思う。とくに、自閉症で見られる感覚過敏の仕組みが興味深く、また、ロボットとのコミュニケーションについてはなるほどなと思った。統合失調症の幻覚や妄想についても、シナプスの発火するタイミングが関係している可能性があることを知れてよかった。
Posted by ブクログ
なかなか読み通すのは大変ではある。
でも、精神疾患についての研究の現在の、一角は見えてくる。
パーキンソン病やアルツハイマー、ALSなど、脳細胞が大量死する「神経変性疾患」は、脳そのものの変化から診断される。
けれども、精神疾患は、従来確認できる脳の異常がなく、症状から判断するしかなかった。
そのため、ある症状が主症状なのか、他の障害から来る二次的なものなのかの判別も難しく、投薬その他の治療がうまくいかないこともあったという。
本書は、そういった精神医療の困難に対処するため、さまざまなアプローチの研究が発展したことを紹介していく。
脳の神経細胞のはたらきを解明して、神経の情報伝達回路の変調を調べる研究。
疾患の発症に繋がりやすいゲノム変異を探る研究。
環境要因としての慢性的なストレスや身体的な不調から脳内炎症のつながりを見て、疾患の原因をつきとめようとする研究。
ニューロフィードバックの新手法を用いて、PTSDの治療につなげるという研究や、ASDの子どもたちの社会性を発達させるためのロボットを用いた療育の研究なども紹介されている。
脳の報酬系を操作して感じ方を変えていくニューロフィードバックは、ちょっと恐いような気もするけれど。
過去には見えなかった変調がfMRIなどの新しい技術で見えるようになった。
その成果の一つでもある神経伝達の特性についての研究が進めば、創薬にもつながる。
治らないと言われていた精神疾患も、やがて治る時代がくるのかもしれないと思った。
「障害」であるASDやADHDも、この障害への認識は今後変わっていくのかな、と感じた。
ASDはスペクトラムだと近年よく強調されている気がする。
本書を読んで、ADHDもそれに近いものなのかな、と思った。
本書で紹介される研究にこんなものがあったからだ。
子どもの頃そう診断された人で、大人になってもそう診断しうる状態の人は6人に1人。一方、大人になってからADHDの症状が出てきた人で、子どもの時そう判断できる症状があった人はわずかだったという。
たしかに、自分について考えても、子どもの頃よりかなり集中力を欠いていることが増えてきた気がするし・・・。
患者さんの苦痛が少しでも減っていくのは間違いなく喜ばしいことだ。
ただ、新しい知見や技術を受け、社会がどうしていくのかは、また別の問題。
健康な人を基準とした社会に、病や障害を持った人を無理矢理適合させるなんてことにならないようにしたい。
Posted by ブクログ
12の先端研究が「こころの病気」もなんらかの物理的異常に由来することを可視化する
国内の12の先端研究を研究者自らが解説する形式なので「かなり高度」。医師や医学生、あるいは生物学の研究者向けの本と考えたほうがいいくらいのレベル。しかし、かなりバラバラな研究の寄せ集めでもある。入口としてはいい。この先、診療をやりながらこの本に書かれていることが実用化されていくのを実感するときが来ると面白い。
第1部は病因論の総論3題
第1章 シナプスから見た精神疾患(研究者リンク)
第2章 ゲノムから見た精神疾患(研究者リンク)
第3章 脳回路と認知の仕組みから見た精神疾患(研究者リンク)
シナプスにおける「グルタミン酸」と「ガンマアミノ酪酸(GABA)」の関係、シナプス可塑性など基本を学ぶ。ゲノム領域の研究手法ーNGS時代の研究。もう一度回路にもどって。
第2部は実際の疾患とその原因を探る研究3題
第4章 慢性ストレスによる脳内炎症がうつ病を引き起こす?(研究者リンク)
第5章 新たに見つかった「動く遺伝因子」と精神疾患の関係(研究者リンク)
第6章 自閉スペクトラム症の脳内で何が起きているのか(研究者リンク)
第7章 脳研究から見えてきたADHDの病態(研究者リンク)
うつ病の化学説。動く遺伝子「レトロ・トランスポゾン」→LINE-1、これは面白い。なんとヒトDNAの半分近くが動いたあとの遺伝子の残骸。ADSモデルマウス。ADHD、他人ごとではない。
第3部は治療とからめた研究5題
第8章 PTSDのトラウマ記憶を薬で消すことはできるか(研究者リンク)
第9章 脳科学に基づく双極性障害の治療を目指す(研究者リンク)
第10章 ニューロフィードバックは精神疾患の治療に応用できるか(研究者リンク)
第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する(研究者リンク)
第12章 「神経変性疾患が治る時代」から「精神疾患が治る時代」へ (研究者リンク)
メマンチンによる海馬記憶のコントロール。神経変性疾患が2010年頃から治る病気になり始めている!
Posted by ブクログ
統合失調症、双極性障害、ASDやADHDといった発達障害、PTSDなど、「心の病」についての脳研究がどこまで進み、それが治療にどう生かされるかという最先端の研究を平易な形で述べられた本。平易といっても現在の研究は分子医学であり、理解が難しい。多少、臨床に生かせれそうな知見もあるが、精神疾患自体が単純な遺伝的要因だけではないため、研究が難しく、その本体に迫るのは困難なようだ。しかし研究者の言葉は明るく、未来は必ず開けるという姿勢には好感が持てた。
Posted by ブクログ
うつ病と脳の関係が知りたくて読み始めた。
専門用語が多く、脳機能を全く知らない立場からすると実験の結果を報告されてもいまいちピンとこない。だが、適応障害やうつ病、双極性障害の違いがわかり、このような症状が発症するかどうかは遺伝も関係していることが知れて為になった。
Posted by ブクログ
いわゆる精神病と言われる病。
「うつ病」「統合失調症」「双極性障害」「ASD」「PTSD」等など。
これらは目に見えない人の心の領域ではあるが、現存する物質である人体を依り代としているのだから物理的・生物学的な現象がどこかに生じて、このような病を発現しているはず。
というように精神病の結果系を見るというよりは、現象の原因として遺伝子や脳内の神経細胞を探ろうという試みの紹介である。
が、正直門外漢には難しすぎて途中で興味を失ってしまったので☆3つ。
ただ、よく聞くうつ病、双極性障害、統合失調症はみなよく似たものだと思っていたが、その発現機構は全く違うことに驚いた。
Posted by ブクログ
脳科学の本、おもしろそう、と手にしたが、
難解!学術的!科学的!専門的!テクニカルターム続出。ついていけない。
やがて気づきました。これはブルーバックス。
難しいのは当然だった。
ということで、わかるところだけつまみ食い。
ASD。自閉スペクトラム症、コミュニケーション障害。
ADHD。発達障害。
そこに書かれている症状は、いま私が頭を悩ませている相手の特徴と酷似する。
苦手なこと
・興味が薄いことに注意が持続しない
・あることに関心を持ち続ける
・忍耐強く待つ、取り組むこと
・ミスのない作業、作業の完結
・感情をコントロールする
・分析的な思考
・順序だてて説明する
・巧みな嘘をつく
・傷つきからの立ち直り
下6つはぴったり。
こういうものを背負ったうえで、
どうやって社会人生活を送ってもらうか、だな。
遺伝子、環境、、、
脳はまだまだ奥深い。謎だらけだ。
Posted by ブクログ
さすがのブルーバックス、素人目線では専門的なお話が多く、理解するほど読み込めませんでした。
「どうすれば治るのか」については、あまり身近にできそうなことは少なく、まだまだ研究段階なのだなという印象でした。
Posted by ブクログ
神経変質疾患や、精神病を、脳の機能から分析、対策の進化や、問題に触れる。
各章毎に筆者が異なっていることもあって、幅広い上に、一個一個の掘り下げが深いこともあって、まとまりもなく、逆に浅い感じもして、えー、難しかったです。
ちょっと興味のある人が読むには向いてないかな。
入り口ではあるが、マジに、興味がある人向けな気がする。