あらすじ
日本人の数学アレルギーはきわめて深刻である。本書は博覧強記で知られる筆者が、古今東西の逸話を交えつつ、数式を使わずに面白く数学の本質を解説する。
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Posted by ブクログ
最近機械学習関連で数学を学んでいるが、著者である小室氏がその数学についてどんな論を展開するのか、興味があって手に取った本。
結果、すごくタメになった。
通常の数学本には数式がかならず出てくる。
著者は物理学や数学を大学で学ばれているので、そういう本にも出来たはず。しかし、この本では数式はほぼ出てこない。
なぜ、数学が西洋(宗教)から生まれたのか、ここまで発展したのか、などが簡易な文章で語られている。1つ1つの論はそれほど詳細ではないけれど、神との対話で生まれた(形式)論理学が、数学を理解する上での要諦だということは腑に落ちた。たしかに需要だ。
日本の数学教育では、命題や同一律・矛盾律・排中律、対偶・逆・裏、必要条件・十分条件などの論理に関してはほぼ時間を割かない。自分も勉強した記憶がほぼない。良く考えれば、なぜ高校数学の授業で命題とかをやってたのか不思議だったのだが、この本読んでその理由がはっきりとわかった。むしろ、数式を覚えるより、この論理を覚えた方が社会に出たとき数倍役に立つ。数学を学ぶと論理的思考が身に付くのも、結局この形式論理学の基礎を数学を通して無意識に学んでいるからなんだろう。
また、西洋と東洋の論理の違い、そして日本の論理がさらに異なることなども興味深い。宗教的バックボーンが薄い上に、仏教の空思想がなぜか好きな日本人に、西洋の論理が根付かないのはたしかに納得できる。玉虫色が好きだもんね、日本人って。要するに矛盾してるってだけなんだが。。
空思想から数字のゼロが生まれたのかな?
西洋の数学にゼロを混ぜると、色々と矛盾が出てくるもんな。分母がゼロだと分数も崩壊するし。
なお、後半に書かれていた資本主義や経済学の話は、小室氏の別の本と内容が被っていたので、ここではあまり触れないことにする。
物理学・数学・経済学・法学・政治学・社会学など、本当に幅広い学問を学ばれた著者だからこそ書ける本。まさに「数学原論」。専門知に埋没して勘違いしているその辺の学者には絶対書けない。
こういう知的探究心を持って幅広い学問を学んでいる人って、少しずつ少なくなってきている気がする。最近の所謂括弧付き「学者」って本当に信用できないし。。
著者がご存命のうちに、直接学びたかった・・本当にそう思います。