あらすじ
生涯独身を貫き、人知れず青年のヌードを描いたイギリス屈指の肖像画家サージェント。身分違いの女公爵への恋文を絵に潜ませた宮廷画家ゴヤ。遺伝性疾患のために「半人半獣」と蔑まれた少女を描いたイタリアの画家フォンターナ。15年にわたり人妻と密会して描き続けたリアリズムの巨匠ワイエス……。不世出の画家たちが画布に刻みつけた、モデルとの濃厚にして深淵なる関係を読み解いた論集。(解説・諏訪敦)
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Posted by ブクログ
「画家とモデル」と言われると、あとがきや解説にもあった通り、男性画家と美人モデルを想像しがちだが、それだけに留まらないのが中野先生。
勿論、妻に隠したまま愛人を描き続けたなんていう某有名画家の話もあるが、個人的に印象的だったのは、ある女性画家の話。
多毛症の少女をあんなに愛くるしく、そして慈愛に満ちた視線で描いた絵に持っていかれた。
彼女に対する当時の世間での価値観や評価をものともせずに。
絵の背景を知った方がよりその絵に入り込めるのは、確かにその通りだとは思うが、説明されなくても伝わってくるものも確かにあると思う。
この絵はまさに、そうだと思う。
説明不要の愛。
他にも画家とその絵のモデルに関する様々なエピソードが盛りだくさん。
ベタなものから、変わったものまで。
中野先生節は今回も健在で、読みやすく勉強にもなる一冊でした。
本編中には実物が掲載されていない絵のエピソードも多数出てくるので、ぜひ画像検索しながら読むといいかと。