【感想・ネタバレ】タイムマシンでは、行けない明日のレビュー

あらすじ

時空を超えて必ず出会う運命だった。

光二は、ロケット発射台のある南の島で育った高校生。いつか自分もロケットの研究をしたいと勉強に勤しむ一方、密かに同級生の長谷川葵に思いを寄せていた。
平沼は、仙台の大学の時空間の研究室で教授をしていた。過去を一切語らない彼を、周囲は不思議に思う。33歳の平沼を教授に抜擢したのは、齢90近くと噂される井神前教授だ。二人の間には誰にも言えない秘密があった。
別の人生を生きていると思っていたあらゆる人物達が一本の線上に連なる。時空を超えても人は出会うべき人と出会うようにできている。運命を信じたくなる物語。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

同じ作者の「ふたつの星とタイムマシン」と併せて読むと面白い、みたいなことが書いてあったのだが、そちらは7年前に読んでいて、内容については全く印象に残っておらず。
その時のレビューを見ても『口当たりはいいけど何となく物足らず』と書いてあったが、まあ、これはこれとして読んでみよう。

2016年から偽札を持ってタイムマシンで1962年に行き三島由紀夫の新刊を買う仙台の大学教授・平沼が描かれた後、ロケットの打ち上げが行われる島に住む高校生・丹羽光二と、彼の気になる同級生・長谷川葵の2003年秋の日常が描かれていく。
光二と葵の初めてのデートの日、葵が交通事故に遭い帰らぬ人になるが、光二は大学生になり大学院に進んでも彼女のことを忘れられず、研究室で代々引き継がれてきたタイムマシンであの日に戻ってもう一度最初からやり直そうと企てる…。

序盤はややつかみどころがない話が続いたが、ようやく二つの話のつながりが明らかになると、そこからは元の世界に戻れなくなった光二の喪失感と苦悩が静かに語られていき、後半はもう胸が苦しくなる場面が続く。
外の雪を見ながら研究室の中でかわされる光二と葵の過去を洗い流す会話の切ないこと。
自分の言っていることがおかしいと理解しながらも突然会いに来た葵の父親の葛藤と決心、同じく母が作ってくれた草餅にも心が揺さぶられる。
夜久君の正体が明らかになるのとの同時に明かされる未来の姿の味気無さには、SFとしての妙味と、間違っていると感じながらも前へ進んでいく文明への批評も感じる。
色々な出来事が描かれる中で、様々な岐路の結果離れ離れになったとしても、いつかどこかで運命的な出会いが待っているという救いがあったのが良かった。
(本を読み終えた時、いつも私より早く起き遅く寝る配偶者が、その日は珍しく先に寝ていて、その寝顔を見ながら、この人が私の運命と言える相手なのかいなとしみじみ思った)

ラストは読んだだけではよく理解できず、ネットで検索してようやく理解できた。葵ではなく魚住さんでもないのは分かっていたが、彼女が光二の出会うべき人だったという結末はちょっと意外だった。

0
2023年10月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったです。最終は男子高校生〜大学生の会話などの描写がちょっと厳しいなーと思いましたが、タイムスリップしてからは違和感は無かったです。自分は親なので、親の立場で読むと、父親のシーンで胸が痛かったです。楽しみにしていたラストで?なってしまったのが少し残念でしたが、それでも心に残る良い作品だと思いました。

0
2024年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

たとえ運命の岐路が違ったとしても、人はいつかは会うべき人に出会うという人生の恵みをSFならではの仕掛けで表現した佳作。
プロットに瑕疵があるとすれば、時間旅行に執着して研究者にまでなる主人公がパラレルワールドの陥穽に思い至らずに猪突猛進する序盤の展開は明白な矛盾だが、「恋愛」小説を成立させるために敢えて目を瞑ったのだろうと……。

0
2023年11月03日

「小説」ランキング