あらすじ
妖精の姿を見ることができるメルヴィは、各地の御邸を転々としながら働く派遣型のハウスメイド。今回の仕事は、冬の休暇を別荘で過ごすためにやってきた軍人アダム・スペンサーと、養い子ケイトリンの身の回りの世話をすること。契約期間は一か月。何人ものメイドを辞めさせてきたという癇癪持ちの少女も、どうやら妖精の姿が見えているようで――。感情を表に出すことが不得手な軍人とその養い子の少女と、他人の心の声が聞こえてしまう不思議なちからを持つメイドが、精霊信仰が息づく地で過ごす、冬のひと月の物語。
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Posted by ブクログ
番外編以外は総じて冬が舞台だが、物語の雰囲気は春のようだった。
草木の芽吹く春の雰囲気。
まさにそんな「芽吹き」の物語だったと思う。
メルヴィにとっても、アダムにとっても、ケイトリンにとっても。
不思議な力を持つがゆえに長居をしないメイドのメルヴィ。
親友の子を引き取った軍人のアダム。
そして、彼の養い子となった、これまた不思議な力を持ったケイトリン。
イギリスがモチーフと思われるある雪深い町での一か月の物語。
妖精たちを隣人と呼んだり、クリスマスなどの行事は出てきますが、あくまでイギリスはモチーフ(とこちらが勝手に想像しているだけだが)の異世界が舞台。
ケイトリンの力の制御を通じて心通わせるメルヴィ。
それは、彼女の親代わりのアダムへと波及。
何より、三人が暮らす館はメルヴィにとっては「懐かしい」場所だった。
そこで三人はお互いの存在の大切さを、そして帰る場所を見つけていく。
名前のあるキャラが総じて心優しい人たちなので、安心して読めるお話。
あくまで名前のあるキャラはですが(不思議な力持ちたちを持て余してしまった人たちの所業は優しくはない)
心が温まるやり取りや、にやにやできる展開もありつつ、一か月の期限が迫る。
そこから先の結末は、ぜひ本編にて。
メルヴィの兄(代わり)がまた最高のプレゼントをくれるのですよ。
ラストは号泣でした。
番外編は後日談と過去話。
開き直ったアダムの破壊力よ。
男性陣のみの飲み会話も興味深かった。
何より、ラストの物語。
「彼女」の夢は、本編ラストを見る限り叶ったように思う。
「彼女」は今も見守ってくれてるのだ、三人を、そして彼女たちの暮らすあの家を。