あらすじ
「ありとあらゆるものを分解する」分解者。分解の対象は銃、人体、そして……(『分解』)。音の神が「最初の一滴の音」を求めて町をさまよう。音神がそこに見つけたものは(『音神不通』)。長らく入手不可能となっていた五本の中短篇を初収録。他に『童貞』『ピュタゴラスの旅』などを加えた著者の魅力を凝縮した作品集。
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Posted by ブクログ
『ピュタゴラスの旅』『エピクテトス』『童貞』のような古代史を下敷きにした物語から『分解』『音信不通』『この場所になにが』のように世界のあり方にせまる作品、また、『泥つきのお姫様』『ふきつ』といった心霊世界を皮肉ったコメディと幅広い作品集。
世界を語りながらそれのみが主眼にならず、物語自体が滅法面白い。まるで、中島敦じゃないか。
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『ふきつ』
いやぁああああああああ怖いぃいいいいい
『泥つきのお姫様』
なんか、祖霊とかがいろいろあってカップルをくっつけないといけないのが、祖霊もいろいろあってといふ描写に、感心する。
『童貞』入っとる。うーん。斎藤美奈子先生といふフェミニストの人がこれを評して「神話の捏造」と言ってゐたが、凶悪な母系制国家に虐げられてゐた男性が田舎を粉砕して男性主導によるアレを建築すべく川を犯してどうのと言ふこの話を肯定的に書けるのは、えー。
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『ピュタゴラスの旅』からの二編をはじめとする、今や入手困難な作品を文庫化したものだそうだ。
確かに『ピュタゴラスの旅』は読んだけれど、それ以外は初めて。
それにしても、本当に酒見賢一さんは幅の広い作家だと思う。
表題作「分解」。
語り手は分解者の先達として、分解の技術を指南する。
そのレッスンの様子が延々と語られる。
分解者なるもには、いったい何者なのか。
まったくわからないままに、だ。
最初の授業は拳銃の解体、次に人体、と進んでいく。
あおれぞれのパーツが頭に描けないので、ここで挫折するかと思った。
が、その後、人間の意識の解体、小説の解体へと進むと、俄然面白くなった。
メタ物語というか、批評性がくっきりと見えてくる。
すごい作品だと思った。
縁を結ぼうとている男女の背後で、祖霊たちがドタバタを繰り広げる「泥つきのお姫様」は抱腹絶倒。
中国伝説時代、治水に携わった鯀、禹を扱った「童貞」も、興味深いという意味で面白い。
ミソジニーが現れた作品と言えなくはないけれど、女系社会だったという古代社会がどんな風だったか、いろいろと想像を掻き立てられる。
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短編集。酒見さんといえば歴史物のファンタジーのイメージが強いけど、この作品群はそこまで歴史的な要素は多くない。
表題作「分解」。着眼点は面白いけど、分解対象となるものに関心が持てないと専門用語の羅列にちょっとうんざりする。
「童貞」。女系社会に生きる男の物語。展開に引き込まれる。