あらすじ
大阪でニューハーフ店「さくら」を営む桜は63歳のトランスジェンダーだ。23歳で同じくトランスジェンダーの沙希を店員として雇い、慎ましくも豊かな日々を送っていた。そんなある日、桜の昔の男・安藤勝が現れる。今さらと思いながらも、女の幸せを忘れられない桜は、安藤の儲け話に乗ることを決意。老後のためにコツコツと貯めた、なけなしの1千万円を用意するが……。鬼才が放つ、狂乱の疾走劇。第22回大藪春彦賞を受賞作。
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Posted by ブクログ
赤松利市『犬』徳間文庫。
第22回大藪春彦賞受賞作。
個人的に苦手なトランスジェンダーを主人公にしたピカレスク小説だが、面白い。
国の誤った政策で非正規雇用が増加し、日本は貧困国に成り下がり、社会保障額は目減りし、老後の不安は増す一方。死ぬは地獄、生きるも地獄の今のご時世。一攫千金を狙ってもリスクばかりで、うまい話に儲けは無い。貧困のあるところに犯罪あり。
大阪でニューハーフバー『さくら』を営む63歳になるトランスジェンダーの桜は、同じトランスジェンダーで24歳の沙希を雇い、慎ましい生活を送っていた。
ある日、『さくら』に桜の昔の男であった安藤勝が現れる。久し振りの再会に舞い上がる桜に安藤が儲け話を持ち掛け、桜は老後のためにコツコツ貯めていた1千万円を用意する。安藤に1千万円を託し、店を閉めて、二人で暮らすことを決意した桜は沙希に100万円を渡し、解雇を告げる。
しかし、虎の子の1千万円を信じていた沙希に持ち逃げされる。沙希のインスタグラムの投稿を手掛かりに行方を探す桜と安藤だったが……
後半からの暴力の嵐。ホッとしたのも束の間。その結末は……
冒頭で23歳だった沙希が早々と24歳の設定に変わったのは、『さくら』で働いて6年という表現が描かれたからなのだろう。23歳の6年前にだと17歳から働いている計算になり兼ねない。
本体価格820円
★★★★