あらすじ
深夜のバー。小学校のクラス会3次会。男女5人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。2009年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。
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Posted by ブクログ
田村はまだか
札幌のススキの路地裏にあるバーに同窓会の三次会として集った5人の中年男女とバーのマスター。
5人は各人各様の人生を振り返りながら、われらがヒーロー田村を待っている。
ジャージに虎刈りの冴えない容貌の田村は、心に響く言葉で1人でつっぱって孤立していた少女を救った。その彼女は今は田村の妻で、田村は苦労した末に豆腐屋の主となった。
時は過ぎ、もう午前3時を回り5人の物思いと会話も尽きてきたが、田村は未だ来ない。
”田村はまだか!”
第一話を読んだときに”これは当たり!”と思いました。が、読み進むうちに中年男女のぐだぐだに巻き込まれてしまい少しがっかり。”これもクライマックスに向かった著者の作戦かと思いましたが、最後までまとめきれないまま、凡庸な話で終わってしまいました。
それでも、竹蔵は★4つをつけます。それだけ、第一話は素晴らしかった。竹蔵も田村に会いたかった。
同窓会が多くなる年頃になりましたが、皆さんにとっての田村はいますか?
人間中年を過ぎればいろいろありますが、それをずばっと解決してくれる田村を竹蔵も待っています。
”田村はまだか!”
竹蔵
Posted by ブクログ
目次
・田村はまだか
・パンダ全速力
・グッナイ・ベイビー
・きみとぼくとかれの
・ミドリ同盟
・話は明日にしてくれないか
・おまえ、井上鏡子だろう
すすきのの片隅にあるバーで、クラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ男女五人。
もうすでに相当酔っているが、彼らは田村を待つ。待ち続ける。
小学校時代の田村は決して人気者ではなかった。
貧乏で、男にだらしない母と二人暮らしの彼は、小学生にして既に孤高の存在としてクラスメイトに認識されていた。
「孤高の小学生」っていうのが、まず、いいじゃないですか。
彼の家庭環境は、傍から見ればかわいそうだが、本人はただそっとそこに存在していた。
伏し目がちではあるけれど、しっかりとそこに。
待っている五人も、40歳にもなれば人生いろいろで、でもどこか子ども時代の自分と向き合いながら、平凡な日々を積み重ねてきた。
だからなのだろう。
孤高の田村は、きっと平凡でも胸を張って生きてきたはずだとみんな信じている。
田村はまだか。
飛行機が千歳に到着して、今札幌に向かっている。
田村はまだか。
札幌駅に着いた頃じゃないか。
田村はまだか。
もうそろそろすすきのの近くに来ただろう。
土地勘があるので、私も一緒に計算してみる。
しかし田村、全然来ない。
どうした田村。
さすがに遅すぎるだろう。
最後のエピソードは、別になくてもよかったかな。
それよりも、池内(パンダ)が風船を渡せなかった男の子って、千夏の高校に通っていた島村なんじゃないか?
どこにもそのようなことは書かれていなかったような気がするけれど、家庭環境が激似なところと、年齢的に。
誰のエピソードが特に好きってこともないけれど、全体的に好きな作品になった。
ただ、最後の「おまえ、井上鏡子だろう」は切なすぎるなあ。