あらすじ
深夜のバー。小学校のクラス会3次会。男女5人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。2009年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。
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面白い。迷ったけど星5つ。
そもそも、タイトルと装丁と設定でもう、やられてしまっていた。
読んでガッカリしたらどうしようと思ったけど、そんなことはなく、次々と繰り出されるエピソードを、僕も田村を待ちながら読んだ。僕と同じように、多くの読者が田村を待ちながら読んだことだろう。
登場人物は全員、元こども。中年になった今を描写する言葉たちは辛辣で、決して順風満帆ではない現実を受け止める感情は、それは諦めだったり、達観だったり、未整理の感情だったりするけれど、それもこれも、「田村はまだか」というフレーズに集約されて、エピソードの最後には少しだけ救われていく。見事だ。
田村は来なかった、というエンディングだと予想していたが、裏切られた。予想外の重たい、しかし力強い結末で、作品全体が引き締まり、ただの愉快な小説ではなくなっているところも見事。
マスターの字がきたないところも、見事。
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これは面白かった。40歳くらい大人たちが集まる、小学校の同窓会の3次会。最後まで残った5人が遠方から来る田村くんを待つ。待つ間、一人一人の物語が短編小説のように語られるのだが、その内容が「それを言ってしまうのか」という身も蓋もないもの。ある元保健教員は、「30過ぎて未婚。身の程を弁えて悟った態度を取る反面、まだまだ捨てたものではないという気持ちもあるが、それを生徒たちに見透かされ、気安く、あるいは見下されたような態度を取られているが、もしかすると、生徒たちと何かあるかもという希望にも似た気持ちを最後まで捨てきれない」と独白する。こういう個別の物語が、全体のテーマ?である「田村は、まだか」とうまくつながって、読んでいる方も、田村はまだかと思うようになる。同時に、田村がきてしまうと物語が終わってしまいそうでそれは避けたい。最後は意外なエンディングで、一本取られる感じ。他の作品も読んでみたい。
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この歳になったからこそ楽しめる作品だった。
成人するまでの思い出や仲間、集まれる地元。
人生を豊かに感じれるかどうかは思い出次第。
いい思い出を作るために生きていると考えると生き方も変わってくるかもしれない。
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要約すると、田村が同窓会に来なくて、バーで待ってる旧友達がちょっと思い出を振り返る連作短編集です。
要約しても何も面白くありませんでした。この作品で面白いのは、ストーリーではないからです。この作品で面白いのは、心の動きの機微であり、そのリアリティであり、その不純さも認める美しさであるからです。
人間を描くのが小説ならば、この作品こそが、小説。若き日の、純粋さの塊としての田村。そして、その田村を見た当時の自分の不純さを認める、いま一瞬、田村を待っているこの瞬間の純粋な目。
大好きな作品です。
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秋に朝倉かすみ『平場の月』の映画が公開されるのでそれまでに読もうと思っていたのだけれど、同作者の今作も積読のままになっていたので、先に発表されているこちらから読むことにしました。
最初、文庫表紙のイラストが麒麟の田村に似ていたから物語の田村を何となくイメージしていたけれど、表題作である第一話「田村はまだか」を読み終える頃には全く違うイメージを抱いていた。読み終えて改めてこのイラストを見ると、多分スナック・バー「チャオ!」のマスター花輪春彦だろうと分かる。
連作短編集とは知らずに読み始めたけれど、第二話でそれがわかると、「チャオ!」に集まった面々のそれぞれの人生に思いを馳せられることを嬉しく思った。
まだ来ない田村を登場人物たちと待ちながら、どんな再会を果たせるのだろうとワクワクしながら読み進められた。
僕の記憶にも深く刻まれている、今はもうなくなってしまったBAR雫の夜を思い出しながら、人の来し方の機微を思わずにはいられない作品でした。
Posted by ブクログ
田村はまだか
札幌のススキの路地裏にあるバーに同窓会の三次会として集った5人の中年男女とバーのマスター。
5人は各人各様の人生を振り返りながら、われらがヒーロー田村を待っている。
ジャージに虎刈りの冴えない容貌の田村は、心に響く言葉で1人でつっぱって孤立していた少女を救った。その彼女は今は田村の妻で、田村は苦労した末に豆腐屋の主となった。
時は過ぎ、もう午前3時を回り5人の物思いと会話も尽きてきたが、田村は未だ来ない。
”田村はまだか!”
第一話を読んだときに”これは当たり!”と思いました。が、読み進むうちに中年男女のぐだぐだに巻き込まれてしまい少しがっかり。”これもクライマックスに向かった著者の作戦かと思いましたが、最後までまとめきれないまま、凡庸な話で終わってしまいました。
それでも、竹蔵は★4つをつけます。それだけ、第一話は素晴らしかった。竹蔵も田村に会いたかった。
同窓会が多くなる年頃になりましたが、皆さんにとっての田村はいますか?
人間中年を過ぎればいろいろありますが、それをずばっと解決してくれる田村を竹蔵も待っています。
”田村はまだか!”
竹蔵
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私にはまだまだ分からない世界だ!!
やはり歳を重ねると、人生の深みが増すのかなぁ
田村を待ち続け「チャオ」で飲み続ける
6人の人生奮闘記。
小学校の同窓会で集まって、クラスの三次会で集まった池内、永田、坪田、千夏、祥子、そして彼らを見守るチャオオーナー花輪。
彼らの仕事での話や恋愛話、それぞれ重ーく終わりが見えないと思いきや、とある人が宝物のような言葉を遺していく。
そして永田の合いの手「田村はまだか」
このなんとも言えないストーリー展開が
とても気持ちよくて、好きだ。
果たして田村は来るのか、彼らのこれからはー。
彼らと同年代になったら必ず読みたい1冊!!
そして私も言いたい!!「田村はまだか」
Posted by ブクログ
タイトルが面白くって購入しました。後ろの宣伝文のところにラストには怒涛の感動がと書いてありますが、感動というよりはほっこりでした。途中ちょっと飽きるところもありますが、面白いです。一言で言うなら群像劇。
Posted by ブクログ
バー「チャオ!」に集まった、40歳になった小学校6年の同級生たち5人。皆、田村が店に来るのを待っていた。そこで小学校の頃に問題児だった中村に、田村がかけた言葉を思い出していた。しかし、それぞれ40歳ともなり、仕事にも実生活にもうまく行っていないのだった。田村はまだか。
タイトルとリリー・フランキーみたいなおっさんの表紙で、つい手に取ってしまうこと請け合いの1冊。いやもう、一発でやられましたね。
内容の方は、仕事で本気を出していないんじゃないかという池内が田村を思い出すことではじまる。二章では全く違う視点になるので、もう田村はどうでもいいのかと思いきや、また戻ってくる。
全体に固有名詞が多く、現代かと思ったら小学生に飛び、中学校に飛ぶという過去の思い出を中心に進んでいく。前半ではその固有名詞の絨毯爆撃に、会話しているのかと思いきやト書き分で返答をするという部分に戸惑うが、それもじわじわと染み込んでいくようにペースが掴めていく。ネットの噂や都市伝説など、ちょっとした小ネタが挟み込まれ、クスっとくるのもいい。
そして田村はどうなったのか…。
おまけで入っている短編も同じような流れと展開だが、やっぱり固有名詞に振り回されているうちに終わってしまった。そういうスタイルの人なのだろう。短編よりも中編以上の作風が合うようだ。
期待よりも上回ってきた作品であった。
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題名からして、何か気になる本
読み出したらワールドに引き込まれるように、あっという間に読み終わってしまった
壮大な舞台ではない
こじんまりしたバーの中で、同窓会の後の5人とマスターが田村を待つ
待つ間に本名が明らかになっていくのが面白かった
田村は来ないんじゃないのか、、来なさすぎと思ってから、引き込まれ度が上がりました
二瓶さんのキャラが良かったです!
Posted by ブクログ
色々な名言が出てきた。
そしてこの6年1組の人たちは個性的では有るけれど人間味があり、スゴく良いメンバーだった事が分かる。
ともすると、いじめの対象になりそうな面々だけど、その表面的な事実では無く内面の良い所を尊重している。
そして子供の頃の話しをする時に澄んだ瞳を輝かせる。
田村のことを知らないマスターと一緒に田村のことを知っていく。
そして繋がってゆく過去。
面白い本だった。
Posted by ブクログ
言葉遣いがリアル。学生時代を過ごした札幌の映像が脳裏に蘇った。読書をする時、大概風貌の描写に一番近いような、見目のいい俳優さんをイメージしてしまうが、この作品ではイメージできなかった。自分はその年齢を過ぎていて、色々衰えていることを気にしている。が、もっと全然別の次元で「中年」が語られている。しみじみくる。何故か?「解説」がなかなか良かった。締めに読むに相応しい。
何年か後にまた読みたくなるんじゃないかと思う。「田村はまだか」の後の「おまえ、井上鏡子だろう」は、より現実的な気がした。
Posted by ブクログ
「桐島部活やめるってよ」のように、クラス会を終えた男女が深夜まで飲みながらひたすら「田村」を待ち続ける。章ごとに1人1人の身の上が語られ、やっと田村から連絡が来たと思ったら、まさかの展開に。気心知れた中年の集まり、楽しそうで微笑ましい。やさぐれ感のある会話がリアル。
Posted by ブクログ
目次
・田村はまだか
・パンダ全速力
・グッナイ・ベイビー
・きみとぼくとかれの
・ミドリ同盟
・話は明日にしてくれないか
・おまえ、井上鏡子だろう
すすきのの片隅にあるバーで、クラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ男女五人。
もうすでに相当酔っているが、彼らは田村を待つ。待ち続ける。
小学校時代の田村は決して人気者ではなかった。
貧乏で、男にだらしない母と二人暮らしの彼は、小学生にして既に孤高の存在としてクラスメイトに認識されていた。
「孤高の小学生」っていうのが、まず、いいじゃないですか。
彼の家庭環境は、傍から見ればかわいそうだが、本人はただそっとそこに存在していた。
伏し目がちではあるけれど、しっかりとそこに。
待っている五人も、40歳にもなれば人生いろいろで、でもどこか子ども時代の自分と向き合いながら、平凡な日々を積み重ねてきた。
だからなのだろう。
孤高の田村は、きっと平凡でも胸を張って生きてきたはずだとみんな信じている。
田村はまだか。
飛行機が千歳に到着して、今札幌に向かっている。
田村はまだか。
札幌駅に着いた頃じゃないか。
田村はまだか。
もうそろそろすすきのの近くに来ただろう。
土地勘があるので、私も一緒に計算してみる。
しかし田村、全然来ない。
どうした田村。
さすがに遅すぎるだろう。
最後のエピソードは、別になくてもよかったかな。
それよりも、池内(パンダ)が風船を渡せなかった男の子って、千夏の高校に通っていた島村なんじゃないか?
どこにもそのようなことは書かれていなかったような気がするけれど、家庭環境が激似なところと、年齢的に。
誰のエピソードが特に好きってこともないけれど、全体的に好きな作品になった。
ただ、最後の「おまえ、井上鏡子だろう」は切なすぎるなあ。
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田村を待ち続けながらそれぞれの人物の人生が短編で読める。
人生っていろんなことがあるよね、いつ誰が田村のようになってもおかしくないよね。
人生何があるか分からないよ、そんな印象でした。
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<目次>
略
<内容>
40歳の小学校の同窓会。その2次会の会場となったすすき野のスナックに集まった5人の同窓生。小学校時代、ちょっと変だった「田村」。でもいじめられるわけでもなく、孤高の存在だった。その「田村」が2次会にやってくる…。待っている間に5人のエピソードが語られる。狂言回しはスナックの主。しかし「田村」はすぐそこで交通事故に遭って意識不明⁈最終話で怪我から回復した「田村」が現れて…。
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同じ場所にいる人たちの
心の中、頭の中を覗くような物語。
▶︎読んでほしい人
同窓会へ行くかどうか迷ってる人
▶︎きっかけ
一万円選書にリストアップされていたから。
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一時話題になった本なので手に取ってみた。
もう40歳になって、小学校のクラス会が行われた。
5人の男女が三次会に流れたが、そこに来るはずの田村が来ない。
田村とほかの5人の思い出や現在が行き交い、そして怒涛の感動が待ち受けるはずの最終章へ。
読みやすかったし、面白くない訳ではなかったが、私には怒涛の感動とはならなかった。
Posted by ブクログ
一万円選書の岩田 徹さんが紹介していた本
自分では手に取らなかったとおもう本に出遭えたことは
岩田さんに感謝しかない。
小学生のクラス会
三次会まで残った数人が
卒業ぶりに参加する予定の田村君が
交通事情により遅れてくるのを待っているという設定。
まずは田村君の人となり・・そして印象的な出来事を回想。
(マスターの想像や、話を聞きかじった同窓生の印象も面白い)
昔と現在を織り交ぜながら、今まで生きてきて、
それぞれの成長や問題、心の葛藤、喜び、現状など
一章ずつ一人ひとりをフォーカスしながら、
話が進んでいく。(マスターも含む)
「田村はまだか?」で毎回一章が締めくくられている感じも好き。
だけど、田村君が来ない最後の展開はあまりお好みじゃなかったかな。
ものがたりの締めくくりは清々しい感じに終わってよかったです。
小学校の同窓会やっているのかな。みんなどうしているのかな。
Posted by ブクログ
40歳、っていい歳頃だと思います。
ある程度生きて経験してきて、この先の自分の人生も知れている。
小学校時代とかにその子自体が特に意識していないけど周りからは印象深い特別な子ってなんかいますよね。
Posted by ブクログ
小学校のクラス会に40過ぎて行くんだな~。
やっぱ東京と地方は違うんだな。
小中で一緒っだった連中とは地元で行き合った時に立ち話するくらいかな。
までも、物語としては楽しめた。
作品紹介・あらすじ------------------------------
深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。'09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。
Posted by ブクログ
男女5人が小学校の同級生「田村」をスナック「チャオ!」で待つ。
5人が話す「田村」の思い出、マスターも加わり彼らの回想も交じえながら時間は過ぎていく。
そして遂に「田村」は現れ・・・?
という内容。
40歳の大人の心情は無骨でお洒落ではなくて生々しい。
それがとてもリアルで分かるんだけどね。こういった感じが好きか嫌いかで評価が分かれそう。
私は1回読んで充分でした。
Posted by ブクログ
朝倉かすみさんの「田村はまだか」を読みました。
タイトルに引き寄せられる。田村って誰よってなるもん。
小さなバー。小学校のクラス会の三次会が行われていて、そこに集う5人が同級生田村の到着を待っている。三次会というより、もはや田村が来るのを待つための会という感じ。
田村のひととなりや思い出、登場人物たちの過去などが徐々に語られていく。
心理や情景が、すごく現実味にあふれてる。心の持ちようや体の変化、40歳の男女の等身大ってこんなだよねって思った。わかっちゃうのです、40過ぎているから(笑)。
でも、田村や中村理香の小学生時代の発言については、ホントにこんなこと言う子いるかな?って感じだった。
読み終える頃にはみんなに親近感が湧いていた。それぞれいろいろ悩みつつもちゃんと生きている。みんな、知らずに田村の影響を受けていたのかもしれないね。
ラストがよかった。特に最後の1行。
Posted by ブクログ
一生懸命生きる、ただそれだけのことが一番難しくて、一番偉いんだと思う。それを小学生のころから体現していた田村はみんなの憧れとしていつも心のなかにあってみんなを励ましている。なにを経験したかじゃなくて、どう生きたか、どう受け止めたか、どう自分事として捉えたかで人としての大きさは変わってくるんじゃないか。現実を見据えてしっかりと生きていくべし。