【感想・ネタバレ】土に贖うのレビュー

あらすじ

明治時代の札幌で蚕が桑を食べる音を子守唄に育った少女が見つめる父の姿。「未来なんて全て鉈で刻んでしまえればいいのに」(「蛹の家」)。昭和26年、最年少の頭目である吉正が担当している組員のひとり、渡が急死した。「人の旦那、殺してといてこれか」(「土に贖う」)。ミンク養殖、ハッカ栽培、羽毛採取、蹄鉄屋など、可能性だけに賭けて消えていった男たち。道内に興り衰退した産業を悼みながら、生きる意味を冷徹に問う全7編。圧巻の第39回新田次郎文学賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・あらすじ
明治30年代の札幌。養蚕工場を営む両親のもとに生まれたヒトエ。
昭和40年代の根室。ミンクを養殖業者の孝文。
戦前戦後の北見。ハッカ草栽培農家のリツ子。
明治後半の大島。羽毛貿易のためひたすら鳥を求めて南北を放浪する弥平。
昭和30年代の江別。蹄鉄屋家業の息子雄一。
昭和20年代の江別。レンガ工場で働く佐川吉正。
5作目の続編。陶芸家として生計を立てる佐川の息子、光義。

衰退した産業に従事していた人間たちを書いた6編の短編集。

・感想
これぞ文学、と感じた作品だった。
個人的な偏見だけどやはり文学ってのは「北」に限る。
北で育ち北で生まれ、北で生きてる全ての生命ってやっぱたくましさを感じる。すごい。
私は南生まれの人間なんでとてもじゃないけど雪が積もる場所じゃ生きていけないです…。
だからこれほど北が舞台の作品に惹かれるのかもなー。

明治、昭和という時代に地を耕し、地に足つけて踏ん張ってただ生きてただ死んでいった人たち。
この世界に「個人の幸せ」なんていっぺんも入る余地なし。

蚕もミンクもアホウドリも人間が人間のために殺す。
そしてそれらを加工生成した製品はただ商品として消費する人たちのもとへ渡っていく。

「頸、冷える」のミンク業者である孝文の父親が求めた毛皮はただのファッションではなく、シベリアで唯一手にした命綱だったんだろうな。
「毛皮(儲け)のために殺生をするろくでなし」ではないけども、同じ製品でも目的が変化すれば意味も変化し、そしてその社会の倫理観にそぐわない職業として消滅していく。
わざわざ毛皮を剥がなくても凍死する危険性がないほど豊かになったってことなんだろうけどね…。

自分の手で育て、自分の手で殺し、自分のために使う。
もう今更そういう社会には戻れないし(個人で実践してる人はいるけど)、私自身もできない。
でもどこかでこの状態は歪なのでは?という認識は持ちたい。
私は「それはそれ」で開き直れるタイプなので病まないけど。

殺虫剤、薬、化粧品を使う。
今でも見えないところで人間のためにいろんな動物が犠牲になっている。
スーパーに切り身や加工されて綺麗に陳列しているお肉や魚。
こっちは殺してもよくて、あっちは殺したら可哀想。
色んな矛盾を抱えてる。
南北海鳥異聞の弥平による「自分の手で殺生をした俺はまだましではないのか」という疑問に私は反論できないなって思った。
まっ弥平は鳥を殺したく殺しているというとんでもねぇ奴なんだけども。
こいつは最期も良かったなー。
殺し殺され、そして消えてなくなる。
綺麗なもんも汚いもんもみんな同じで、人間なんて所詮糞袋なんだわ。

解説にもある通り現代は大半が虚業となってしまった。
私自身も虚業や投資で稼いでるのでやはり実業に携わってる方々への尊敬や負い目があったりする…感謝!!!

そんな現代では、親近感や共感を得やすいのも都市に住む人間による都市に住む人間のための「個人の幸せ」を求める社会学的コメンテーター作品が多い印象。
別にそれはそれで当然っていうか構造的帰結というか仕方ないことなんだけど、私が文学に求めてるのは「共感してほしい!共感するでしょ!!」と共感を第一義とした作品ではないんだなと改めて思った。

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2026年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

河崎秋子さんの著書を読んだのはともぐいに続いて2作目だったが、北海道で生きる人の生命力の強さを重苦しいほどに感じた。厳しい気候や時代の流れに翻弄されながらも、たくましく、しなやかに生き抜いた人々がいたからこそ今の北海道があるのだと思った。

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2025年03月10日

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