【感想・ネタバレ】電力崩壊 戦略なき国家のエネルギー敗戦のレビュー

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Posted by ブクログ

業界人には今読むべき一冊。可能な限り中立的な立場で電力システムの課題と可能性を論じ、具体的なアクションを促している。
ただし、著者が自ら示しているアクションについては拍子抜け。何もやらないよりはマシと言えるが、語ってきた改革を興すには不十分。それを読書に考えて動けというメッセージと受け取った。

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2023年05月28日

Posted by ブクログ

さらっと読める本ではない。
これ一冊で日本の電力がどのような歴史を辿ってきたのかわかる。もちろん世界の情勢も。

あえて3つポイントをあげると
・なぜ日本の電力は国営じゃないのか
・ロシアがどれほどエネルギー資源大国であるか
・ロシアに頼っていた欧米がどうなっているか

が、よくわかった。
原子力はしんどい、という章も深かった
utility3.0は一読では理解できなかった

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

【内容紹介】
エネルギー逼迫を受けた緊急出版!!複雑に絡み合った原発問題はいかにして解きほぐせるのか?気鋭の論客がエネルギーを切り口に、日本を前向きに軌道修正する道を探る意欲作。
原子力政策の不透明性や電力自由化、急速な脱炭素化政策など、国の根幹をなすべきエネルギー問題は「失策」の歴史にまみれている。平易な語り口で知られる著者が、電力政策の歴史、原発や再エネが抱える様々な課題をわかりやすく解説し、具体的な解決策を提示する。

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電力自由化により電力会社を選べるようになったことや、昨今の原油価格高騰による電気代値上げにより、エネルギーというものについて一人ひとりが考える機会が増えたように思います。日本の電力会社は優秀なので停電が少なく、電気は「あって当たり前」という感覚が根深い中、本当はそうではないことを認識する良い機会です。震災以降の日本は、今まで通りの生活を維持するために大量の財を海外に渡している事実をもっと周知し、その上で感情論ではなく地に足をつけたエネルギー政策を議論しないといけないと思います。

この本は資源のない日本のエネルギー事情と弱点、そして電力自由化・原発停止・急速な再エネ導入が今何をもたらしているかを、平易でわかりやすく記しています。
この本を読んで私が思ったことは大きく2つ。1つは、耳障りのよい言葉に惑わされて感情論に走ってはいけないということ。原発のリスクは無視できないですし、国産エネルギーでありCO2を出さない再エネで100%やっていけるならそれが理想ですが、その段階に行き着くまでの「繋ぎ」の期間において、今あるもの(石炭火力・原発)を有効活用することを迅速に進めないといけない。もう1つは、外交の重要性です。資源がない国である日本が今まで成り立ってきたのは、一重に「役に立つ国」であったからだと思います。「役に立つ」というのは、カネの面や技術提供の面などいろいろあると思いますが、自分も含め現代を生きる日本人にはその意識が薄いと思います。このまま人口減少が進めば、カネも技術も衰えていき、その先に待っているのは深刻なエネルギー危機ではないでしょうか。エネルギーが石油にシフトした瞬間から、日本は常に首根っこを掴まれている状態だということを理解し、政治家や企業の海外進出・資金拠出に対し肯定的な目を持つことが大切だと思います。

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2023年05月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

太陽光発電は、日本は中国米国に次いで3位、国土面積当たりではダントツの世界一。
電力自由化で、火力は急速に減少、再エネは増加。火力は再エネが発電しているときは休憩させられる=稼働率が悪くなる=メンテナンス費用が出ない=維持できない=休廃止が増える。
発電設備の確保、燃料の確保、送配電ネットワークの強靭性確保、が必要。設備投資が不可欠=総括原価方式の料金設定だった。自由化で不可能になった。
温暖化対策で、化石燃料への開発投資が減った=安定供給への危機。
ドイツの天然ガスへの依存は、ウクライナ侵攻で失敗が露呈した。
天然ガスの長期契約の禁止で、ロシアの開発資金が減った。急速にカーボンニュートラルに変換することはできない。開発のリスクを売り手に負わせて、必要な分だけ市場で購入しようとした欧州の失敗。
カナダとアメリカが、ロシア産原油の全面的禁止ができたのは、そもそも依存していないから。
ドイツがLNGの長期契約を結べないのは、温暖化目標と整合しないから。
LNGは、船で運ぶのでどこからも輸入できるが長期保存には超低温を保つ電気が必要。日本では2週間分が備蓄、石油は200日分が備蓄されている。

電力自由化は、原子力事故を起こした電力会社への懲罰的な意味合いがあったのではないか。
日本の電気は今も7割以上が火力、燃料費の割合が非常に大きい。燃料費の抑制と調達の確実性が重要=長期契約が手段。
日本の電気料金がヨーロッパ並みに上がらないのは長期契約による燃料調達が高いため。今は長期契約は減少している。電気料金を下げるためには、競争よりも統合による購買力の上昇が必要だった。自由化→競争→料金が下がる、にはならない。
公益事業は世界的に単独企業や公的企業によるものが多い。オイルショック以降、電力需要の停滞と、小型ガスタービンの効率化で、規模の経済性が働くとは限らないと考えられるようになった。

発電と配送電と小売のうち、発電と小売が自由化された。
電力自由化が難しい理由=大容量で貯められない。供給と需要がバランスする必要がある。究極の生鮮品。
維持費が稼げないと設備が廃棄されいずれ供給力が不足する=ミッシングマネー。「電力とハンバーガーを同列に語ってはいけない」
アメリカでは37州は自由化されていない。カリフォルニアは自由化されたあと止めた。クルーグマンは医療、教育、電気は自由化してはいけないもの、と述べた。

カーボンプライシング=炭素税、排出枠取引、再エネ発電賦課金など。省エネ補助金もその一つになりうる。炭素税を課すなら一度整理が必要。

目標の決め方はバックキャストとフォーキャスト。温暖化政策の目標はバックキャスト=あるべき姿を先に描いて到達するシナリオを考える。エネルギーインフラの転換は時間がかかる。設備廃棄との兼ね合いを考えなければならない。

発電コストは再エネが順調に発電しているときは一番安いが、日本では高止まり。建設費が高い。自然条件が悪い。

再エネ政策の失敗
FIT価格が高く国民負担が高い。FIT=査定なき総括原価主義。地域との共生が図られていない。太陽光パネルの廃棄も問題。製造や工事などの産業化に失敗して、中国にとって代わられた。
FITからFIPへ。再エネ事業が不安定になる。

再エネをうまく使う方法=蓄電池、送電網、水素。時間のシフト、場所のシフト、両方のシフトができる。
現状では9割が揚水発電という蓄電池で貯めている。発電コストは蓄電池の1.4倍。
発電所は地元にも雇用など利益が落ちるが送電網は便益はない。発電所よりも送電設備のほうが地元の理解を得にくい。
水素で貯めるのは効率が悪い。地産地消を目指すべき。

洋上風力はヨーロッパでは有利。強い偏西風、北海の遠浅海岸、漁場としては豊かでないため漁業への補償が少なくて済む。
日本は遠浅の海岸が狭い。浮体式はまだ実用化されていない技術。

原子力はアメリカでは一定以上の損害は国が補填する仕組みになっている。日本はあいまいなまま始まった。
ウランが偏在していない、燃料の備蓄性が高い、温室効果ガスを排出しない。
既存の発電所を使えば、燃料コストの安さから発電コストは安い。
新規の場合は、投資を回収する年数や金額による。
デメリットは事故のリスク、地層処分が決まっていない(トイレのないマンション問題)。当初海洋投棄をする予定だったが、核兵器のゴミを海洋投棄して批判を浴びてロンドン条約で禁止されたため、当てが外れた。核兵器への転用リスク。
原子力発電は発電を制御しずらい。
事業リスクを自由化以前であれば、吸収可能だった。

世界の脱原発の潮流は本物か。
韓国、ベルギー、スイス、台湾は脱原発を表明。アジアアフリカは導入に踏み切る方向。
リスクを全く許容しないのは技術を利用する限り不可能。必要十分条件を示そうとすると安全神話に逆戻りする可能性がある。効率性の原則を取り入れられず、コストパフォーマンスを考えない規制が行われる可能性がある。
原子力の事故は、運転期間経過とともに低下傾向にある。設備は予防保全が行われ、トラブルが出る前に取り換えられている、サイボーグと同じように一定年数経過するとすべて入れ替わっている。
運転期間が倍になれば発電コストは半分になり圧倒的な競争力を持つ。

自由化によって供給責任がなくなれば、リスクを背負って原子力発電を推進する必要はなくなる。
そもそもエネルギー需要が将来増えるのか減るのか、気候変動のゴールは変わりやすい。投資回収が見通せなければ民間は投資できない。
ヨーロッパではエネルギーを市場にゆだねることの難しさに直面している。民間にとって難しいのは先が見通せないこと。大規模な投資はできなくなる。
既存の原子力発電所の活用だけでは、技術は衰退する。小型モジュラー炉や高温ガス炉などの開発が進まない。その間にロシア中国に追い抜かれる。

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2023年03月07日

Posted by ブクログ

エネルギー問題の全体感を掴むには良い。
ただし、中立っぽく書かれていつつスタンス強めな印象は拭えず、都合の良いファクトや推定で書かれている感じも受けた。最後の自分の事業の方向性も含めて、ホントにそうなのかな?とイマイチ腹落ちしなかった部分も多い。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

原子力をとめたことによる電力高騰
日本の利用可能平地面積的に再生可能エネルギーの建設が難しく、建設コストが上昇傾向にあったり、賦課金が2兆円越えと消費者負担が大きくなってきている。
消費税1%あげると2兆円の負担があるが、それよりも大きい。(消費税10%で20兆円)

2050年のカーボンニュートラルを達成するために、バックキャスト手法で立てた目標を達成するにはなにかブレイクスルーが必要だろうな、核融合に期待。

楽観的過ぎず、悲観的過ぎず、いざというときのコンテンジェンシープランをもつというのは、電力だけでなく人生の処世術としても重要だと感じた。

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2023年03月10日

Posted by ブクログ

最終章の「エネルギー敗戦を回避するには」については、そのとおりとしか言いようがない。
審議会などで、著者他、心ある有識者、電気事業の関係者などは、パニックに乗じたような制度変更案に対し、今日の事態を招く虞があることを憂慮し、懸命に警鐘を鳴らし続けたが、時の政治、メディアなどから、「反動勢力」「守旧派」「利益誘導」等の誹りを受け、この「経済敗戦」を迎えてしまった。
これからどんな社会を築くか、きちんと過去と向かい合い考えていく必要があると思う。

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2023年02月07日

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