【感想・ネタバレ】独裁と民主政治の社会的起源 近代世界形成過程における領主と農民 下のレビュー

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Posted by ブクログ

下巻は、戦前日本(ファシズム)、インド(議会制民主)、理論まとめ。
日本については、プロイセン=ドイツとの対比も交えて語られる。ドイツのユンカーほど強制的なアクターはいなかったにもかかわらず、元々の協業の必要性と(村八分などの罰則も含め)統制の強い社会だったために農村部の権威(地主)と社会構造(隣組など)が温存され、農本主義→ファシズムへ進んだという話。ちなみにユンカーについては、先行して産業化した外国への輸出という誘因があったためにイギリスと違って農奴を得る方向へ進んだというような説明。
インドについては、この本が書かれた時点ではプロセスが完了してないって気がするので話半分で読んだ。カースト制度が文化と社会体制のタイムカプセル化みたいに働くっていう指摘は他でも読んだことあるな、ってくらい。
理論まとめは、これまでの総括と留保など。農本主義的な考え方が古代からあったという指摘(カトー主義)。とはいえ、産業化が進むと現実的には維持不可能で最終的には淡い郷愁のような残骸になると著者は想定している。そうだろうか?「科学の知見やグローバルな価値観を否定して土着の価値や手に持つ仕事をもてはやす」、それって最近アメリカで流行っているやつではないかしら、などと思った。

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2021年05月24日

Posted by ブクログ

民主政治の起源について、地主と農民に主眼を置いて研究した本。地主や農民が主体となって革命を起こし民主政治が生まれたとする流れを基本とし、英仏米日中印についてそれぞれ同じ切り口で分析している。地主と農民を調査しただけでは説明のつかない部分が大きいと感じた。社会の体制は政治を中心とした権力争いの構図が大きく、農民の影響力は小さいことが多いのではないか。
「明治維新直前の武士の人数は、その家族も含めて200万人前後、つまり総人口の十六分の一と考えられている」p16
「(農村内の強い絆)あらゆる兆候から見て前近代の日本の村落共同体は、顕在的・潜在的不満を持つ個人を結合させ統制する、きわめて強力な機構であった。また、領主・農民層間の公式・非公式の統制回路も、きわめて効果的であったように思われる」p62
「インドでは日本のように、経済的余剰を工業発展の基盤として用いる新しい民族エリートの支配が実現することはなかった。むしろインドでは、、外国人征服者、地主、金貸しが、この余剰を吸い上げて消費した。その結果、インド経済は、イギリス統治期を通じて、また今日まで至るまで、停滞状況を続けているのである」p135
「デーシーつまりインド固有の鋤やその他の用具は、千年前のものと本質的には変わっていない」p203
「(ガンジーのスワデシー)身近な隣人の作ったもののみを用い、欠けているところがあれば効率を上げ、より完全にすることによって、身近にある産業に貢献する」p223
「(ガンジーの私的所有の寛大さ)国家による所有は私的所有よりも良いが、それは暴力によって達成されるものであるから好ましくない」p225
「(経済のあるべき姿)農業で生活している人々に経済的な刺激と政治的な強制とを組み合わせた手段で生産性を向上させ、同時にそうして作られた余剰の相当部分を、産業社会建設に振り向けること」p242
「近代化の過程は失敗した農民革命とともに始まり、成功した農民革命によって20世紀に頂点に達する」p347
「ブルジョワがいなければ、デモクラシーもないのである。農民は古い建物を破壊するためのダイナマイトを供給してきた」p532
「(本書への批判)①国家や国際関係が十分扱われていない ②政治制度や組織が軽視されている ③思想、イデオロギー、アイデンティティの役割が重視されていない ④中小国の意義が認められていない」p540

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2019年11月05日

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