【感想・ネタバレ】欲望論 第2巻「価値」の原理論のレビュー

あらすじ

2500年の哲学の歴史に新たな展開が始まる。価値不在の現代に価値と意味の原理論を立て直す意欲作。「世界を分節するのは欲望だ。欲望が、価値と意味を世界の中に織り出してくるのだ」。プラトン、アリストテレスからデカルト、カント、ヘーゲルをへてニーチェ、フッサール、ハイデガーへと続く哲学の歴史を総覧し、さらにその先へと哲学の可能性を拓く。2000枚超!!


世界を分節するのは欲望だ。欲望が、価値と意味を世界の中に織り出してくる。価値不在の現代に、価値と意味の原理論を立て直す意欲作。

現代の哲学(思想)は、幻影の問題を抱えて虚妄な議論の巨大な迷路のうちへと迷い込んでいる。「本体」の観念を完全に(すなわち哲学的根拠において)解体することによって、われわれははじめて、認識一般にとって何が可能なのか。何が認識不可能なのか、普遍認識が成立する条件と構造が何であるかを解明できる。またこの解明からのみ、どのような新しい知と学の地平が開かれるのかを明らかにすることができる。本体論の完全な解体こそは、現代社会における哲学と思想の再生のための、不可避の始発点である。

「真」とは、「善」とは、「美」とは? 哲学究極の問いへの回答!

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Posted by ブクログ

第2巻では、著者自身の理解するフッサールの発生的現象学の方法にもとづいて、われわれがこの世界のなかに「善」や「美」をはじめとするさまざまな価値を見いだすようになるプロセスを解き明かそうと試みられています。

著者は、ハイデガーやレヴィナス、フロイトやラカン、さらにカントをはじめとする西洋美学史を幅広く参照していますが、彼らの思想はいずれも、ニーチェとフッサールによって清算されたと著者が主張する「本体論」と「相対主義」のアポリアに陥ってしまっていると断じています。あいかわらず大鉈で西洋哲学史を割り切る議論というべきで、それぞれの思想をていねいに検討しているとは、とうてい思えません。

むしろ本書の見るべき内容は、著者の主張するエロス的な感受性の形成史が詳細に論じられている点にあるように思います。とくに「母」と「子」の関係のなかから、もっとも原初的で身体的なエロス的感受性が弁証法的に高度な段階へ向かっていくプロセスが詳細に論じられています。

また、ロマンティシズムやエロティシズムの本質を、著者の理解する現象学的な本質観取の方法によってとりだす試みもなされています。これについては『恋愛論』(ちくま学芸文庫)でも論じられていましたが、著者の欲望論の体系のなかにあらためて位置づけなおされており、興味深く読みました。

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2018年07月12日

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