あらすじ
強烈な個性と高い政治力を発揮し、東大寺の大仏造立をはじめとする数々の事業を推進した聖武天皇。「天平の皇帝」たらんとしたその生き様と治世を鮮やかに描き、「ひ弱」「優柔不断」といった旧来の聖武天皇像に見直しを迫る。
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Posted by ブクログ
本書ではこれまで誤解されてきた聖武天皇の知られざる姿を知ることができます。
「ひ弱な、優柔不断な天皇とのイメージが強く、光明皇后や藤原仲麻呂の傀儡であったという聖武像」
このようなレッテルが貼られていたという聖武天皇ということですが、ただ、正直申しますと私はそのようなイメージすらなくもっとシンプルに「仏教信仰が篤く、奈良の大仏を建立した天皇」というイメージしかありませんでした。聖武天皇という存在に対し、信仰的な面から考えても政治的な側面をイメージすることがなかったというのが正直なところでした。なので「ひ弱、優柔不断、傀儡」というレッテルも今こうして日本史を学び直して初めて知ったくらいです。きっと私と同じ方も多いのではないでしょうか。
ですがその「奈良の大仏のイメージしかない」ということそのものが聖武天皇に対する理解の不十分さを物語っているのかもしれません。
上の引用にもありましたように、聖武天皇はただ大仏を建立した天皇というだけにとどまらず、政治的、文化的にも後の日本に大きな影響を与えた存在でありました。この伝記を読めば驚くような事実がどんどん出てきます。「聖武天皇はそこまで考えていたのか!」とびっくりすると思います。そして従来語られてきた聖武天皇像がいかに不適切であったかを実感することになります。
著者が述べますように、奈良時代を知るには聖武天皇は欠かせぬ存在です。彼の存在無くして奈良時代は語れません。仏教の歴史を学ぶために手に取った本書でしたが、これは刺激的な一冊でした。