【感想・ネタバレ】ここでは誰もが嘘をつくのレビュー

あらすじ

この仕事は、誰かがやらなければいけない。
目の前の患者を救うことを、分け隔てなく。

函館にある医療刑務所分院に努める金子由衣(かねこゆい)は、2年目の矯正医官。医療刑務所では、患者である受刑者の平均年齢も高く、凶悪な罪を犯した者も基礎疾患などを抱え医師の助けを必要としている。一方で不調を訴え刑務作業逃れをしようとするものも多い。受刑者の過去の罪と患者としての現在の状況を毎日のように目の当たりにし、贖罪とは何かを考える由衣だったが、当直の晩、糖尿病を患っていた前科四犯の受刑者が亡くなった。これは医療事故か、あるいは殺人事件なのかーー。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

医療ミステリっていうよりは医療刑務所を舞台にした医療モノ。なかなか面白い構成で一気に読まされました。私も、こんな誰からも喜ばれない仕事何のためにあるんだ、と思ってしまうことがあるので、ちょっと反省。

0
2025年05月04日

Posted by ブクログ

函館の医療刑務所分院に勤務する2年目の矯正医官金子由衣。患者である受刑者の平均年齢は高く、基礎疾患を抱えた凶悪犯もいる中で苦悩が続く。そんな中、収監中の暴力団員が糖尿病治療のインスリン注射後死亡、病死か事故か殺人か…、疑いを持つ由衣は…。様々な場所で様々な対応が必要とされる現実を改めて実感。

0
2023年03月12日

Posted by ブクログ

静かな日常
平凡な生活
普通の人生
何事もなく生きていると思う傍らには
それを支えてくれている仕事がある
加害者も被害者も命はみな平等というたてまえを唱えているがそうなのか
奨学金を刑務所の医療に3年勤めれば返金しなくていいという条件があること自体
平等ではないと認めている
受刑者への医療をどうするのか現場で携わる個人が考え判断する
答えが出ていないのに判断は即時
重い責任の仕事を担うある医師の日常を
ミステリーを絡めて読者の目の前に置く
本を閉じても捨てられない思いをもらった

0
2023年02月11日

Posted by ブクログ

良かった。
最初はタイトルに惹かれて本を手に取り読んだが、矯正施設での医療従事者という特殊過ぎる境遇でしか湧きおこらない感情が見事に描かれていた。文章もかなり読みやすく、淡々と彼女の日常が過ぎていく様子が入ってきやすかった。仕事で悩むことが多い読者なら、この本を読むことで何かが繋がるかもしれない。そう思える一冊だった。今まで読んだ小説の中でもかなり良いものに出会った

0
2023年01月05日

Posted by ブクログ

疲弊するのは、仕事の意味がわからなくなったときだ。働いていれば、大なり小なり直面する。その極端な形がここに描かれている。だから自分とはかけ離れた職場環境が舞台にもかかわらず、引き込まれる。
社会の多数派が求める正義には、圧がある。圧は正義の顔をして、悪を唆す。

この小説のどこに怖さを感じるか、そのときの自分の人生のリトマス試験紙になるかもしれない。

0
2022年12月07日

Posted by ブクログ

久々にページをめくる手を止められず、夜更かしして読みました。病気や怪我に苦しむ人を助けるために医者になったのに、ただまっすぐにそう出来ない医師──塀の中の病院で、受刑者を診る矯正医官を描いた物語です。殺人犯、詐欺師などの犯罪者がいれば、当然被害にあった人とその家族がいて、処罰感情が強くて当たり前。一方、犯罪者の家族も苦しめられている。受刑者本人も苦しいのだろう、それが自業自得だとしても。仕事として、そんな人々と向き合う矯正医官・看護師・刑務官を通して、普段とは違う角度で命について考える時間になりました。

0
2024年12月23日

Posted by ブクログ

非常に重い主題をなんとか上手く繋げている感じ。登場人物の造形が浅く関係性が甘いけど、全体には良い一冊でした。ただタイトルと表紙がライトノベルっぽく内容にそぐわない。変えたほうがいいね。

0
2024年09月06日

Posted by ブクログ

刑務所の透析患者が亡くなった件について、矯正医官として働く主人公が挑むミステリ。
重くなりがちなテーマに対し、主人公たちの精神が安定しているからか読みやすくて面白かった

0
2024年07月02日

Posted by ブクログ

医療系社会派ミステリーではあるが、お仕事小説でもある。
出所した人の再犯はよく聞く話だけど、それで被害者になったら刑務所の医師などを憎むようになる気持ちも分かる。本当どうしようもない悪人が存在し年を取って認知症になった受刑者に手厚い介護と看護があることを思うと、世の中は不公平だと知りながらやはり割り切れない気持ちになる。主人公たちも悩んでいるが読む側も考えさせられた。

0
2023年04月01日

Posted by ブクログ

医療刑務所に勤める金子由衣は、2年目の矯正医官。
患者である受刑者のが平均年齢も高くなり、認知症の者もいる。
凶悪な犯罪者であっても基礎疾患を抱えて、医師の助けを必要としている。
由衣が、当直の晩に糖尿病を患っていた受刑者が亡くなった。
突然のことに疑惑がわき、誰かが嘘をついているように思う。

かがやらなければならない仕事。
医師だから命は救わなければならないと思う。
それが犯罪者であっても…だ。
葛藤の中で悩みは尽きない。

病院であって病院じゃない、刑務所であって刑務所ではない。特殊な職場。
何一つとして正解がない。
光はどこにあるのかと考えながら仕事するのだろう。

誰も進んでやりたがるところではないのだろうが、必要としている。
なかなか知ることのできない医療刑務所だが、分け隔てなく医師として勤めることに尊敬する。
いろんな事実を知り、少しずつ成長している由衣に最後は頑張ってほしいと思った。

0
2023年03月15日

Posted by ブクログ

ミステリー要素や社会派要素が詰まった、骨太な作品。由衣先生がいろいろな人と話し、向き合い、考える姿が健気でとても心を打った。

『シークレット・ペイン』も医療刑務所でのお話だけれど、視点が違って両作ともにおもしろい。本作は貫く感じ、シークレット・ペインは変化していく感じ。両作ともに医療刑務所の空気感や、さまざまな受刑者の事情や想いなどをうまく描いていて、秀作だった。

p.97 刑務所では何一つ。自分では決められない。洗えることに制約が伴う。外出はもちろん許されないし、食事も決められたものを食べるしかない。何よりほとんどの時間、鉄格子のはめられた狭苦しい空間で過ごすしかない。それは、すべて、犯した罪に対する罰であるから、当然のことではある。しかしながら、自業自得と考え、関西と悔恨、償いの時間と真摯に受け止め、行動するものは多くない。むしろ、逆、不平を訴えるものが圧倒的に多い。つまり、そうした環境下では、本人の為を持っての言葉にする反感を抱き、ひねくれた主張を繰り返し、他者を困惑させることに自己の存在価値を見いだすと言うことだ。命を削ってまですべきこととは思えないが。

p.204 「わかってねーよ。世の中には大切で、なくてはならない仕事が山ほどある。いや、ほとんどはそういったものだ。面倒で、汚くて、臭くて、吐き気がして。本当なら見たくもねえ、触りたくねえ、関わりたくねえ、そんな仕事が腐るほどある。だから、そうしたことを誰もが避けていたら世の中回らね。誰かがしなきゃならねえ。腹が立っても我慢して、ふざけるなと一喝したいことも堪える。社会のゴミ野郎なんか死んじまえって思っても口には出さない。それが俺たちの仕事だ。それができないのならさっさと辞めろ」

…「…私はまだ割り切ません。おはよう。ありがとう。そんな言葉すら満足に言えない相手を前にすると自分が汚れていく。そんな気になってしまって。だから毎日、診察の前に行かせるんです。彼らは言葉が話せない、言葉を忘れた人たちなんだ。だから仕方がないと。かわいそうな人たちだから、優しく接しないといけないって。でも多くの場合、すぐに要求が投げつけられます。もっと休ませろ、薬を出せ。ヤブ医者って言葉と一緒に。褒められたいわけじゃないんです。そんな必要はありません。でも汚されたくは無いんです」

p.207 「大学3年の夏休みに職場訪問をした時、社会福祉士とは、一体どんな仕事をする人なのか先輩に尋ねたんです。そうしたら、社会福祉と言うのは、靴をなくしてしまった人の新しい靴を一緒に探すこと。人生を歩いていくのは、その人自身だけど、その人が歩きやすい靴を探して助けをするのが社会福祉士だと教えられて。それを聞いて、興味を持ち、自分もしてみたいと考えるようになったんです」

p.214 「お店店をお任せしてもよろしいですか?女性が喜びそうな店を選ぶのはどうも苦手で。魚でも悪でも、嫌いなものはありませんから」熊は、雑食だった。

p.225 「人は、生まれてくる時、場所も時代も、もちろん親も選べません。何故か突然、この世界、この時代に生を受けます。まるで放り出されるように。そして多くは悪戦苦闘して世の中を渡って行きます。中には、悪いことをして生きていく人もいます。でも、誰であっても、私だけは平等に訪れます。どんなに善行相撲が、夢を正しく、他社の命を奪おうが」

「むしろこちらが考えていた形へ誘導しようとする方が傲慢だと思う。そう思いませんか?相手が誰であれ、人の気持ちなんて操れるものじゃありません。いいじゃないですか、本人が決断したんなら。死ぬ時ぐらいわがままを聞いてあげれば」死ぬ時位好きにさせてよ。そういった亡くなった女優もいた。

p.278 「楽しいことも忘れる、ですか?」
「そうだ。もちろんできるなら残しておきたい。でもできなかった。だから取捨選択を止めた。忘れるなら全部。そう決めた」

「俺たちに必要なのは、最先端の医療技術じゃない。社会のはみ出し者である受刑者と向き合い、平然とやっていける精神力だ。どこかの偉い医者が言っていた。鈍感力ってやつかもしれない…嫌なこと、腹立たしい事は忘れて何を言われても、柳に風とやり過ごす」

p.331 「すべての医者がこの仕事を避けていたら、この社会はスムーズに回らない。つまり、そういうこと。人間が法律を作って、その法律に則って自由を奪うなら、奪われた者たちの健康維持だけは、奪った側がしなければならない。そうじゃないかな?これだけは事実だと、最近そう思えるようになってきたんだ。俺たちは、さっそうと登場するイケメンのドクターヘリの医者でも、どんな難病だって治しちゃう魔術師みたいな美人の救急救命医でもない。残念ながらね。でもさぁ、ほとんどの人は知らないけど、社会から必要とされていることだけは事実なんだ、受刑者に対する思いは人それぞれだからさ。それを変えろとは言わない。いや、言えない。それはもう仕方がないことだから。でもさぁ、ここにいる仲間はわかってくれるはずなんだ」

0
2023年02月07日

Posted by ブクログ

医療刑務所である囚人が突然亡くなったことをきっかけに物語が始まります。
最後には、何が正しくて、何が悪いことなのかよくわからなくなってしまうくらい、当事者たちの気持ちがよくわかりました。正解のない世界で、もがいてもがいて、納得できる言動ができたらそれでいいんだと思います。
日本で透析してる人は350人に一人、受刑者一人あたりの収容費用は年間300万円等、数多くの刑務所ウンチクも知れる作品でした。

0
2023年01月29日

Posted by ブクログ

いつも聴いてるPodcastで紹介されたので読んだ。途中刑務所内で死亡事件が起こるので、「あれれ、ミステリーなの?」と思ったけど、骨太の社会派な話だった。矯正できないような人は実際にいる訳で、そこで働いている人たちは苦悩の日々なんだろうなぁ。ちなみに、題名に「嘘」がついていると、めっちゃ読みたくなるのなんでだろ(「6人の嘘つきな大学生」とか「嘘つきな二人」とか)

0
2023年01月24日

Posted by ブクログ

犯罪受刑者の医療を行うための成人矯正医療センターに勤務する医療従事者の物語。改心する見込みのない犯罪者に手厚い医療が必要かは難しい問題だ。なにより被害者より加害者の方が大切にされる現実には吐き気を覚える。題材がとても魅力的で重厚感があり何が正しいのか考えさせるヒューマンドラマであり、医療サスペンスミステリーでもある。しかしストーリー進行が独特なので読みにくい面があるかもしれない。ラストの展開にはかなり疑問が残る。この決着のつけ方で本当に良かったのだろうか?

0
2024年09月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後まで誰が犯人(?)かわからなかったなー!とはいえこの物語の主軸は刑務所で働くお医者さんの苦悩。誰がぎやらなければいけない仕事って色々あるよなあ。

0
2024年05月04日

Posted by ブクログ

自分の仕事と少し通じるところがあった。
誰かがやらないといけないけど必要とされてないのってしんどい。
謎解きよりもお仕事小説のつもりで読んでしまった。

0
2023年07月10日

Posted by ブクログ

ドキュメンタリー小説のようでした。初めて知った、矯正医療機関というものの話。重たい現実とやり切れなさと。

0
2023年03月28日

Posted by ブクログ

ミステリと思いきやかなり骨太の社会派小説。
医療刑務所という、多くの人にとっては一生縁のない場所で、職員の方々がどんな葛藤を抱えているのかがとてもリアルに綴られていた。
ただ、まずは登場人物とそれに付随する要素(役職や既往症)があまりに多く、そのわりにキャラ立ちもあまりなくて、きちんと追いきれなかったのが残念。
あとは内容面でもかなり説明的な部分が多く、もうちょっと会話や心情描写で読ませるというか、小説ならではの読む楽しみを味わいたかったなぁという気持ち。

0
2023年02月05日

「小説」ランキング