【感想・ネタバレ】陸軍将校の教育社会史(上) ──立身出世と天皇制のレビュー

あらすじ

天皇制イデオロギーの「内面化」が、戦時体制を積極的に担う陸軍将校を生み出したというのは真実か。本書は、膨大な史料を緻密に分析することを通じて、これまで前提とされてきた言説を鮮やかに覆していく。戦前・戦中の陸軍将校たちは、「滅私奉公」に代表されるような従来のイメージとは異なり、むしろ世俗的な出世欲をもつ存在だった。秩序への積極的な同化こそが、陸軍将校を生んだ。上巻には、「序論 課題と枠組み」から「第2部 陸士・陸幼の教育」第2章までを収録する。第19回サントリー学芸賞受賞作、待望の文庫化。

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Posted by ブクログ

陸軍将校の教育において、天皇制イデオロギーが徹底され、密教である天皇機関説ではなく、上杉慎吉の現人神たる絶対天皇イデオロギーや忠君愛国、滅私奉公が教育されたが、果たしてそれは内面化されたのかを丹念に読み解く。
陸士・陸幼の採用では、当初は教導団はじめ様々なルートから陸士への道があったが、学校制度が整備されるにつれ、中学校がルートとなった。その際、府立一中など東京の名門中学や九州山口を除く一中では陸士志望は少なかったが、これは社会上層が次第に軍人志望でなくなることによるもので、高校と陸士に学力的に大きな差があったわけではない。
 陸士の出身階層は明治前半は主に士族であったが、次第に減り、1900年台に入ると半分更に減じ、自作・自小作層など中層に移っていく。ドイツでは貴族が主でワイマール時代に中流上層、ナチス時代に漸く中流に、イギリスでは戦後も上層であったのに比べ、大きく異なっていた。

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2024年12月06日

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