【感想・ネタバレ】往来絵巻 貸本屋おせんのレビュー

あらすじ

事件を呼ぶ本の虫・おせんが導く出版捕物帳

デビュー作『貸本屋おせん』で歴史時代作家協会賞新人賞を受賞、
業界最注目の著者による、看板シリーズ第2作!

文化年間の江戸浅草。
主人公は女手ひとつで貸本屋を営む〈おせん〉。
謎があるとつい首を突っ込んでしまう、事件を呼ぶ「本の虫」です。

表題作「往来絵巻」は、神田明神祭りが舞台。
宝くじが当たるより稀有でありがた~い、特別な「行列」を出すことになった与左衛門は、我らの偉業を絵として残そうと提案した。
金に糸目を付けず、1年待ってようやく仕上がった祭礼絵巻がついに完成。
しかし…… 絵には一人足りない人物が。消えた「あいつ」は何者だ?
〈おせん〉の推理がさえわたります。

蔦谷重三郎を巻き込んだ江戸出版界を揺るがす謎や、
〈おせん〉の父の死の真相、本仲間で絵師の「燕ノ舎」の最期……。
ちょっとビターで、心温まる、本好き必読の一冊です!

時代を超えて本好きを魅了する出版文化の豊饒さをお楽しみください。

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Posted by ブクログ

『貸本屋おせん』の続編。
大河ドラマ『べらぼう』にも出てるくるが、江戸時代の出版のしくみがいろいろわかって面白い、が使われている言葉も難しく、なかなか私にはすらすらと読み進められないところもある。

当時の本は印刷されたものだけでなく、写本もあり、貸本屋は自分で写し、貸し出したりもしていたようだ。それゆえ、ちょっと出版したらまずいものも持ち歩いていることもある、ので貸本屋は少し怪しい職業と思われたりもする。

おせんはそこここで起こる厄介ごとにいつも首を突っ込み、まるで探偵のようでもある。この本は推理ものともいえるかもしれない。

そして、『べらぼう』でも、『貸本屋おせん』でも、内容はそれほど高尚なものではないかもしれないが、庶民が書物を求めている様子を見ると、そのころの日本って誇れると思う。
NHKあたりで放映されないかな。きっぷのいいおせんの江戸弁が聞きたい。

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2025年07月29日

Posted by ブクログ

貸本屋おせんの第二弾。
せんは前作品の最後で火事によって商売道具である蔵書の全てを焼かれてしまった。
貸していた本が戻ってきつつあるが、商いのできる量の蔵書ではない。
だからというわけではないが、商売のかたわら、あちこちの書肆に出入りしても不自然ではないという立場を利用して、世話になっている本屋たちが巻き込まれた事件の謎を解いていく。
絵師の鋭い観察眼が、自覚なきままアリバイ崩しをしていたり、幻の本を巡るせんとセドリと岡っ引きの三つ巴の攻防があったり。
他人の努力の横取りで儲ける奴がいたり、はたまた小遣い欲しい若者が危ないバイト?

当時の職人たちの事情や、本屋の仕組みなどが自然に分かる。
謎解きも、その「仕組み」に密接に関わっている。

板木の彫師だったせんの父親、平治は、禁制の本に関わり、咎を受けたあと、大川に飛び込んだ。
父が何を考えていたのかずっとモヤモヤしてきた。
人々の事情に関わるうちに、父がなぜ川に飛び込んでしまったのか、何に絶望したのか、せんにも見えてきたことがある。
父と因縁のあった燕ノ舎に対する気持ちの整理もついたようだ。

【第一話 らくがき落首】

【第二話 往来絵巻】

【第三話 まさかの身投げ】
【第四話 みつぞろえ】
【第五話 道楽本屋】


今年の大河ドラマを見ていると、当時の本屋の店先が良く再現されていて、小説を読みながら情景が浮かんだ。
ますます江戸が面白い。

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2025年06月30日

Posted by ブクログ

貸本屋おせん第二作。北町奉行を揶揄する狂歌、祭の行列を絵にするが一人足りない話など連作短編集。

やはりいい。江戸時代の庶民を描く小説は多数あるけれど貸本屋が主人公のものは他にないだろう。書物の尊さ再認識。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

「貸本屋おせん」を読み終わった余韻の冷めないうちにと、発売まもない二巻目の本作を手に取りました。

江戸の出版業界の内情が綿密に描かれていて、まずそこに興味が湧きました。特に、現代と江戸時代とでは「重版」という言葉の意味が全く違うことに驚かされました。でも、本を愛し、本から得る喜びをできるだけ多くの人と分かち合いたいという、本に関わる人々の願いは今も昔も変わりはないのだなとも思いました。

もう一つ特筆すべきは、本作では“おせん”のような貸本屋だけでなく、戯作者、絵師、版元、筆耕、彫師、摺師といった出版に関わる人たちの思いに、各話の中でスポットを当てているところです。

幕府によるご禁制の影響を受けながらも、力強く生きていこうとする“おせん”たちの姿に心動かされます。特に最終話で“おせん”が啖呵を切る場面ではホントに胸のすく思いがしました。これはもう本好きにはたまらない作品になっています。三作目にも期待大です。

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2025年06月08日

Posted by ブクログ

『貸本屋おせん』のシリーズ二作目。全五話。
舞台は文化年間の江戸浅草。主人公は女手ひとつで貸本屋を営むおせん。

様々な厄介ごとに巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んで 解決していくおせん。
もはや『貸本屋探偵おせん』だ。

どの話もよかったが第五話の「道楽本屋」では新参の悪徳本屋に おせんが啖呵を切る姿はカッコよく、しかし腕の良い彫師であった父が十二歳のおせんを残して川に身を投げた本当の理由がわかった時のおせんの気持ちを思うとなんとも やりきれなかった。

それにしてもこの時代 本を出版するということはなかなか大変そうだ。
地本問屋がいて おかかえの戯作者が草稿を書いて それを地本問屋仲間で吟味して問題なしと認められたら筆耕に清書を依頼して それを元に板木が彫られ摺り師に渡り…… と本当に多くの人が関わって本ができている。
そしてお上の目もある。
大変で窮屈そうだけれど なんだかとてもイイ。
本は この時代当たり前にあった身分を問わないからかな。

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

貸本屋のおせんが本に関わる争い事や事件に、頼まれたり自ら頭を突っ込んだりする五編からなる第二巻。おせんが探偵ばりに謎解きして悪人を懲らしめ問題解決、というわけではなく、江戸時代の本をめぐる事情だったり、町民の暮らしだったりを挟みつつ、おせんがいい具合にストーリーに絡んでいくのがリアルさを生み出し、おちに納得感を生んでいるように思う。ちなみにご時世柄か、二代目蔦重の名前も何回か出てくるので、大河を観ている人はなんとなく場面の映像がイメージしやすくなるかもしれないです。

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2025年07月27日

Posted by ブクログ

「貸本屋おせんシリーズ」第2弾。

「らくがき落首」「往来絵巻」「まさかの身投げ」「みつぞろえ」「道楽本屋」全5篇の連作短編集。

江戸の出版業界が窺い知れるこのシリーズ、金持ちは金持ちなりに、貧しいものは貧しいものなりに庶民が日々の楽しみとして書物に親しんでいる姿が生き生きと描かれる。
出版できない禁制本は古本屋が筆耕し密かに読みまわすとか、そうやってギリギリのところで庶民の文化が伝えられていたんだな〜感慨深い。

そしてこのシリーズの楽しみはなんといっても主人公・おせんのきっぷの良さ。その堂々たる啖呵の切りようには「よっ、梅せん!」と声をかけたくなるほど。

書き下ろしの最終章では14年前に自死したおせんの父・平治の死の真相が判明する。さいごの瞬間は父親ではなく、彫師として命を終えたとわかった時のおせんの心情が辛すぎる。
仕事への矜持ゆえだったんだろうけど、おせんの存在が最後の最後で父を引き留めるよすがにならなかったことが哀しい。

登とは相変わらず付かず離れず。シリーズが進む頃には何かしらの進展があるのか、そちらも楽しみ。

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2025年07月11日

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