あらすじ
30年以上にわたり樹木たちのコミュニケーションを可能にする「菌根ネットワーク」を研究してきた森林生態学者が明かす! 木々をつなぐハブとなり、次世代を育む「マザーツリー」の驚くべき機能とは? 気候変動が注目されるいま、自然のなかの「秘められた知性」に耳を傾ける一冊!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
カナダの森林生態学者による研究論文。
というよりも、著者の学究心の心からの吐露。そして人生、家族への愛に満ちた深い考察文という趣。
深い森とキノコの香り立つような、読み始めから、読む人を温かく包み込むような深い愛情が感じ取られました。、
Posted by ブクログ
カテゴリー設定は、いくつもにまたがるうちのひとつ。専門的でありつつエッセーの要素があり、ノンフィクションルポの面もある。森や動物といった生態系に関する記述は、壮大で美しい風景を“目の当たりに”できて詩的ですらある。
Posted by ブクログ
この本は、対象読者が混み合っていて読みにくい点は否めないが、モノの見方を一変させてくれる。
西洋哲学ばかりではなく、原住民や他種族の叡智も読んでいきたい、先人の知恵を埋めてしまってはいけないと感じた。
読み終わった後、地球が大好きになり、新しい自分が産まれる良い本。感謝。
Posted by ブクログ
1. 森とは調和の取れた全体的のこと(p73)
2. だがいったいキノコはなぜ木の根に水を渡してしまうのだろう?(p97)
3. 林業界は、苗床園で苗木を育てて植樹する方法を編み出したものの、木と協力関係にある菌根菌もまた育てる必要があるということを完全に失念していたのである。(p102)
4. 菌根菌がリンと水分を、植物がつくる糖と交換できるようになっていると書いてあった。土壌にリンが少ない乾燥した気候の土地で植物を助けるためだ(p112)
5. 人間よりももっと物静かで、包括的で、精神性の高いものを、私たちは軽んじ、無視したのである(p126)
6. そう、それは単純明快な考え方だった。競合を排除せよ。自生植物を殺すことによって日光、水、養分が使われなくなれば、高く売れる針葉樹がそれを吸い上げてレッドウッドと同じくらい早く成長するはずだ。ゼロサムゲーム。勝者がすべてを手に入れるのだ。(p154)
7. 「ファストフード式林業」森の生態系は様々なのに、そのすべてに一様の大雑把なやり方を適用するのは、同じハンバーガーを、ニューヨークだろうがニューデリーだろうが、あらゆる文化圏に届けるようなものだ(p229)
8. この森の若い木々は、年長の木々のネットワークのなかで成長しているのだ(p391)
9. 「ウッド・ワイド・ウェブ」(p392)
10. そう、マザーツリーだ。マザーツリーが森を一つにつないでいるのだ。中心にあるマザーツリーを実生や若木が囲み、さまざまな色や重さを持つさまざまな種類の菌糸がそれらを幾重にもつなぎ、強靭で複雑なネットワークを形成している。(p398)
11. 植物が、神経系に似た生理機能を使って周囲の環境を認識するということは、すでに広く認められた事実だった(p401)
12. だが私は、自分のやり方を押しつけて答えを要求するのではなく、ただ耳を傾けることでもっとずっと多くのことを学んだのだ(p498)
13. 私はあらためて感じたのだ。人々が母親、父親、子ども、家族とつながり、木や動物や、その他自然界のあらゆる生き物と一つにつながることが、どれほど自然で重要なことであるかを(p509)
14. 人間が再び自然とつながることが必要だ(p515)
Posted by ブクログ
森に対する見方を変えてくれる本だ。著者のスザンヌ・シマードはカナダの森林学者で、森の木々はマザーツリーと呼ばれる古木を中心に根にからみついた菌糸のネットワークを通してつながっており、栄養や情報を送り合っていることを明らかにした。その研究を縦糸に、女性科学者ならではの苦闘や、妻として母としてそして乳がんサバイバーとしての人生を横糸に、美しく織り上げられたタペストリーのような書物だった。最後に、マザーツリーが衰え死んでゆくときに蓄えてきた栄養や情報を次の世代に渡すことを知った著者が、自分は何が出来るかを問う場面は感動的だ。森には人間と同じように知性があり、そこから多くのことを学ぶことが出来るという。この本は映画化されることが決まっているそうなので、今から観るのが楽しみだ。
Posted by ブクログ
森や土、菌類への見方が変わった。
と同時に、著者の女性として、学者として、母として、など、色んな場面ごとの葛藤や喜びなども丹念に描かれていて、森や生態に関すること以外の、読み物としても良かった。むしろ、物語的に科学の話が混じられているのは、ただ図鑑を眺めているよりずっとイメージが湧きやすく分かり良い。
Posted by ブクログ
私は、木々が失われ行く田舎で育ったが、病院通いのために都会へ移り住んだ。そうしてーーいやずっとというべきだろうかーー「森へ行きたい、棲みたい」と強く願い続けている。
本書を手に取ったのは偶然と、訳者・三木直子さんのお名前に惹かれたためだ(三木さんは私の棚の一番上に常にある『植物と叡智の守り人』も訳されている)。5年以上あたためている物語のテーマが「森」で、片っ端から読んではいたけれど、これほど、「ああ、私が森を希求して、もがきながら得たいと思っていたのは、(スザンヌ・シマード(著者)の)このマッピングを知りたかったからだ」と思い得た本はない。
死にゆくトウヒの苗木に、「どうしてこんなことが起きるのか絶対に調べる」と誓ってそれから研究のレンズを手に取り、森を調べて行き、様々な人生の出来事を体に受けながら、その森の力に気付かされて、森のネットワークは西洋的研究(そのレンズ)の及ばぬところにあると悟った。そういう本だ。子供の辞書並みに厚いが、ぜひ読んでほしい。
Posted by ブクログ
すべての物事はある物事の一部を拡大したり縮小したりしているようだという説が好きなのだが、この本はそういう意味で人も木も、たぶんそのほかのものも、同じなのではないかと思わせてくれる感じがありわくわくした 人の健康も木の健康もつながりがだいじなんだなと思った
Posted by ブクログ
乳がんサバイバーの本。森林生態学の本なんだろうけど、私には。強いひとだなあ。人と関わるのはしんどいけどそれでもやっていくしかないのだろうなあ。
Posted by ブクログ
森や木をテーマとした本はいくつか読んできましたが、ここまで専門的で神秘的な内容を分かりやすく伝えてくれた本はこの本が初めてでした。
まさに、私が求めていた「森」に関する本でした。
木は人間であり、我々と同じように行動し感じる、叡智の持ち主である。森よ永遠なれ!
Posted by ブクログ
映画「アバター」のコンセプトとしても採用された、自然の木々が知性を持ち、互いに意思疎通し合う共生のメカニズムが実証されるまでの過程を記した一冊。
材木会社が伐採後の植樹に相次いで失敗するのを目の当たりにした著者は、農業のようにビジネス上の効率性を優先し、商品価値のある単一樹木の栽培のために、それ以外の草木を競合と見做して排除する政府の「自由生育政策」が、森の多様性を阻害しているのではないかと考え、伐採地でのプロジェクトを含む多くの実証実験により、森の木々が根に共生する菌類を介して、お互いに養分を融通し合っている事実を明らかにする。
研究結果をもとに発表した論文が、進化は競争のみがもたらすと信じて疑わない学界や、自由生育政策を進めたい産業界から激しい批判を浴びる中、著者はさらに研究を進め、「マザーツリー」と呼ばれる長老的な古木が自らの子孫に優先的に養分を与え、障害を受けた木が周囲に警告を発し、枯れる前の木が周囲の木に養分を譲ることを突き留め、森全体が菌類のネットワークで繋がった「知性」を持つシステムなのだと主張する。
本書は、伝統的な木こり一家に生まれ、山の中で土を食べて育った著者が、ただ感傷的に環境保護を叫ぶのではなく、徹頭徹尾科学的なアプローチによって歴史的転換ともいえる偉業を成し遂げた探求の物語であり、また男性優位の世界を相手に、時に傷つきながら戦い続ける一人の女性科学者の物語でもある。さらには愛する家族との複雑な関係や苦悩と別れ、赦しと癒しの物語が重層的に織り込まれ、読み手の心を掴んで離さない。
木々の繋がりが他の動植物、果ては人間をも含めた全ての繋がりへと昇華する。自然の神秘に科学と精神世界の両面から迫った唯一無二のノンフィクションである。
Posted by ブクログ
カナダ生まれの森林生態学者の自伝的な回想録でもあり、森林システムについての彼女の研究成果を紹介する一冊。
樹木と樹木は根や菌根菌類を通じてコミュニケーションを取り合って最適な生存戦略を森として採用してる。そのことに気づいてからそれを科学者として証明し、人々に理解してもらうまでの科学的に証明しにくいだろうテーマに科学的に正面から挑戦してきた彼女の人生は本当に尊敬に値する。
人間は自然の一部。自然が本来持っている知性を尊重し、耳を傾けることの重要性がよくわかる一冊。今後、TED動画や関連映画なども見てみたい。
内容はとてもおもしろいが、文章は少しだけ読み進めにくかった。
Posted by ブクログ
話題になっていた本だと思うがその分厚さにかなり怯む。頁数は550ほど。辞書と同じくらいには分厚い。
で、読みはじめてみると、最初は(わたし的には)つまんなくて、読むの止めちゃおうかな、、、などと、逡巡している間に気付いたら面白くなってくるんだから不思議。
この本はシマードさんの自叙伝でありフィールドノートだ。彼女の生い立ちや家族のバックグラウンドの話が導入部分で、森と近接した暮らしから木への興味(発端の驚くべき発見がある)、何故どうして?の疑問を解決するために彼女は動き出す。女が外に出ていく時代じゃなかった昔に孤軍奮闘(実際には大いに助けてくれる人たちがいたけど)する状況もつぶさに記載されていて熱い。
自分のこと、家族のことを赤裸々に正直に書きつつ、森や木々が菌類を介してネットワークを形成して情報伝達しているなんて、まるで細胞内のシグナル伝達みたい!
ミクロからマクロまで、土のなかの菌類、熊から地球温暖化まで実に壮大なスケールのお話で、こういうの読んじゃうと地球のために何が出来る?のレベルで考えるようになる。
彼女はTEDでも講演してて見てみたけど英語の勉強にもなるし、本の内容知ってるのでめちゃ良かった。600万近くの再生数がありましたヨ。
Posted by ブクログ
森林を形成するのに最も重要なのは地下に広がる根と菌類のネットワークだった!というのを直感的に感じ取っていた著者が、既存の林業による伐採と生育を変えるために、森林が多様性のもとで協力しあいお互いを支え合っていることを科学的に証明しようと奮闘するノンフィクション。既存のやり方を守りたい政府や林業従事者との闘いであり、女性であるが故の嘲笑や障壁との闘いであり、著者自身の人生を記したものでもある。その分情緒たっぷりの表現も多くて、読んでいて辛い場面も多かった。が、この本が伝えたいことは自然とのつながりを意識して、実感として感じてみてねというのがまず大前提にあるのだろうから、自然と触れることでその美しさや生命力や知性に感動し、愛おしく思う著者の感覚こそがメインなんだろう。科学的な証明や記述は、説得力を補強するものとして書かれている。
経験を裏打ちするための証明ってところがいいですね。
私も森とか山とかに分け入って散歩をしたり、その生態系を眺めるのが好きなのでシーンによっては土と木の匂いが想起されて楽しかった。
Posted by ブクログ
「木の知性」
これが暗喩ではないという事実に愕然とした
人間がいかに断片的な科学だけで物事を考えてきたかってことがよくわかる。医学もそうだ…
凄いわ、この本。
帯の文章が良い
「これは『どうすれば私たちが森を救えるか』という本ではない。『私たちが木々によって救われる可能性』についての本である」
Posted by ブクログ
この世にある全てのものはそれそのものだけで存在できず、さまざまなものと直接的、間接的に共に支え合って生きていると気付かされる内容だった。
そして、人間が利益を求めるあまり、人の手を加えずとも保っていた自然のバランスを人の手によって破壊するという人間の醜さも感じた。
自然から受ける恩恵は大きい、人間は自然から助けられているのでありそれを忘れてはいけないと思った。一人一人が自然を大切に思い、どんな小さなことで自然を守る行動していくことが我々、人間ができる自然に対する恩返しではないかとおもう。
Posted by ブクログ
うーーーん。なんか物凄い読みにくかった。とても面白い内容だし、森林生態系は本当に興味深いのだけれど、著者の自伝的な部分が多すぎて、しかもそこがあんまり面白くないというか。いやまぁ生い立ちがあるから語れることもあるんだろうけど。なんやろ?正直いらんやろって箇所多いし、そのエッセイ的な部分がとにかく読みづらい。文章の問題なんかな?知らんけど。
Posted by ブクログ
森の木同士に菌類を介したつながりがあるなどとは考えたこともなかった。
どちらかというと競争関係にあると思っていたので新鮮な驚きだった。
一方、街路樹が一定の期間で枯死していくということは聞いたことがあったので落葉を廃棄処分してしまう都会の樹木では養分が不足してしまうのだろうなと思っていたが、さらに大きな要素があったのだと思いました。
今話題のイチョウの街路樹伐採問題は、本質的な議論ではないのかもしれません。
Posted by ブクログ
森林の木々は、地中の根から菌根菌を通じて栄養や情報のやり取りをしている。それは、日本人ならば八百万や縁のようなアニミズム的な観点から納得できる話であろう。その常識に科学が追いついてきた。
森林生態学者である著者は、粘り強く森林内部の調査や実地での実証実験を繰り返すことで、「マザーツリー」と呼ばれる高齢大樹が自らの子孫や異種の草木、キノコや地衣類といった菌根菌を育てコントロールすることで、調和した森林空間を創造する実態を突き止めた。
そして、歴史上多くの時間を森林で過ごしてきた人間も、このマザーツリーの影響を受けている。太古からご神木と崇め、水や収穫物を得てきた先祖たちは直感的にその重要性を理解していたのだ。むしろこの自然環境の調和を乱しているのは人工物であり、化学物質に依存した農林業であろう。
全米を衝撃に導いた本作はまもなく映画化され、日本にも波及しようとしている。この当たり前の感覚を西洋から輸入しなければならないのはなんとも情けなく、ようやく生物多様性などの本質理解が進むものと期待している。
Posted by ブクログ
余りにも環境保全界隈に持て囃されているのと、余りにも分厚いボリュームでなかなか手が遠のいていた本。思った通り、重量級の本でした。
利己/利他的な活動という生態学の中でもアツい課題に対して、それまでの常識に一石を投じてきた著者の奮闘記。
科学的な内容は分かりやすく簡略化されて記されており、むしろ著者の自伝という色が強い。著者の人生は大ボリュームの本の中でも弛れる事がなく、常に波に晒されている。波が打ちよせる度に、科学者・家族・生活の様々な軸で迷う。
この迷いには自分が人生を生きる上でも大切になることが多かった。確固たる価値観を自分の中に築く事ができれば、どのような選択をしても最後は受け入れられる。