あらすじ
サステナビリティの時代、
経営における最大の課題は「ビジネスと人権」だ!
しかし、「人権に関する一般的な理解度の国際比較」ランキングで、
日本はなんと最下位だった!(Ipsos、2018年調査)
指導原則、ILOの中核条約、NAP、人権DD……
企業活動がグローバル化するなかで、人権との関わりも大きくなってきたことに伴い、企業の責任として「人権尊重の経営」を求める動きが加速している。
誰の権利を守るのか?
どういう権利をどのように守るのか?
「ビジネスと人権」に関する企業の取り組みは、まだ発展途上であり、欧米の多国籍企業であっても、完璧に指導原則の要請事項を実践、体現できているところは存在しないといえる。そもそも、サプライチェーン上の人権リスクを完全にゼロにすることは不可能である。そのなかで、自社として「ビジネスと人権」の課題にどう向き合うことができるのかを真摯に考えられることこそが、これからの企業経営にとって重要であるといえる。
しかし現状では、ビジネスと人権に関する国際文書は記載が曖昧なものも多く、一読しただけではなかなかその内容を理解することは難しい。そこで本書は、人権概念そのものを理解したうえで「ビジネスと人権」に取り組んでいくことを念頭に、読者が具体的なイメージを持てるよう、筆者の専門領域である「人権×労働」の観点から、現場における事例等を数多く紹介。国内外の最新状況と共に、世界が突きつける課題を整理し、日本企業が絶対に押さえておくべき知識を網羅的に解説する。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
【人権の枠組みをビジネス界に適用するとは】
ビジネスと人権の国際的な枠組みを、日本企業にどう適用していくかについて、具体的な手法等が紹介されている。
著者は、大学院で国際人権法を専攻され、現在は三菱UFJリサーチ&コンサルティングサステナビリティ戦略等に携われているとのこと。
企業内でサステナビリティ経営改革をどう進めていくか、を示す教科書的な内容にもなっているかと思う。
著者が専門とされていた労働法に焦点を当てた章では、日本の現状を国際標準と照らし合わせ、また主な先進国の法制化の事例を紹介がなされている。
日本で働くと当りまえの時間外労働は、国際的に禁止とされている強制労働に抵触するのか、今すぐに罰せられるものではなかったとしても、開示義務などが課され、将来的にはなくなるのかな、、、と思ったり。
もともと国家を対象として発展した国際的な人権法制度。今世紀に入り、民間セクターにもその対象を広げる取り組みが、国連を中心になされてきた。日本は先進国内でも国内制度への組み入れに後れを取っているけれど、人権というワードが、このように主流ビジネス界の語られ、推進されるようになったことは、進展なのだと思う。
もちろんこのビジネスと人権への民間セクターの取り組みは、ビジネスとしての人権としてではある。
よって、これを取り入れることで採算が取れないと認識したらやっぱり難しい。
「もちろん、価格で商品やサービスを選ぶ消費者だけではないことは事実ですが、企業として社会的責任を果たしている企業が損をするようなルールは公正であるとはいえませんし、そのような市場の状況を黙認してまっては、国家としても指導原則上の人権保護義務を果たしているとはいえません。人権DDを義務化し、人権DDにかかるコストを公平に負担させることで、レベル・プレイグ・フィールドの形成を図ることが、国家として果たすべき役割のひとつと考えられているのです。」
企業の自発性には頼れないので、国家の積極的な法制化が必須である一方、2022年に公表された国別行動計画での重要事項では、その一つに、ビジネスと人権に関する政府の理解促進等も含まれているとのこと。
本質的に人権の概念を日本国内の官民セクターに導入することは、なかなか難しいと感じる。
どういった方法にせよ、今日ビジネスが人間個々人に与えている悪影響をなくしていくには、現状のビジネス上の利益を越えた視点からの強い介入が欠かせないと思った。