あらすじ
「あそこは墓地なの」
三歳の娘が語る衝撃の胎内記憶とは…
「墓地」より
鳥肌びっしり、絶望がみっちり
ギュウ詰めの酸鼻に首まで浸かる実話怪談
一家四人が首吊り自殺した忌み家。お稲荷様の祟りともっぱらの噂だが、そこに新たな住人が…「サイレン」
とある神社に髪の毛で結わえられた無数の絵馬。内容は全て謝罪文で…「こうたさま」
孫の初節句の写真に変な男が写っていると訴えた直後に吐血死した祖母。母親には何も見えないのだが…「七五三の写真」
豪商の家の養女になった貧家の娘。彼女が新しい家の天井裏で見た恐ろしい光景…「赤い部屋の理恵」
三歳の娘に好奇心で尋ねた胎内記憶。すると娘の口調ががらりと変わって…「墓地」
ほか、家族円満ならぬ禍族厭満な実話がぎっしり。
さて、いま貴方の隣にいる人の笑顔は本物ですか?
感情タグBEST3
実に厭な
胸糞が悪くなる本である。人格崩壊。一緒に暮らしている家族の過去。和かな仮面の下に現れる醜い顔。霊の方に正当性があるとしか思えない人間の真の姿。善人ヅラの極悪人。本書は、怪談というよりも、そういう人間の醜悪さが最後に残る。それにしても「厭」という字は「嫌」よりもすごくいやな感じがする。
Posted by ブクログ
“厭が満ちる”というタイトルは「家族円満」にも掛けているとのことで家族内、家族絡みの話がやや多いか。改めて言わずともこの人の怪談は常に厭度満載だが。終盤になるに従って話の厭さ悍ましさがさらに加速度を増していくのもお馴染み。
印象に残ったのは、
・その部屋に住むと米の飯が一切食べられなくなる「腐り米」
・一家揃って死に絶える際に異様な長い叫び声が響く家「サイレン」
・公私で失敗や不運が続く男が突如知ったその理由「なるほとね」
・一族の恥として軟禁された妹と、唯一人心を通わせていた姉「姉妹」
・座敷童子と暮らすことを夢見た男がようやく手に入れた家とは「座敷童子に会いたくて」
・知人宅のクローゼットや押入れに封印されていたもの「同情」
・公私とも理想的な父親をある日突然娘が避け始める「どうする」
・娘の胎内記憶で語られた、夫の知らなかった妻の過去「墓場」など
“禍族厭満”だけあって家族内の話も多い。単純な好奇心、あるいは無防備な同情、善意が報われるどころか最悪の、取り返しのつかぬ結果を招くような話が続く。と同時に悪意ではなく己や家族を守るための保身故の行動でも、時にひどく悍しいものになる……という話も。