【感想・ネタバレ】土の文明史のレビュー

デイビッド・モントゴメリー / 片岡夏実

土が文明の寿命を決定する！
文明が衰退する原因は気候変動か、戦争か、疫病か？
古代文明から20世紀のアメリカまで、土から歴史を見ることで社会に大変動を引き起こす土と人類の関係を解き明かす。

[ブクログ · ★★★★☆]

面白かったけど、後半に向かうにつれてちょっとタレた。先に『文明崩壊』を読んでいて、巻末の参考文献リストから飛んできて手に取った本でしたが、この本における主要なエッセンスはがっつり『文明崩壊』の方で要約されてしまっていたということが読み進めるごとに明らかに。

つまるところ、程度の差こそあれ、過去に崩壊した様々な文明や、現在進行形で消滅の危機にある地域の疲弊の原因は良質な土壌の流出によるものなんですよ、ということを一冊を費やして何度も何度も繰り返し論じている、というのがこの本の軸です。中盤あたりでそれが読み取れてしまうので、あとは章ごとに新たに出てくる各地の事例を各論として読むだけ、となってしまいます。

土のことだけ抜き出して詳しく知りたい、という方にとっては良質な参考書となるでしょう。土以外の要素も含めて文明の疲弊や崩壊について知りたいのなら、包括論になっている『文明崩壊』を読んだほうが参考になります。

[ブクログ · ★★★☆☆]

銃、病原菌、鉄、さらに土。「文明崩壊」にも記述される、土壌劣化による文明崩壊の例示が、古代ギリシャ、ローマから現代アメリカ、ハイチまでこれでもかとばかりに示される。見落としがち、というか、逆に誰でも思いつくがゆえに深く考えてこなかった当たり前の要素。インテリの思想がここに至った時に、計画生産という結論に飛びつきたくなるのもわかる。しかし、解法はおそらく、個々の人々の知性に委ねられるのだろう。間に合うかどうかは別として。