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Posted by ブクログ
北上次郎の評価は「面白いけど、いつものグリーニーほどの作品ではない」。
その評価の後で読んだので、正直期待していなかったが、やっぱり面白かった。
確かに、実は死んだはずの悪者が生きていた、というのは新鮮味があるネタではない。
その悪者カーンの人物描写がイマイチなのもわかる。ただ悪さだけをしている奴だし、最近漫画でもあるような悪者でもその人生を深掘りするような描写もない。
ゾーヤも出ないし、物語が現在と過去の2つが同時並行で進行するので、それぞれの物語のスケールがどうしても小さくなっている。
でも、やっぱり面白い。
現在と過去を行ったり来たりする構成が、それぞれの物語をコンパクトにし、それが逆に躍動感を産んでいる。いいところで切り替わるから、常にお預け状態、先へ先へと読まされる。
グレイマンの若いときが初々しい。分析官と恋に落ちたり、シエラのメンバーに怒られたり。それでも認められようとがんばる姿が、微笑ましい。
いつものグレイマンなら、もっと孤独に、もっと自虐的で利他的に動くはずだが、ここでは若さゆえのプライドみたいなものが見え隠れする。
次作でどのように変わっていくかで本書の価値が問われるように思う。