あらすじ
19世紀末。アフリカ大陸の中央部に派遣された船乗りマーロウは、奥地出張所にいるという象牙貿易で業績を上げた社員、クルツの噂を聞く。鬱蒼たる大密林を横目に河を遡航するマーロウの蒸気船は、原住民の襲撃に見舞われながらも最奥に辿り着く。そこで目にしたクルツの信じがたい姿とは――。著者の実体験をもとにし、大自然の魔性と植民地主義の闇を凝視した、世界文学史に異彩を放つ傑作。
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Posted by ブクログ
脚注25 "十九世紀の世界地図では、諸大国の領土を赤(イギリス)、青(フランス)、オレンジ(ポルトガル)、緑(イタリア)、紫(ドイツ)、黄色(ベルギー)の各色で色分けしていた。" p.204
"油のようにねっとりとした波が大儀そうに艦をもち上げては下ろし、細いマストを揺らしている。" p.35
これぞ目の当たりにしたものの描写と思える。想像では、こうはいかない。
" この黒人たちが緩慢な死をとげつつあるのは、ひと目でわかった。彼らは敵でもなければ犯罪者でもなく、もはやこの世の者でもない――病いと飢えにからみとられ、緑がかった薄暗闇のなかにもつれ合って横たわる黒い影にすぎない。" p.42
"顔を照らす松明の明かりが不吉な翳を生んでいた。" p.64
脚注から超訳の気配がうかがえたのだが、これは翻訳の妙であろうか。原文の味だろうか。
序盤から、映画『地獄の黙示録』にすごく似てると感じた。調べてみたら本書を翻案して制作されたとのこと。そもそもそれで気になって読もうリストに積んだのだった。積んだまま忘れていた。ことによると2022年より前から。
良い読み心地ではない。序盤は特に。うだうだぐだぐだ自分語り。天使憑きを思い出させる。天使憑きは若年の頃からのトラウマ。減点。
自分語りでないところには感じ入るものがあり、時にマジックリアリズム的な心地よさも覚える。加点。
コンゴの状況を憂いたとされる作家が南アメリカの金鉱に投資している。どう解釈したらいいのか。それはそれ、というやつか。
訳者は解説において<自然対人間>というテーマがあると記している。この記述は、本書に覚えた違和感を追求するのに役に立った。
本書においてアフリカ人は、二通りに描かれている。船員として働くアフリカ人と、そうでないアフリカ人。そうでないアフリカ人は、人間としてではなく、アフリカの事物として記されているように読めた。船員として働くアフリカ人は、特徴的な風習を特筆している点はあったとしても人として描写しているので、単純に<こちら側対あちら側>という構図にすぎないと感じられる。
少しでも理解が及ぶもの、こちら側にいるのは人間、そうでないものは自然という対照。欧米主観対その他。
そのような印象が本書に冠された「植民地主義の闇を凝視した」という評に違和感を覚えさせる。
著者がレイシストであるという批判は古くからあるようで、実際、イギリスの植民地は絶賛し、他をくさすというようなこともあったようだ。本書の舞台となるコンゴはこのときベルギー王の私有。南アの金鉱に投資できた理由もわかる。レイシストかどうかはわからないが、ダブスタではある。
訳者が巻末解説に記した著者の影響について。
『密偵』はグレアム・グリーンに。
『ナーシサス号の黒人』はヘミングウェイに。
コッポラ『地獄の黙示録』に。
ヴェルトナー・ヘルツォーク『アギーレ/神の怒り』に。
キャロル・リード『第三の男』に。