あらすじ
日本人は、在来の縄文人と渡来系弥生人の混血によって生まれた。「日本人の起源」の定説である。しかし、この縄文/弥生人モデルが二〇世紀後半に定着するまで、人種交替説、固有日本人説、混血説、変形説など、様々な説が唱えられてきた。研究の進展とともに、見え隠れするのは同時代の社会からの影響だ。近年はゲノム解析により、縄文/弥生人の図式もゆらぐ。起源を訪ねた研究者たちの足跡を辿り、日本人の自画像を描きだす。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
明治期には石器時代の遺物はすべて先住民(アイヌ、コロボックル)のものと考えられていた。また記紀の信頼性が非常に高く、神武東征が歴史的事実としてとらえられていた。
鳥居龍蔵は弥生土器を残したのが固有日本人で、アイヌの石器時代と日本人の祖先の石器時代があったとし、人種交替モデルが主流だった。
戦中から戦後における日本人起源論の二大学説は長谷部言人の変形説と清野謙次の混血説。
戦後、1946年9月市川市国府台にグロートが日本考古学研究所を設立、58年に閉鎖。
1946年に秋田県大湯環状列石の調査。1947年から始まる登呂遺跡の発掘と日本考古学協会の創設。
1946年秋、相沢忠洋の岩宿遺跡の発見、49年杉原荘介らが発掘、旧石器の発見。
登呂遺跡の熱狂と弥生=稲作、平和な水田耕作のイメージ。
現在は縄文/弥生人の二重構造モデルが主流。
Posted by ブクログ
明治期からの日本人の起源論の変遷。自分が小中学校で学んだのは連続モデルであったと思う。
今はどうなっているのかな?
最新のモデルについての記載が少なかったのが残念。
Posted by ブクログ
「日本人の起源は?」日本人であれば誰もがその答えを知りたいと思うのではないだろうか。
自分はこの著作にいう縄文/弥生人モデルの考え方に何となく慣れ親しんできたが、その考え方の基底にある発想法の問題点など、いろいろな問題があることを知った。考古学や人類学という学問の方法論も変わってきており、一筋縄でいかない奥深い問題があることを学ぶことができた。
Posted by ブクログ
肩透かし。縄文人と弥生人の違い、それぞれの出自が解き明かされるものと期待したが、隠しテーマは、学問と政治・社会の関係?権力に媚びへつらう輩に日本人の起源まで脚色される。掻き立てられた古代へのロマンが音を立てて砕け散る。古代史は忖度の重ね塗り?人物紹介手短にすれば、もっとわかりやすくなったのに…残念。“神の手”による旧石器遺跡の発掘捏造報道が、可愛く思えてきたし、起きるべくして起きたんだと納得…。
Posted by ブクログ
標題だけ見てとっさに買ってしまったが内容は考古学の歴史で、縄文時代がなかなか出てこないのが、新鮮だった。それだけ新しい概念であることがよくわかった。日本人の起源を探究する試みはまだまだ続くのだろう。
Posted by ブクログ
近代日本の人類学・考古学における縄文人や弥生人をめぐる研究を科学思想史の観点から検討。
タイトルから期待した内容とは結構違っていて、ちょっと肩透かしを食らった感じだが、戦前・戦中を中心とした人類学者・考古学者たちの群像劇としては面白かった。
戦中はいずれの人類学者・考古学者も日本人の祖先の海外からの渡来には口を噤んでいたというエピソードをはじめとして、学問は、その時々の政治・社会の影響を免れないということにも思い至った。
Posted by ブクログ
縄文人と弥生人に焦点を当ててはいる。日本考古学の歴史であり、考古学者の人物とエピソードと主張の歴史であるので、考古学に興味があり、その歴史をざっと復習したい人にはいい本だと思われる。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 日本人類学・考古学の誕生と人種交替モデル
第2章 日本人とは誰か
第3章 人種交替モデルを越えて
第4章 土器編年と日本人起源論
第5章 日本に旧石器時代は存在したか
第6章 アジア太平洋戦争と縄文・弥生研究
第7章 敗戦と考古学の時代
第8章 人種連続モデルと縄文/弥生人モデル
終章 縄文/弥生人モデルと縄文の時代
<内容>
日本の考古学の発展、特に縄文時代・弥生時代の設定を土器、人骨の研究史でまとめたもの。著者は考古学者ではなく、科学史の研究者。明治から大正期は、日本人のルーツ=アイヌ、という説が主流で、縄文や弥生時代は想定されておらず、違う民族が入ってきた感じだったが、その後人骨などから一時、弥生時代に大陸から入ってきたのが現在の天皇家などの祖という感じとなり、戦争でそれは吹き飛ぶ。戦後は、人骨研究が進み、縄文と弥生時代の連続性(一部大陸からやってきた人もいて、列島上で混血していった)が主流となったそうだ。教科書的に授業では説明しているが、縄文・弥生の定義や位置づけもなかなか難しい。