あらすじ
日本の気候は、5000万年前の超温暖期から3000万年前の寒冷化、2300万年前のモンスーン開始による梅雨の誕生、エルニーニョ多発の時代、260万年前の氷期など、さまざまな変化を経験してきた。そうしたなかで、日本は列島を形成し、日本特有の温暖湿潤で美しい四季をもつ気候となってきた。5000万年前には大陸の一部だった日本が、大陸から分かれ始めたのは約4000万年前、日本列島が現在の位置になったのは約1500万年前だが、その長い時代の変遷の中で、日本の気候はどのように変化してきたのだろうか? 気候は、日本だけでは語ることはできない。日本の気候の成立には、ヒマラヤ山脈の誕生によるモンスーンの開始や黒潮と対馬海流の成立も大きく関わっている。本書では、地球全体の気候変動、日本列島の地質学的な変化と気候の変化を関連づけて明らかにしていく。
主な内容
第1章 超温暖期とその後の寒冷化 日本列島以前の気候
第2章 モンスーン時代の到来 梅雨の始まり
第3章 日本列島誕生と気候への影響
第4章 地球温暖化アナロジーの時代
第5章 第四紀氷河時代の日本
第6章 日本特有の気候の成立
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
地学やってなくても楽しく読めました!
図表も多く、大事な所をまとめて振り返ることもできるような構成になっているのも初心者向けな気がします。
二酸化炭素が増えたのも気温が上がってってるのも歴史的に急激な事で、人間も含めて急激な変化に対応しきれず滅んでしまう種があるかもというのに、環境問題の緊急性を感じました。
Posted by ブクログ
国立科学博物館地学研究部の研究員の先生がたによる、日本の気候変動の歴史の研究関する本。科学研究と一般市民の橋渡し役を担っておられる先生がたならではの、とてもわかりやすい説明でした。
古今和歌集の入門書を読んでいて、日本特有の四季の変化に興味を持ち、その由来について知りたいと思い、この本を手に取りました。一方では、現在の地球温暖化の影響が、デリケートな日本の四季に今後どのような影響を及ぼすのだろうか、という危惧もありました。
なるほど、古今和歌集に見られる日本の四季の多彩な変化というものが、どのような地質学的な時間変化のなかで形成されてきたのかが、大づかみに理解できました。
現在の日本の四季の有り様は、長大な地質学的な歴史のなかでの、ほんの一コマ、一瞬の出来事でしかないこと。その瞬間に、古今和歌集を源ととする日本固有の季節観が生まれたこと。地質学的な時間スケールで見れば、日本の四季は永続的ではないこと。さらに、現在では、人為的な要因によって、四季が脅かされていること。……
Posted by ブクログ
この本が持っているレンズで見える世界、めちゃくちゃクリアだったです。「ブラタモリ」的な地形を見るレンズとノーベル賞の真鍋叔郎の「大気海洋結合モデル」的な大きなレンズの真ん中ぐらい…地球の中での日本列島の生成を目の当たりにしているようでした。使われる図表もシンプルでわかりやすく、また語り口調もやさしくて、海流の冷たさ温かさ、モンスーンの温度湿度も、体感できるような気がしました。読んだ後で著者チェックしたら科学博物館の先生たちだったんですね。日本の科学博物館って素晴らしい!って感想持ってしまいました。上野に行きたくなりました。COP27の議論も、こういうスタイルで伝えてもらえたら、もっと盛り上がるのではないかと思いました。始新世、漸新世、中新世、鮮新世、更新世、完新世と駆け上がる日本の気候5000万年史、そこが人新世として繋げることができるかどうか…このブルーバックス、とても面白かった、です。
Posted by ブクログ
なんか解像度がめちゃくちゃ上がってる。でも、言ってることは30年前とそれほど変わってない。ブレイクスルーがある時期ってそんなに多くないのかもしれない。
Posted by ブクログ
新生代の地球史と気候変動について、最新の研究結果をまとめている。
火山噴火による二酸化炭素の増加、南極周極流の成立による氷床形成、珪藻やC4植物の繫栄による二酸化炭素の減少、チベット高原やヒマラヤの隆起によるアジアモンスーンの発生と浸食や風化の促進による二酸化炭素の減少、パナマ海峡の閉鎖によって北大西洋への暖流の北上が北極海の海氷や氷床を発達させたことなどによって、気候は変動してきた。第四紀の気候変動は、ミランコビッチ・サイクルによる日射量の増減で説明できる。
日本列島においては、日本海の形成と対馬暖流の流入、その後の隆起や海水準の低下による対馬暖流の遮断によって気候は変動してきた。
Posted by ブクログ
日本周辺の5000万年間の気候変動を、時間軸をギュッと圧縮して紹介してくれる一冊。スケールが大きい。地殻運動、日照、海流、気温、火山、モンスーンなど様々な要因があって、今の日本の豊かな四季があることを再認識できた。
Posted by ブクログ
現代が氷河期の間氷期で、今は氷期に向かっている最中なのに、なぜ温暖化問題が起きるのかと何となく思っていた。そこでこの本が読みたくなった。そもそもの知識が疎いので5000万年前からの解説はヘビーなのだが、日本に人類が渡来したあたりから面白くなる。地球の大きな変動の中で小さな気温差は問題ないのかと思っていたがそうではない。わずかな気温の変化で干ばつや飢饉があった。そして今のままの二酸化炭素排出が続けば、2100年までに1600万年前と同水準の気温になり益々台風やゲリラ豪雨が増え北極の氷が溶けて日本の平野は海に沈んでいくことになるのだ。今の子供たちが老人になった時に起きる問題だけれど、現実の生活を変えられない自分たちがいる。