あらすじ
高島太一を殺したい。松木真桜。教師から塾講師に転身。指導者が教え子を殺すことは許せない。川瀬奏音。一般企業を辞め、講師に。高島太一の罪の露見で、塾の名声を傷つけたくない。檜垣兵吾。学生の頃から働き始め正社員に昇格。被害者の復讐を果たしたい。須之内すみれ。塾長に引き抜かれる。愛する人に汚辱にまみれてほしくない。中森直哉。古参の講師。息子の罪による母親の心の瓦解を防ぎたい。だから、みんなが殺したい。
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Posted by ブクログ
殺したい相手がすでに倒れていたら、殺したがっている人物が5人いたら。
石持さんの結末が気になる魅力的な謎と妙に冷静な登場人物があわさって一気に読めました。このあと捜査がどのように進んだのか気になるので、警察サイドの続編を書いてくれないかな。
Posted by ブクログ
石持浅海さんが、光文社の新人賞Kappa-Oneの第1期としてデビューしてから、20周年。記念作品だという本作は、良くも悪くもこれぞ石持作品なのであった。
タイトルからして石持流。同一人物を殺したい人間が5人いて、いずれもターゲットの同僚だというから、どうかしてるぜっ! 彼らが勤務する塾は、不登校の児童・生徒を専門に教えているのだ。そんな志に共感して集まったはずなのだが…。
対人地雷除去に取り組むNPOをテーマにした、『顔のない敵』という作品を思い出す。登場人物が崇高な任務に取り組んでいるという点、それなのに倫理観がぶっ飛んでいるという点に共通点を感じる。なぜ、簡単に「殺す」という結論に至るのか?
オープニングから、高島太一の行動と、それを目撃していた5人に突っ込みたくなるのは、毎度の恒例行事である。石持作品の登場人物たちに、まず警察を呼べよ! などと言うのは野暮というもの。固定ファンなら、過大な期待は抱かず読み進める。
20周年記念だからって特別な演出はない。いつものように、肩の力を抜いて淡々と描く。そこに揺るぎない信念を感じるか、進歩がないと切り捨てるかは、読者次第。まあ、本作を切り捨てるくらいなら、とっくに愛読者をやめているだろうけども。
クローズド・サークル型の石持作品は数多く、それらを読む度に似たような感想を書いている気がしないでもない。自分だって、この20年間で進歩なんてない。少なくとも、石持浅海のように、読者に何かしらの引っかかりを覚えさせる能力はない。
シチュエーションの工夫には触れておこう。こんな連中でも、無用なリスクは冒したくないのだ。そして、「事件」の後始末が描かれずに終わることが多い石持作品には珍しく、一応後始末も描かれる。……。この塾は一刻も早く潰すべきだな。
デビュー以来現在まで、石持浅海さんはコンスタントに作品を発表し続けている。Kappa-Oneの同期・東川篤哉さんとともに、今後も文句を言いつつ読み続けるだろう。