あらすじ
1994年、一人の男が沖縄・万座毛から墜死した。遺骨を引き取った22歳の美しい娘も行方不明に。素人探偵(アマチュア・オプ)の私は、事件を追ううちに11年前の海難事故に辿り着く――。基地の街・沖縄を舞台に麻薬取引、臓器移植を巡る事件が絡み合い、めまぐるしいスピードで展開する極上のミステリー。
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Posted by ブクログ
あら、軒上泊。なんてひさしぶりなのかしら。
書店で文庫本を見つけたとたん、すぐ隠れてしまいたいような、昔すっごく仲が良かったのに、何故か知らないうちにいつのまにか疎遠になってしまっていた、そのことが悔恨となってどこかに沈殿していたみたいで・・・・・、あ、この際、私の気持なんかどうでもいいんです、でも、やっぱり名作は、いいものはいいと、ちゃんとわかっている方はいらして、こうして文庫化されたのを大喜びしています。
でも、オール讀物新人賞を得た『九月の街』を寺山修司が脚本を書き、東陽一が撮った映画『サード』となって私たちを興奮させ、その後の『べっぴんの町』も『八月の濡れたボール』も映画化されるに到って、大ブレイクの予感がしたはずなのに、何故か不幸にも軒上泊はそれほど読まれなかったような感があります。
あっ、リアルタイムじゃなくてあとから遅れてきた読者ですけれど、どうも客観的にみてそういう気がします。
3作とも少年院とか法務教官とか、彼の実体験が色濃く出た物語で、それはそれで他にはみられない目新しい題材だと思いますが、ひょっとして説教臭さが少しでもみえたとしたなら、どうもそれが疵となって皆が引いて行ったのかもしれません。
金八やルーキーズなど、学校ものや不良落ちこぼれ再生物語としてなら需要もあったでしょうが、あっそうか、『八月の・・・』は少年院の野球チームが甲子園を目指すというものでしたね。
それにしても、周りの誰よりもそうとう気にいって次から次へと読んできたつもりですが、私の注意不足かもしれませんが、ここ10年ばかり新しい著作が出ていない気がします。
たとえば、今をときめく時代小説の超人気作家になった佐伯泰英が、たった10年前には売れないスペインや南米を舞台にした冒険小説を書いていて、売れないから(私は、そのスペインもの、けっこうファンだったのですが)どうしようもなくて思い切って時代小説に鞍替えしたように、軒上泊も新たな転身を思案中なのでしょうか。
いえ、いまでも充分かつての作風のままで通用すると確信していますので、またぜひ書いてほしいと思います。