あらすじ
何が「働くノン・エリート」を駆り立てたのか?
明治・大正期、旧制高校を出て帝国大学に入るようなエリートになれなかった多くの人々は、どうやって「立身出世」すべきか分からなかった。昭和期、サラリーマンになることで身を立てる人が増えたが、何を拠りどころにして働けばいいかが分からない。会社で「研修」に励んだ彼らは、平成以降の低成長期に入ると、派手な成功を望みづらいなかで、自己啓発やビジネス書の消費者となっていった 。近代日本の歴史の根底には、「働くノン・エリート」の「自己向上」への意欲が、常に「宗教っぽいもの」をまといながら、水脈となって流れていたのだ。明治から現代まで連綿と続く営為の系譜をたどり、“日本資本主義の精神”の展開史を描き出す!
序章 「自分磨き」の志向
第一章 語られた修養 伝統宗教と〈宗教っぽい〉もの
第二章 Self-Helpの波紋 立身出世と成功の夢
第三章 働く青年と処世術 新渡戸稲造と『実業之日本』
第四章 「経営の神様」と宗教 松下幸之助の実践
第五章 修養する企業集団 ダスキンの向上心
終章 修養の系譜と近代日本 集団の中で自分を磨く
*電子書籍版には収録していない資料写真が1点ございます。ご了承ください。
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Posted by ブクログ
仕事で兎に角悩んでいた時期に、自己啓発的な本に救いを求めて読み漁った時期を過ぎた時に出会いました。
メタに見ると自己啓発的なムーブって少し変だよなとか、これを企業から(ある意味では)押し付けられてるのって何なんだろうな、という疑問を持ちつつ読み進めたが、これらに明確に答えを出す本ではないことだけは留意が必要。
あくまで近代の自己啓発の流れに至るその前、修養の流れとその先に飛び石のように流れ至る自己啓発の動きまでを見通す本でした。
でもこの視座がまず必要なんだろうなと通読後思えたので良かったです。
Posted by ブクログ
かなり徹底的な調査がなされている本で、読み応えがあります。
新渡戸稲造がキリスト教徒の立場で、どのように幅広い層の人々の修養を助けていったのか、松下幸之助や、ダスキン創業者の鈴木清一のエピソードも知らないことばかりで興味深かったです。
Posted by ブクログ
150年といえば、今年は日本に鉄道が新橋〜横浜間に開通してから150年のメモリアルイヤーだ。
「自分磨き」が昔から好きな日本人。
明治から現代に至る自分磨きをテーマにして書いた本は珍しい。
明治の初めからキリスト教、仏教などの宗教が自己啓発に大きな役割を果たしていた。
今でも、自己啓発というと「宗教臭」がすると思う人がいるのは、今に至る過程で宗教の果たした役割が大きいからなのか。
掃除やミスタードーナツで有名なダスキンは、宗教的な要素を取り入れていると知って驚いた。
ダスキン社内の勉強会や会議必ず全員で「経営理念」「般若心経」を唱和する。
そして、給与を「お下がり」、ボーナス「供養」と呼んでいる。
最終章では、オンラインサロンを取り上げている。その理由は、人材育成に会社が主導するよりも、個人で主体的に行うようになる傾向にある。
2021年の時点で、30以上の企業がオンラインサロンに参入している。
市場規模は、2019年に47億円、20年に74億円、2025年には183億円になると見込まれている。
著者は「満たされない気持ちを抱えて、心の隙間埋めるように、人は自分を磨き高めるための方法を探し求め、それを提供してくれる存在にすがりつくのだろう」と指摘している。
そうなると、「笑うセールスマン」の喪黒福造が「あなたの心の隙間をお埋めします」と近づいてくると、ついすがりついて最後には痛い思いをすることになる。
「自分磨き」はこれからも終わることがなさそうだな。
中国で話題になっている自分磨きしても意味ないから何もしないという「寝そべり族」の発想が世界に拡散しない限り。