あらすじ
「人種」という根拠なき考えに基づいて,人を差別・排除する.人種主義(レイシズム)は,ナショナリズム,植民地主義,反ユダヤ主義等と結びつき,近代世界に計りしれぬ惨禍をもたらし,ヘイトスピーチや黒人差別など,現代にも深い影を落としている.大航海時代から今日まで,その思想と実態を世界史的視座から捉える入門書.
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Posted by ブクログ
マイノリティや歴史的背景を鑑みて適用されるアファーマティブ・アクションなどの制度に対して、逆差別だという主張がなされることや、被支配者側でありながら、支配者や宗主国側の思想や論理を内面化してしまう者がいるということがこの問題の複雑さを明示しているように思った。
近代社会がまだまだ歴史の浅いことにも気付かされる。今では考えられない思想だとしても、それはほんの2、3世紀前なのだ。私たちが今、正しいと考えていることもほんの少し先の時代では全く正しくないとされていることだって不思議ではない。
いろんな国でポピュリズムが台頭していることも、この問題とは切り離して考えられないのではないだろうか。
常に物事を批判的に見つめ、さまざまなな問題が絡み合う人種という概念がこの先どのような解釈や理解をされていくのか、自らも願うのみではなく行動しながら、注意深く観察していきたい。
Posted by ブクログ
筆者は、本書が唯一のあるべき人種主義の歴史ではないと述べていて、やはりどの国の視点からどのような解釈をするかによって歴史や差別というものの捉えられ方は変わるのだなと思った。私自身まさか奴隷制度の被害者側である国の中にも奴隷制度があるなんて思いもしなかったし、中学生の歴史の授業では簡単に学んでいたものがとても複雑なものなのだと理解できた。
Posted by ブクログ
昨日購入した岩波新書の『人種主義の歴史』(平野千菓子)という本を読み始めている。
冒頭あたりに「生物学的には人間の種は一つであり、複数の人種はないはずである」
という文言に出会います。
私が常日頃思っている考えにぴったりの合致するので大変頼もしく頁をめくっております。
私の教科書ともなっている更科功『絶滅の人類史』によりますと、
700万年前に様々な種類の人類がいた。ネアンデルタール人もいた。
しかし、ネアンデルタール人は4、5万年前に絶滅し、
最後に生き残ったのは学名ホモ・サピエンスとよばれる私たち人類だけなのである。
ホモ・サピエンスはアフリカを起点に各地に移動した。北欧、アメリカ大陸南端、
中東、アジア、オセアニアと地上をくまなく覆い尽くした。
それは細胞、遺伝子分析などによって生物学で完全に証明されている。
しかしながら肌色、頭髪、目の色、言語、風習など様々な違い種分け、区別、差別化され、
更に居住地区、政治、国籍、教育、宗教などによって洗脳され、優劣がほぼ制度化されている。
昔、黒人は普通の人間より劣っているという考えが欧米などで広く信じられていた。
しかし、あるニューヨーク市長が「アメリカは移民の国である」と断言されたように、
黒人で、弁護士、科学者などを大勢輩出し、更には大統領までなった人もいる。
日本人だけが偉いのではない、大部人だけが素晴らしいのでは無い。
世界に住む各地域の人びとの能力はそんなに差は無いのだと思う。
ただ、食事、住居、衣服など生活環境の違いによって、
食べる事にに汲々とし、教育が十分に行き届かない所が多いのは現実である。
人種主義、差別主義…、
こうした他の人を見下すことない社会はいつになったら実現するのだろうか?
※索引があればな~
Posted by ブクログ
大きなテーマ以上に、有名な哲学者や学者の多くも時代の制約からは逃れられないというのがひしひし伝わり震えた。どれだけ先進的なことを言っていても、人種観はめちゃくちゃ差別的だったりする(それはある意味不可避でもあったと言える)
自分も、今の社会的には許容される(=誰かが誰にも気付かれずに傷ついている)発言を繰り返している可能性だってある。震えながら生きるしかない。