あらすじ
難解とされる西田幾多郎の思想の本質は,「自覚」の哲学である.この見地から,初期から晩期までの独自の様々な鍵概念「純粋経験」「自覚」「絶対無の場所」「絶対矛盾的自己同一」に沿って,「悪戦苦闘のドキュメント」と評された西田の思索の内的運動と展開の軌跡を明確に解読する.西田哲学への最良の道案内.
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Posted by ブクログ
「絶対矛盾的自己同一」という言葉を唱えてみたいという おバカな動機で読んでみた。コロナ禍中に出会った公開講座で「哲学って宗教より面白いかも」と思ってから 一般向け入門書に触れて来たが、最高峰の山容を遠くに見せて頂いた気がする。
Posted by ブクログ
新書の限界を超えた西田哲学の濃密で緊張感溢れる解説書である。まるで内輪の研究者仲間用の確認レジュメのようでもある。項目に沿って西田用語が問答無用で次から次へと登場する。小坂国継の解説がテンポよく続き、初学の読者への配慮はまったくなく、わからなければ何回も読み直しなさいと言ってるようだ。
西田幾多郎思想の展開過程は「純粋経験」「自覚」「絶対無の場所」「絶対矛盾的自己同一」の四つである。
彼の考え方の特質は①真性の自己探究や解明が根本課題である②主観と客観が分離する前、純粋経験は実態的なものではなく純粋な作用を意味する。主観と客観、精神と物体、意識と対象という二項的対立を超越した無差別的な立場から一切を見て考えていく鞏固な思考様式である。
③個と普遍、個物と全体は相互に対立するものではなく相即相入、「一即多・多即一」、「創造的モナドロジー」④西洋の伝統的な形而上学=外在的な超越者の探究ではない。真実に物に即した哲学で「徹底的実証主義」「絶対的客観主義」と評する。自己のうちにあるものは対象化することはできず、形はなく目に見えるものではない。空・無極・無相・非相・・、心の形而上学」で内在的超越者の探究、それを無とか絶対無と呼ぶ
プロティノスの一者の「観照」
スピノザの神への「知的愛」 にあたるものが
西田哲学の「絶対無の自覚の思想」である。
人間精神の能力は知、情、意の順序、意志の上位に究極の能力として直観をおいた。
三種の世界、外界、内界、超越界を最初「有の場所」「意識の野」「絶対無の場所」と呼んでいたが、後に「判断的一般者」「自覚的一般者」「叡智的一般者」(「無の一般者)」)と呼び「一般者の自覚的体系」として論じる。
存在や作用においてある場所。
道徳的自己を「悩める魂」と呼び、その自己矛盾の極限において一転して自己を放棄するとき叡智的自己は宗教的意識となる。それは回心であり真正の自己の覚醒である。これを絶対無の自覚と呼んだ。
それが心の形而上学の完成、真正の自己探究の解決である。
Posted by ブクログ
西田幾多郎の哲学の根底には、つねに「自己が自己を見る」という「自覚」の考えがあり、それが「純粋経験」「絶対自由意志」「絶対無の場所」「絶対矛盾的自己同一」といった志向や論理として展開されているという理解の下、西田哲学の生成と発展の過程を本質的に「自覚」の深化の過程としてとらえ、解説。
これまでにも西田哲学の解説書はいくつか読んだことがある(原書は読破できていない…)ものの、あまりよく理解できたとはいえなかったが、本書を読んで、いくばくか西田哲学はどんなのものなのか理解が進んだように思う。特に、「はじめに」は西田哲学のエッセンスを示すものとして秀逸だと感じた。ただ、それでも本書の議論はかなり難しく感じた。
一方、西田哲学は、とても高尚な議論のようには思われるが、結局、実証不可能な概念を捏ねくり回しているだけの、あまりに観念的なもののようにも感じられ、これは理解する意味のある議論なのだろうかという思いも持った。
Posted by ブクログ
西田幾多郎の生涯にわたる思想の変遷を簡単にたどり、彼の思索の歩みを一貫しているものについて論じている本です。
『善の研究』において「純粋経験」の立場に立って哲学的な思想を構築した西田は、その後「自覚」「場所」「絶対矛盾的自己同一」と、その立場を変えてきました。しかし著者は、そうした西田の思想にはつねに「真正の自己の探究」という根本課題を追い求めてきたものであるといいます。そして、このような西田の思想は、禅における「己自究明」の精神に通じるものであり、東洋思想の伝統を受け継いだものだと考えられます。
さらに西田哲学には、自己の内への超越をめざす宗教的な性格が見られると著者は述べています。これは、自己の外に「超越」を求めるプラトンの二世界論とは異なる発想にもとづいた思想であり、プラトンの「善」が「形相の形相」であるのに対して、西田の「自己」は「質料の質料」というべき性格をもっており、こうした西田哲学の特徴が彼の「場所」の思想に見られると論じられます。
西田の思想の変遷を簡単にたどりつつも、その中心となる思想につねに照準をあてて解説をおこなっているところに、本書の特徴があるということができるように思います。