【感想・ネタバレ】なぜ孫悟空のあたまには輪っかがあるのか?のレビュー

あらすじ

花果山のてっぺんの石から生まれたサルの孫悟空.彼のあたま,そして彼の武器である如意金箍棒には,なぜ「輪っか」がはまっているのか? 唐代の,玄奘三蔵のインドへの旅から約九百年.中国の人びとの想像力が育て,明の時代に完成した小説『西遊記』.その深く魅力的な世界を,若い人たちに向けて分かりやすく解説します.

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Posted by ブクログ

 とってもおもしろい! 著者の中野美代子先生によれば、「『西遊記』のおもしろさは、あらすじにはありません!」、それは、「細部です」だそうです。
 そして中野先生が「わたしが細部のたのしみかたの、ガイドをいたしましょう」と。中野先生は岩波文庫『西遊記』全十巻を訳されたかたです。よろしくお願いします!
 わたしにとっての『西遊記』は、堺さん、西田さん、岸部さん、夏目さん、そしてゴダイゴさんたちの記憶です。西の方にお経を取りに行く・・・内容は忘れました!この本で再注入します!

 まず事実として、実在の中国唐代の僧侶である玄奘(げんじょう/三蔵法師)が仏教の経典を求めて、629年に唐の長安からインドへ旅立ちます。そして、約18年かけて多くの仏典を中国に持ち帰ったのです。その旅の記録が『大唐西域記』。
 それがなんだかんだで、おもしろくて奇想天外なお話の演芸(説話)となり、900年ほどの時を経て、明(みん)の時代に小説として完成したのが『西遊記』みたいです。
 苦労して仏教の経典を持ち帰るストーリーなので、表向き仏教的みたいです。しかし、中野先生によれば仏教をおちょくり倒している大人向けの小説のようです。

 わたしだと、三蔵法師のお供は?と聞かれれば、まず「サル」と答えてしまいます。でも、はじめはサルではなかったようです。中野先生は「サル」に至ったいきさつを、中国人の「サル観」?も交えて考察され、『西遊記』の成り立ちを説明してくださいます。
 小説になる前は演芸だったので、各お話は「章」ではなく、「お次の回のおたのしみ」の「回」だとか。そんなわけで『西遊記』は全100回です。

 全100回の物語は、大きく4つのパートに分かれるようです。驚くのは、それぞれの「回」に何が起きるのか、文字通り「計算」されていることです。
 そのベースになっているのが「五行」の考え方。五行とは、この世の基本的な物質は「木・火・土・金・水」の5つであるとするものです。それに陰陽説の陰数(偶数)や陽数(奇数)なんかも合わさって、数字にものすごくこだわっているようです。 『西遊記』が「数字」で組みあげてあるなんて、本当にびっくりです。

 『西遊記』の表向きの主人公は三蔵法師とお供のみなさんです。でも、中野先生のディテール話を読んでいると、三蔵法師たちの旅の裏で頻繁に登場する方々が気になりますし、おもしろいんです。
 そもそもなんで三蔵法師は、西天(お釈迦さまや仏神たちが住まう西の神聖な天上の世界)へいくことになったのでしょうか?
 すべてはお釈迦さまの発案なのです。そうすることで、東土(中国のこと)に「正しいお経を伝えよ」と。しかも、「あまたの「苦難」を乗り越えてこその取経である」とお考えになられました。
 そのお考えに観音さまはじめ、仏神のみなさんがんばられたようです。お疲れさまです。どんな世界でもトップのお言葉は重いです。まるで、一代で築き上げられた大企業みたい。(笑)
 ご指示があった「苦難」に関して、仏神のみなさん神経を使っています。今ならVBAとか使ってエクセルで管理するみたいな感じです。きっと、ガントチャートとかも用意してますね。三蔵法師たちのみならず、仏神のみなさんにとっても一大プロジェクトですよね。

 わたしは、中野先生から学んだ『西遊記』の骨格と読むための極意「細部をたのしめ!」を肝に銘じ、これからに望みたいです。\(^o^)/ 

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2025年09月27日

Posted by ブクログ

 つたないイラスト、誰だろうと思ったら坂田靖子。お見逸れしました。
 難解な「『西遊記』XYZ」の後なので、復習を兼ねてサクサク読める。
 通天河を渡る亀の背に乗ったパーティーが魔方陣を構成しているとは面白い。『西遊記』を編んだ匿名グループはカバリストのような集団か。

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2022年01月25日

Posted by ブクログ

「西遊記」のあらすじをおさらいするのに資料として読んだが、非常に奥深い話で大人向けの物語だったことに気づいた。著者の他の作品も読んでみたい。

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2022年11月27日

Posted by ブクログ

すんごい難しい〜〜〜。
色々数字のこだわりがあったり、悟空の金属の性質とか、河童と山童・龍王と馬の関係とか、四神・十二支と方角との関わりとか、色んな要素が複雑に絡み合っている難解なお話だということは分かった。
まだ消化し切れていないことが多すぎるので、西遊記を読みつつまた見返せるといいなぁ。
あとがきに書いてあった、ロボットとして孫悟空を捉えるという見方もとても面白い。筆者の著作を追っていけばいつか分かるだろうか。
色んな翻訳で、自分自身も分析しつつ読みたい。

同筆者の『西遊記ートリック・ワールド探訪』『西遊記XYZーこのへんな小説の迷路をあるく』は三蔵法師のからだ・性にかなり踏み込んでいるということで、非常に興味をそそられている。大人向けの新書は難しそうだか、いつは挑戦してみたい。

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2022年06月27日

Posted by ブクログ

西遊記の数字にそんなに意味があるとはなー。
ぱっと見「ん?こじつけでは?」と感じてしまうけど、たぶん正しいんだろうね。
軽い文体だけど、内容は多岐にわたり、実はかなり中身がつまった良書。

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2016年04月29日

Posted by ブクログ

西遊記を訳した人が気づいたトリビア~孫悟空は金属質であるにも関わらず金属が苦手,武器として如意棒を手に入れた時も金箍が嵌っているために己のものとすることができた。自由度,金属度という観点から西遊記を解剖~九九の面白さとカプレカルのループ。猿はテナガザルで仙的なものと見なされたが,西遊記が大衆文化として確立する時に,より身近であるアカゲサルとなり,無双の力を与えた。仏教を揶揄している部分があり,猪八戒の名が猪悟能であって,沙悟浄との関連が出てくる。沙悟浄は水怪であるとは書かれているが,河童とは書かれていない。その河童にしても水の中では馬に悪戯もするが,陸に上がると馬を守護する

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2014年02月10日

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