【感想・ネタバレ】デッドライン(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

2001年の春、僕は大学院に進んだ。専門はフランス現代思想。友人の映画制作を手伝い、親友と深夜にドライブし、行きずりの相手とセックスをする日々を送りながら、修士論文の執筆が始まる。テーマはドゥルーズ――世界は差異からできていると唱えた哲学者だ。だが、途中までしか書けないまま修論の締め切り(デッドライン)が迫ってきて……。気鋭の哲学者が描く青春小説。芥川賞候補、野間文芸新人賞受賞作。(解説・町屋良平)

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Posted by ブクログ

出版されてわりとすぐ読んだけど、なんだかよくわからないしすごくひんやりしたイメージが残った。現代思想入門、勉強の哲学、センスの哲学を読み経て再読したら、実戦編のような感じでいろんなものがみえてきてすごくおもしろかった。登場人物でやだなーという人がいない。

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2024年09月19日

Posted by ブクログ

哲学を学んでいる主人公が、自身のマイノリティである性別について、荘子の話を盛り込みながらも 自分なりに分析しており面白かった。

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2024年02月10日

Posted by ブクログ

良い小説だなと思った。場面転換が頻繁にあるのだけれど、話をぶったぎるなんてものは全く感じなくて、まるで映像(映画のような)の視覚効果のような気がした。
その色々な場面のなかに「僕」と「先生」の会話があるのだけれどそれが重要な気がする。でもちょっと難しくもあり完全に捉えることができなかった。
そして何より誰にでももある(あった)であろう、あの年齢の時のあの空気感がすごく出てる。友達と夜中ドライブにいったり、ご飯を食べたり、引越作業だったり、家庭のあれこれ...。青春小説かな?不思議だ。
後半に知子と電話する場面で知子の視点が出てくるのだけれども、それがどういう意味だったんだろうって今考えている。そういう余韻というか考えさせられるものがあるというのも良い。

解説だと思って読み始めたらなんだか難しくて、よく見たら解説って書いてなかった(笑)

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2024年10月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

哲学がエンタメとなって、元々哲学に関心のなかった層にも手の届くところまで降りてきた、というイメージを持った。國分功一郎さんの本が話題になったりと、最近フランスの現代思想の流行を感じるが、少しでも齧ったことのある人は楽しめる作品になっていると思う。

主人公は同性愛者の院生で、ドゥルーズの生成変化について修論で書くことになる。ドゥルーズ+ガタリの『千のプラトー』には、人間、男性、支配者→動物、女性、支配からの逃走という生成変化について語られている(らしい。未読で、本書に出てきた内容をうろ覚えのまま書いているのでご参考までに)
「ドゥルーズは、生成変化を言祝いだわけです」という先生の言葉が印象的。

同性愛の当事者の若者は、研究を通して、自分が男性でありながらすでに女性に生成変化を遂げていて、同時に男性性を希求している、という立場であることを自覚をする。ドゥルーズは女性→男性の生成変化については言及していない。他者(友人、親、研究対象のドゥルーズとさえも)とのズレ、それによる違和感、自分の性、自分が希求することついて考える様子が、淡々とした筆致で描かれていく。静かな孤独感の中で。それが嫌に生々しい。違うっていうのは、こうも孤独なんだなぁ。

結局主人公は、ドゥルーズの研究を進めても自分の生き方の答えは見つけることができなかった。「少女のしっぽ」を探すというヒントは見つけたが、捕まえることはできなかった。物語は終わっても主人公の研究続いていくみたい。

めちゃくちゃ性描写が多く生々しいので、好みは分かれると思う。
私は初めかなり戸惑ったが、そうしないと語れない何かがあったのかな、と思い、「テクストの現実に従う」ことにした。好き嫌いも二項対立である。好みではないが嫌いの枠に入れない。そのあいだに身を漂わせて、書かれていることをそのまま読む。

正直好みではないが、哲学書を何冊か読んでから次はメタの視点で再読したい。構造を俯瞰することでわかるメッセージがあるように感じている。

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2023年05月02日

Posted by ブクログ

正直な感想は序盤は退屈かつ、時系列が複雑な場面転換についていけず読みづらかった。
しかし、最後まで読むと、序盤〜中盤までのつかみどころのない話が意味を持つ。
繰り返して読みたい作品のひとつになった。
はっきりとした起承転結があるわけではないので、他の感想でもあるように退屈と感じるかもしれない。王道の小説(事件があってそれを解決するような)が好きな人には向かない作品だなとは思う。

裕福な家庭の〇〇(主人公)が大学院で修論を書きながら、大学院の友人たちとの交流やハッテン場で相手を探し行為をいたすのはとても詳細だが淡々としていて、失礼ながら「THE自堕落な生活」。
その中で、フランス思想や荘子など哲学が入り乱れるので、アンバランスさを感じる。
ネタバレになるので細かくは書かないが、後半、窮地に立ち始めると主人公がちゃんと血の通った人物に感じ、急に人間味を帯びてくる。
だからといって、困難を乗り越えるようなサクセスストーリーが展開されることはない。
我々の日常事件はあっても、目に見えた起承転結もあるはずもなく、その中でどう考え、どう生きていくのか、そんなリアルさをもった作品だとも感じた。

そこを経て、再読するとまた深みが生まれそうな予感がするので、間を開けてまた読みたい。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

おもしろかった。何が面白かったってとてつもない衝撃があったわけでも、特段感動があったわけでもないが、この小説でしか感じられない不思議な、ある種「放り投げだされた」感覚になる。それがまた面白いのだ。だって、小説が読者を放り出すのだから。しかし、これは、少しの哲学の知識か、著者千葉雅也の他の書籍などを読んでいると面白さは倍になる気がした。

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2023年02月25日

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ネタバレ

長らく積読の状態で読めていなかった、千葉雅也さんの小説デビュー作『デッドライン』を読んだ。ページをめくり始めてから、最後まで止まらなくなる。こうした小説に出会える機会は年々減っているから、初めて読書の悦びに目覚めた中学生の頃を思い出して嬉しくなる。ありていに言ってしまえば、全ての私小説は当人にしか書けない。それは当たり前にしても、『ライティングの哲学』などでも披瀝されていたように、“書く”ことを“書く”ことのメタ的な次元で実践してきた千葉さんだからこそのスタイルが、物語の形で表現されていたのは瞠目した。散文的でありながら、真正面の哲学が文学と絡み合うように、溶け合っている。思想と文学の両方を愛する読者からすれば、垂涎の物語ではないだろうか。

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2022年11月14日

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ネタバレ

千葉さん、小説書いたんだね。

対象として好き(=欲求?)なことと、
なりたいと思う(=憧れ?)こと、
似てるようで違うことだよなあと。

あと、誰からも連絡のない一日というものを
もう経験することがないのではと愕然としたり。

ドゥルーズを修士論文のテーマとする
哲学科の大学院生が主人公。

ドゥルーズの生命哲学のエッセンスが
こめられているものと思う。

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2022年09月08日

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どうも同性愛もの、特に男性ものが、あまり得意ではない。なんだかなあ、と感じてしまう。
学生生活全般の描写、特に、日常的な担当教授との会話部分と、後半の修士論文に苦しむあたりは、とてもよかった。

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2025年08月08日

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千葉氏著の『センスの哲学』において、「純文学はリズムを楽しむ」とされていたが、この『デッドライン』は正にリズム重視の文学といった趣きであった。難解ではあるけど、サクサクとリズム良く読めた不思議な文学体験。

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

朧気な記憶だが、「文学賞メッタ斬り!」で豊崎由美が「インテリ版西村賢太」と評したので興味を持った上、年下の友人が面白いと言っていたので。
西村賢太式露悪癖もないではないが、むしろスケッチや、時代習俗を文章を用いて保存する試みだと感じた。
解説の町屋良平の文章も面白いが、ネット上で保坂和志との対談を読んで、これが断然面白かった。
(自分は保坂和志の読者ではないが、きっと好きなんだろうなと思っている。)
ハッテン場の描写から始まるが、個人的には第119回(2014年度・下)の文学界新人賞で佳作となった森井良「ミックスルーム」がずっと記憶に残っているので、連想したりした。

が、本作のゲイセックスはむしろ自身の可塑性(と言っていいのかしらん? 変容可能性?)の一部であるのかなと思った。
猫になったり、知子になったり、動物になったり、少女になったり、締め切りになったり。
「僕」の生成変化は割と忙しい。
大学生活はのんびりしているのに対して、内面の動き。
知に触れることで自身が組みあがっていく、ブッキッシュな青春ではあるけれど、頭デッカチではなく、ぬぬーっと身体性(性欲)が頭を蠢動している。
同級生との交流は正直柴崎友香っぽいと思ったが(彼女もまた佐々木敦所謂ところの保坂スクール出身)、指導教授徳永の存在感は、なかなか出色で、メンター小説という面もあると思った。
いずれにしてもスケッチの集積が小説としてのまとまりを持ち得るという観点は、いいものだ。

なんでも「オーバーヒート」、「エレクトリック」を足して三部作とするらしい。
3作目は高校時代のインターネットとの出会いが題材らしいが、並べるとどうしてもセクシュアルな単語を意識して取り上げているように、つい感じてしまい、勝手に期待してしまう。

ところで森井良、今回検索して知ったが、なんと獨協大学フランス語学科専任講師で、翻訳多数。
しかも積読にしている「特別な友情──フランスBL小説セレクション」の編訳者のひとりらしい。
「ユリイカ 詩と批評 総特集 大江健三郎 1935-2023」に、「大江の〈A〉、オントのにおい」という文章を寄せていたりして、うーん興味湧く!

と書いたあとで、自分のevernoteを検索してみたら、2年前に遠野遥「改良」の感想にて、
>なんとなーく連想したのが、第119回文學界新人賞で佳作だった森井良「ミックスルーム」(初めて知ったがフランス文学者で、「特別な友情―フランスBL小説セレクション―」を編纂しているのだとか!)、いや本作はゲイではなく異性装。
と書いていた。
……どんだけ脆弱な記憶力で、どんだけ同じ連想圏をうろうろしているんだ。

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2025年03月11日

Posted by ブクログ

作家がゲイなだけあってリアル感がすごい。BLに落とし込んでないところもすごく印象が良くて好きだけどちょっと硬いです笑

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2023年10月01日

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三軒茶屋から下高井戸へと至る世田谷線の中間地点、上町だった。 久我山に来てから僕はそのドンキで 昔の話が温泉みたいに噴き上がってくる 大らかなイントネーションに乗せた細やかな革命がいつだって起こり得たし 締め切り(デッドライン)の冬は確実にやってくる ことほぐ言祝ぐ

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2022年11月25日

Posted by ブクログ

著者に興味を持ち、哲学者が書いている小説ってどんなものだろうと読んでみた。

正直わたしには少々難しかった。
主人公が呼ばれるときに○○とされていることや、KはKと呼ばれていること、ちょっとした点で疑問が残る。

ただシーンや時系列がコロコロと変わるのが新鮮だった。

著者の他の本を読んで勉強したい

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2022年10月22日

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