【感想・ネタバレ】ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救うのレビュー

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Posted by ブクログ

多くの方の評価通り、良書でした!本書は「定年後」のことだけと思わず、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。働き方や主に中高年が定年へむけてどのようにキャリアへの考え方を転換していったらいいかなど、「働くこと」について、たくさん考察できると思う。

私の定年退職はまだ先だけれど、早期退職も視野に入ってきて、経済的に困っていない人たちが早期退職を狙っているという噂を耳にしたり、今の働き方に疑問を持ったりしているうちに、本書が目に留まり、読み始めた次第です。

本書は大きく分けて3つにわけて構成されている。
第一部ではデータに基づいて、定年後の仕事の実態として、15の事実があげられている。
ここでは、たくさんのデータに基づいた現状が語られ、そこから、筆者の考えが押しつけがましくなく展開されている。ここは表やグラフなどがたくさん示されているからこそ、かなり説得力があった。老後に漠然とした不安を抱えている人にとって、その「老後の不安」は結局「お金の不安」と言い換えられるのではないかと考えると、案外、老後の支出は少ないものだという事実などには、安堵するのではないだろうか。その他にも、「持ち家か賃貸か」、「年金は繰り下げ受給すべきかどうか」など、正解がなく、その人その人にあった選択肢を選んでいく必要がある事柄について、自分はどうすべきかどう考えるべきかのきっかけ・ヒントになるとても素晴らしい手引きだと思った。

定年後の働き方にヒントを与える本書の趣旨からは少しずれてしまうが、どうしても今の自分の働き方や、仕事の必要性などに疑問を抱いている私としては、「事実10」がとても響いた。
著者曰く「日本社会は人の生活に不可欠な仕事が正しく評価されていないという現状に、もっと正面から向き合うべきではないか。そして、デスクワーカーの待遇改善を行うよりも、むしろ現場仕事の待遇改善によってこのミスマッチを改善すべきではないのか。」。
なんとなくくすぶっていた思いを端的に言語化してくださっていた。
また、ホワイトカラーでキャリアを追い求めることが社会的に望ましいとなってしまったが、デスクワークの仕事に対する需要はそこまで大きくない。なぜなら、IT化でデスクワークの仕事は効率化され、デスクワーカーがすべき仕事は減っているからだ。それなのに、従業員の雇用を維持するために無理をして仕事を作り出している側面もあるのではないか、とまで考察されている。「無理をして仕事を作り出している」わけではないとしても、私も常日頃から「事務のための事務」をしているようだと感じているし、あまりにも無駄な作業に、なぜITを利用しないのか、と憤慨する場面が多々ある。
このようなホワイトカラーの事務職・管理職に対して、エッセンシャルワーカーとも呼ばれる「現場仕事」の必要性、その待遇改善の必要性を唱えておられ、大いに賛同した。
そうした著者の主張は、「定年後」とどうつながっていくかというと、つまるところ、生活に必要で、生活を豊かにしてくれるこのような現場仕事をどこかで自分より下に見て、生涯そのような職に就くことはないと決めつけていないか。そのようなホワイトカラーのキャリア志向は生涯にわたって必要だろうか。今後いくら情報技術が発達してもなくならない現場仕事を自分と無縁とは思わず、生涯のライフサイクルのどこかで無理なくそのような職に就き、社会に貢献することを考えてもいいのではないか。
だから「事実10」は「デスクワークから現場仕事へ」となっているのだ。
もしも、デスクワーカーの仕事が本当に必要なものだけになって人員整理が行われたり、デスクワーカーより現場仕事の待遇改善が優先的に行われたりしたら、私にとっては自分の首を絞めることになるのだけれど、そうなったとしてもこれは本当に正しい主張だと思った。そして、この著者の主張は第3部への提言にもつながっていく。

第二部は定年後の就職者の事例が7人分。具体的にどんな仕事をしているかが参考になるというよりは、仕事や暮らしに対してどのような考え方、向き合い方をして、その仕事を選択するに至ったかが大変参考になると思う。著者も何度か触れられている通り、50歳前後で、仕事への向き合い方に転機が訪れる人が多いようで、そこも含めて7名の定年後の働き方が示されていた。私の場合は少し早いけれど、「出世を目指したいのか」「適当に楽な地位にいたいのか」「育休で(出世が)遅れた分どうするのか」などなど悶々と考えていることが「仕事への姿勢の転機」だと考えると、これが定年後または早期退職後の働き方への考えにうまくつながっていってくれたらいいなと思えた。ここでのまとめとしては、「健康的な生活リズムに資する仕事」「無理のない仕事」「利害関係のない人たちと緩やかにつながる仕事」が定年後の豊かな仕事の共通点であるということだった。

第三部は第一部、第二部を踏まえて、社会が定年後の仕事に対してどのように向き合っていけばよいかについていくつかの提案があげられている。
これまで長い間デフレだった日本においては、質の高いサービスや高品質の物を低価格で求めるという姿勢が多くの消費者にしみついているように私は感じていて、著者も同様に考えているようで「日本の消費者がこうした利益を放棄し、小さな仕事で働き続ける人に適正な対価を支払う覚悟を持てるか。働き手が不足し、その希少価値が高まっている現代において、こうした痛みを日本に住む全ての人が受け入れ、消費者優位の市場環境を転換させていくことができるかが、今問われている」と書かれている。また、「日本社会は小さな仕事で働き続ける人たちにたいして、あまりにも冷たい社会なのではないかと私は感じるのである。」、「これからの時代、日本社会にとって本当に必要な仕事が何かが見えてくるのではないか。私たちは身近な仕事の重要性に立ち返る必要があるのではないかと考えるのである。」と主張している。これは私が強く賛同した第一部の「事実10」につながる。

これからは「定年後は年金でゆったりと暮らす」といった社会ではなくなることは明らかである。定年後の人々は、経済的な理由であっても、身心の健康のためといった理由でも、その人に応じた働き方をしていく必要がある。そして、少子化が急速に進んでいく日本社会としては、そういった方たちの労働力も大変貴重になってくる。現場仕事、生活に密着した仕事、小さな仕事にもきちんとした対価と感謝を示せる社会になっていかなければならない。本書の主張はそういうことだろうと思う。

とても考えさせられる良書でした。定年を見据えつつも、今の働き方をも考えさせられました。主に中高年以上におススメかなと思いました。(私も若い頃に読んでいたら響かなかったかもしれない。)

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2024年05月23日

Posted by ブクログ

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坂本 貴志
1985年生まれ。リクルートワークス研究所研究員・アナリスト。一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。著書に『統計で考える働き方の未来――高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書)がある。

ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う (講談社現代新書)
by 坂本貴志
定年後、多くの人が年齢を重ねるにつれて徐々に稼得水準を下げていることにも着目したい。つまり、定年後の所得状況をみると、年収水準は定年前後に不連続かつ一時的に減少するというよりも、むしろ定年前後以降に緩やかにかつ断続的に減少していくというのが実態に近い。

定年後のキャリアに向けて、仕事で挑戦を続ける姿勢を否定しているのではない。むしろ、多くの人が高齢になってもスキルアップを続けて社会に貢献することは、社会的に好ましい。実際に 70 歳時点で700万円以上の年収を稼ぐ人は就業者のなかで5・2%と一定数存在している。世の中にあふれている成功体験をみるまでもなく、年齢にかかわらず挑戦を続け、大きな成功を手にする人が存在することは疑いのない事実である。

定年後は仕事をしたとしても、現役時代のような高い収入を稼ぎだすのは難しい。一方で、家計の支出額は、その人のライフサイクルの段階に応じて変わる。現実問題として、定年後には一体どのくらいの出費があるのか。社会人として自立してから死亡するまでの家計支出の全体像を追う。

教育費から解放され、生活費がぐっと下がる

教育関係費は、 50 代前半で月5・1万円だったものが、 50 代後半で月3・3万円、 60 代前半で月0・8万円まで減少し、それ以降はほぼゼロになる。これは定年前後以降の家計支出額減少分の大きな部分を占める。長年家計の悩みの種であった教育に関する費用から解放され、生活費がぐっと下がるのである。

実際に、持ち家比率は年齢が上がるにつれて上昇する(図表1‐4)。 34 歳以下の年齢階層で 51・1%であったものが、 40 代後半で 80%、 60 代前半で 90%を超える。そして、最終的には大半の家庭で家を保有するという選択をしていることがわかる。データからは、持ち家比率が住宅購入適齢期といわれる 30 代や 40 代を過ぎても年齢とともに緩やかに上昇する様子が見受けられる。 40 代後半で 80・8%だった持ち家比率が 60 代後半で 92・3%まで上昇するように、住宅購入の判断が遅すぎるということはない。子育てがひと段落したのちに、身の丈に合った小さな住宅を購入するという選択も十分に合理的なのである。

住宅ローンの平均返済金額は、 30 代後半から 40 代前半の5万円程度をピークに下がっていく。住宅ローンの支払金額は定年後の減少が著しく、 60 代前半は月1・6万円、 60 代後半が同1・1万円、 70 代以降は住宅ローンを返済している人はほとんどいない。現在のシニア世代は住宅バブルの真っ只中に住宅を購入した人も多く含まれる。それでもなんとか住宅ローンは払い終えている人がほとんどなのである。なお、この数値は住宅ローンがある人もない人も含めた平均金額である。また、住宅に関係する費用は住んでいる地域の特性に大きく左右されるが、当然、数値には都市に住む人も地方に住む人も含まれている。

また、早期退職実施企業数の増加はコロナ禍の影響も大きいものの、黒字であっても早期退職制度の導入に乗り出す企業が増えていることも昨今の特徴としてあげられる。2021年に早期退職勧奨の実施が報道された企業をみると、ホンダ、パナソニック、フジテレビ、JT、博報堂などがあるが、これらの企業は必ずしも経営危機の状態にあるわけではない。それでもなおこれらの企業が早期退職勧奨の実施を決めた要因として、社内の人口構成の偏りを解消するためと説明されているケースが散見される。また、デジタル化の進展によって中高年社員のスキルが陳腐化しているからといった、ビジネス環境の激変を理由としている企業も多い。

純貯蓄の中央値は1500万円

60 代の純貯蓄は、平均2000万円、中央値1500万円

当然、高齢期の生活は人によって大きなばらつきがある。比較的早期に亡くなる人もいれば、高齢期に大きな病気にかかり要介護状態となってしまうことで、施設への長期にわたる入所が必須となる場合もある。こうした様々なリスクすべてに完全に対応することは現実的には不可能である。しかし、高齢期に臨時的に必要となる支出も踏まえ、 70 歳を超える程度まで無理なく働いて残りの 20 年程度を働かずに過ごすと想定したときには、平均的な年金給付額に概ね1000万円程度の貯蓄があれば、統計上は現在の高齢世帯が送る平均的な暮らしが実現できると考えられる。

過去、日本経済が右肩上がりで成長していた時代においては、誰しも若い頃より中高年のときのほうが高い給与を得ることができたし、生活水準も日々向上していた。もちろん、自営業者の長期的な減少なども就業率低下の一因であったとみられるが、より本質的には、現役時代の賃金水準が向上して生活が豊かになれば、高齢期に無理をしてでも働く必要はなくなる。これが戦後から日本経済がバブル経済に沸いた 20 世紀末頃までの大きな流れであったと考えられる。この間も出生率の低下による人口動態の高齢化や平均寿命の延伸は着実に進行していたのだが、それを上回る速度で経済が成長していたから、高齢期の就業率が低下していたのである。

いずれにせよ、少子高齢化のなかで、定年後も働き続ける人が今後も時間をかけながら徐々に増え続けていくのは確実である。そして、平均的な労働者が直面する将来における選択肢は、もはや定年後に働くかどうかという範疇にはなくなる。そうではなく、定年後に働くことは所与として、そうした状況下でどのように働くかを考える。こうした姿が多くの日本人が直面する現実になるだろう。

ここでは、フリーランスとして働く人の職種を3つのカテゴリーに分けている。まず第一は、国家資格が必要になる職種などが含まれる高度な専門性が必要とされる職種である。これは医師や弁護士、公認会計士、建築設計など、イメージとしては 10 年かあるいはそれを超える程度の勉学や実務経験を必要とする職種である。  このように業務独占資格でかつ取得難易度が高い資格を持つ人は、歳を取っても同じ仕事で働き続けやすい。これは専門性が高いからというのも理由の一つではあるが、その名の通りこれらの資格によって仕事が独占されているということが大きい。そうした規制が新規参入者にとっての参入障壁となり、厳しい競争を免れることができる。こうした資格は、法令改正などによる知識のアップデートをその都度しなければならないが、必要とされる知識が根本的に変わることはないという事情も大きいだろう。

さて、ここからは事務職や管理職、専門・技術職以外の職種もみていきたい。その他の職種をみると、有効求人数が多く有効求人倍率も高い仕事、つまり世の中が本当に必要としているのに成り手がいない仕事は、介護や販売、保安、自動車運転、運搬・清掃などの現場仕事であることがわかる。  定年をすぎると事務職や管理職、専門・技術職の求人が急減し、これらの職種に就いていた人の行き場がなくなる。そして、その陰で数々の現場仕事がその仕事で活躍する人を求めているのである。

その一方で、対課題能力のDIは、 65 歳以降、概ねマイナス圏内で推移する。処理力、論理的思考力についても概ね 60 歳を境に、低下し始める。論理的思考力よりも処理力のほうがやや低下幅が大きく、 65 歳以降、処理力に関してはDIがマイナス 20%を下回る。  専門知識、専門技術については、 60 代後半以降はDIが0%近傍で推移し、マイナスに振れるのは 70 代後半となる。多くの人は自身の専門知識・技術は歳を取っても保たれていると考えていることがわかる。

 最後に分析したのが体力、気力である。この2項目については、定年を前にして既に下がり始め、上昇と低下の境目となる0%を下回るのが 40 ~ 49 歳。平均的には 40 代以降、人は体力・気力の低下を認識し始めるのである。

現役世代の人は自身の持つ能力に対して、仕事の負荷が重すぎると感じる傾向がある。仕事において数々のスキルを身につけ、資格を取得し、リーダーシップを磨くなど、絶え間ない成長を求められることに対して、高いプレッシャーを感じている人も少なからずいるのである。

一方で、定年後には、仕事における過度な負荷から解放されることがわかる。 50 代以降、仕事の負荷が低下していくことによって、能力と仕事負荷のバランスが適正化し、多くの人にとって仕事は心地よい水準に調整されていく。実際に、仕事の満足度と、能力と仕事負荷のバランスとの関係性をみると、その相関関係は非常に強い。バランスが適切だと感じている人ほど、仕事に満足して働けている人が多いのである。

しかし、働くことの意味はそれだけではない。働くことを通じ、人は有形無形問わず、様々なものを得ているのもまた事実である。仕事に対する価値観を体系的にまとめたのが、心理学者のドナルド・E・スーパーである。彼は、職業価値(work value) を経済的な安定を得ることだけではなく、自分の能力が活用できること、人の役に立てることなど、 20 の尺度にまとめている。

因子分析の結果によると、現代の日本人が働く上で感じる価値観は大きく6つに分類できる(図表1‐33)。すなわち、「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入や栄誉」である。多くの人にとって、これらの要素が働く上でのモチベーションになっている。

これをみると、 20 代は仕事に多くの価値を見出す年代だということがわかる。 20 代の因子得点が最も高いのは「高い収入や栄誉」となっている。  若い頃にこうした目標を持つことは、意欲高く仕事をするうえで大切なことであり、それが職場によい競争を生み出し、結果として組織のパフォーマンスも高まっていく。若手社員が「高い収入や栄誉」に価値を感じて互いに 切磋琢磨 することには大きな意味があると言える。さらに、「仕事からの体験」や「能力の発揮」も得点が高い。新しい仕事に楽しさを見出し、仕事能力の向上を実感することができる年代が 20 代である。  しかし、歳を経るにつれ、仕事を通じて感じる価値は減じていく。 30 代になると多くの因子が急激に下がり、仕事に対して緩やかに価値を感じなくなっていくのである。

人数自体は減少していくが、会社で地位を上げ収入を高めることに希望を見出す人は、 30 代や 40 代の時点でもなお一定数存在している。ただし、それ以外の要素はだんだんと重要だと感じなくなってくる。「生活との調和」は引き続き重要な価値となっているが、これは家庭を持って子供ができ、仕事を通じて家族の生活を豊かにすることを求める人が増えるということだろう。

多くの人が仕事に対する希望に満ち溢れていた 20 代から、人は徐々に仕事に対して積極的に意義を見出さなくなっていく。そして、落ち込みの谷が最も深いのが 50 代前半である。この年齢になるとこれまで価値の源泉であった「高い収入や栄誉」の因子得点もマイナスとなり、自分がなぜいまの仕事をしているのか、その価値を見失ってしまう。

人の役に立つという考え方は、まさに仕事の本質となる考え方である。たとえば、仕事を通じて能力を高めることは好ましいことである。しかし、仮に誰もが 羨むようなすばらしいキャリアを歩んでいる人がいたとしても、その仕事が人の役に立たないものであれば、その仕事には趣味の一環としての意義があったとしても、仕事としての意味はないと思う。逆に、たとえ人に見向きもされないような仕事であっても、それが確かに誰かの役に立っているのであれば、私はその仕事にスポットライトを当てたい。

仕事を通じて「体を動かすこと」も高年齢者にとって重要な価値観である。体を使う仕事に対する偏見を持つホワイトカラーは少なくないが、年齢を重ねるにつれて仕事を通じて「体を動かすこと」に価値があることに気づく。閉じた空間から出て、適度に体を使う仕事に就くことは日々の生活を規則正しく保つ運動にもなってくれる。

 そして「能力の発揮」を目指す価値観である。高齢になっても、自ら学び直すことなどによって、自身の専門性を高め続けるキャリアを選択できることはすばらしい。学ぶことを苦にしない人であれば、平均的には能力が低下する時期にあっても、それを維持し、向上させることができる。実際に、対人能力、対自己能力は高齢になっても伸び続けると感じている人も多い。こうした能力をいかに高めるかは、仕事をする上で必要なだけではなく、定年後の幸せな生活を営むための重要な要素になる。低下する体力や気力や思考力などと向き合いながらも、持てる能力を発揮し、また向上させる働き方も可能なのである。

 谷雄二郎さんは、秋田県出身の 68 歳の男性。もともと学校での勉強は好きでなかったが、幼少の頃からモノ作りが好きであったことから高等工業専門学校の機械工学科に進む。その後、東京に出ていきたいという思いもあり、工場勤務が想定されている製造業の会社ではなく、かつ機械関係の知識も活かせるメーカー系列の自動車販売会社に1970年代に就職することになる。

 ハローワークで探したパートの仕事を挟み、いまでは包丁研ぎの仕事に専念している。週3日、自宅前に看板をかけ、ホームページも作った。 「包丁研ぎの仕事は誰にも雇われず、自分一人、やりたいようにできる、という点に魅力を感じていました。独立するまでは、依頼があればやるという形で、腕を磨きつつ、独立に備えていました」 「私はずっと仕事を理由に、地域でのサークルとか何も入ってないんですね。今ではシルバー(人材センター) に入って助かってますけど、当時は自分としてそれでやっていけるかどうかってところが自信がなかったんです。だから、毎日じゃなくても何か仕事には関わっていきたいなという部分があったんです。友達にはテニスとかダンスやったりマラソンやったりとかそういうのが好きな人はいるんですが、私はあまり得意なほうじゃないですし。なので、やっぱり一人でのんびりやっていける仕事がいいなと思って、包丁研ぎの仕事はそういう意味でも自分にはあってるのかなっちゅう部分がありますね」  仕事がない日は、どのように過ごしているのだろうか。 「パートをやってたときは、パートに行ってないときに包丁研ぎをやってという感じで過ごしてました。今はそれなりにお客さんもついてきたので、パートの仕事は辞めてます。仕事がない日は持病があるもんですから通院にあてたり、あとはのんびり街中を歩くとか、遠出して買い物したりとか、そういうような形で時間を使ってますね」

定年後に身近にある小さな仕事に価値を感じるようになる背景には、加齢による自身の変化や、定年によってもたらされる仕事の環境変化なども影響としてあるが、何よりも経済的な環境変化が大きい。多くの人は 60 歳にもなれば、日々必要とされる生活費の大きな変化を経験する。これまで必要であった子供のための多額の教育費負担から解放され、住宅費に関しては自宅の維持費用があれば十分というケースも多くなる。  そして、 60 歳半ばになると公的年金給付を得られる。定年後にこのような経済的な裏づけがあるからこそ、大きな仕事でなくても十分にやっていけるのである。

確かに今後の日本の社会情勢を鑑みれば、年金の受け取り開始時期や受け取り額などの受給条件はますます厳しくなっていくことが予想される。しかし、現在のシニア世代は、男性が働き女性は家庭を守るというライフスタイルが主流であった世代である。夫婦二人世帯を仮定すれば、小さな仕事であっても、働き続けてさえいれば、ダブルインカムで経済的には十分にやっていける。また、単身世帯の場合であっても、高齢期に稼ぐべき額はやはりそこまで多くない。  だから、現在においても、未来においても、定年後のキャリアは小さな仕事を楽しむ姿こそが典型であり続けるはずなのである。

こうした事例からは、定年後のキャリアでは、定年前のキャリアで培った狭義の専門性を直接活かせる仕事に就くことに必ずしも執着しなくてもよいことがわかる。また、定年後は人が羨むような大きな仕事にもはや固執しなくてもよいということがうかがい知れる。  それと同時に、定年後のキャリアは決してゼロからのスタートではない。定年後の就業者の数々の声は、仕事のサイズにかかわらず、これまでの経験を活かして定年後の仕事に臨めば、仕事で早く基盤を固められ価値ある仕事を続けていくことができると教えてくれる。

そのうえで、定年後の豊かな仕事として、比較的多くの人が共通して言及していた事項をまとめていくと、概ね以下のようになる。 ・健康的な生活リズムに資する仕事 ・無理のない仕事 ・利害関係のない人たちと緩やかにつながる仕事

第一に、健康的な生活リズムに資することである。多くの方から頻繁に出てきた要素として、仕事を通じて起床や就寝の時間が安定して生活リズムが整うということがあげられる。

 第二に、無理のない仕事である。おそらく定年後の仕事を考える上で最も重要な考え方がこの「無理のない仕事」だろう。つまり、過度なストレスがない仕事が好ましいということである。先述のとおり、厚生労働省「労働安全衛生調査」によると、仕事上のストレスの原因は多い順に、仕事の量、仕事の失敗・責任の発生、仕事の質、対人関係などと続く。定年後の就業者はこれらの仕事のストレス要因を意図的にコントロールしている様子がうかがえた。紹介した7人の事例でも、管理職の要請を断った山村さんや補助運転手の仕事を進んで引き受けている森永さんをはじめ、多くの人に類似した発言が確認される。

第三に定年後に幸せに働き続けるための要件としてあげたいのは、利害関係のない人たちと緩やかにつながる仕事である。孤独は人の幸福度を下げると言われているように、生活を営む上で人とつながることは重要である。この点、定年後の人たちにとって、仕事を通じて人とのつながりを持てることは、幸せに生活していくうえで重要な要素となっている。

生涯現役が求められる現代において、多くの人のキャリアは拡張するだけのものではなくなる。こうした現実は必ずしも前向きなものではない。ただ、転機に向き合うのがつらいからといってそれを避けていれば、自身を取り巻く環境変化に対して適切に対処することはできなくなってしまう。

というのも、定年後も有意義に仕事をしている方々の事例をみていくと、多くの事例で仕事がうまくいかなくなったとき、またそれに伴って昇進が行き詰まったときに関する述懐が出てくるのである。当時の記憶を第三者に丁寧に説明できること自体が、彼らがキャリアの転機に正面から向き合ったことの証左なのではないかと感じる。そうして考えると、彼らが定年後の仕事を充実したものにできているのは、キャリアの転機に対して真摯に向き合った過去があるからだとも考えられるのである。

 仕事から得られる収入の額は、その人がなした仕事による成果に応じて決まるものであって、決してそれがその人自身の価値を決めるものではない。定年後は、高い給与を稼ぐから偉いのだとか、低い給与の仕事はそうでないのだとか、そういう競争意識にとらわれる必要はないのではないか。

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2024年05月01日

Posted by ブクログ

いやぁ、いい本でした。良書。

・70歳男性就業率は45.7%、働くことは「当たり前」

“人生100年時代”
“生涯現役時代”
“労働供給制約時代”
“少子高齢化”

このキーワードに対する、一つの回答だと思った。

本書の内容を、簡潔にまとめると、以下。

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定年後も働かないとやっていけないよ。
とはいっても、年金にプラス5~10万くらいの月収、
そのような“小さな仕事”でかまわない。

しかも、多くの定年後の労働者は、その“小さな仕事”に満足しているというデータがある。ストレスのたまらない“小さな仕事”でかまわない。

また、“小さな仕事”は、個人だけでなく、社会にとっても意味がある。

少子高齢化においては、労働者が足りなくなる。
若者(労働者)が減り、高齢者(消費者)の割合が増える。
定年後、働かないでいることは、労働者から単なる消費者にかわること。
消費者に対して労働者が足りなくなる。特に地方においてはそれが顕著にあらわれる。

これを解決させるには、
外国人労働者の受け入れや、社会保障制度の充実に腐心するのではなく、
定年後も働く人を増やすこと。
そのためにも、社会は、“小さな仕事”の必要性を知り、リスペクトすること、働き方や給与を見直し、評価すること。何よりこれを、消費者側が受け入れること。

******

……と、ざっくりいうとこのような内容だったのですが、
“定年”という言葉がタイトルにあるせいで、
定年前の現役世代や若者が、本書を読むのを後回しにするかもしれない。

それでは非常にもったいない。

定年前に読んだほうがいい。絶対そのほうがいい。

むしろ、定年してからこの本を読んでも遅い、価値が半減する。

この本は将来の人生設計を考えるうえで、めちゃくちゃ参考になる。

「10年後どうなりたいか?」と聞かれても、
「え、それって毎年考えなきゃいけないじゃん。
2024年は2034年のことを考えて、2025年になったら2035年のことを考えて……毎年考え続けることになるよね?」

でも、「定年後、60歳以降、どうなりたいか?」、
この問いかけだと、60歳という“定点”だから考えやすい。

個人的にはそう思いました。


ところで、この手の本って、定年後の実体験を交えて書いたり、
実際に定年した人が書いているイメージがあったのですが、
作者の年齢を知って驚いた。

著者である坂本貴志さん、1985年生まれだそう。とても若い。

いや、この年齢だからこそ、良いのかもしれない。
定年前の、現役世代の目線にたって書いているからこそ、“定年前”の人に響くのだろう。


にしても、こういう本って必須だよな、と思う。

読んで損はないというか、読まないと損をする。

あくまで統計データに基づいた本だから、すべての人には当てはまらない。
個人差は絶対にある。だから、すべては鵜呑みにできない。

しかし、自分の将来を考えたり、日本の社会を知るうえで、参考になることは間違いない。読んで良かったです。

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2024年03月05日

Posted by ブクログ

定年前後も同じ会社に残り続けるか、独立や起業をするか、と言う一種の啓蒙的な或いは背中を押す為の書ではなく、エコノミストらしく客観的に現在の我が国の置かれた状況をもとに定年後も「小さな仕事」を続ける意義が説明されている。ベストセラーであることに納得がいく良書。自身に照らして見ると衝撃的に思えることも多い。定年後はもはや「高い専門性を身につけているかは問題ではない」等はモチベーションの維持が難しくなるメッセージでもある。日本の労働市場の問題に対する外国人労働者の受け入れに係る解釈にはやや疑問が残った。

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2023年09月07日

Posted by ブクログ

我々30代は恐らく70を過ぎても働いているのだろうという、うっすらとした未来予想をデータで肯定してくれる。定年になったら楽になるなんて嘘だったんだ。「定年後に働くことは所与。そうした状況でどのように働くかを考える。こうした姿が多くの日本人が直面する現実になるだろう。」という趣旨の一節が印象的。

方で、全員が全員、定年しても成長し続ける仕事の仕方をするのが本当にベストかという問いかけや、老人のホワイトカラーに需要は少ないといった、一種逃げ道も用意してくれているので助かる。

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2023年07月31日

Posted by ブクログ

会社員でいる限り、それまでに築いてきたキャリアをどのように降りていくのか?という転機が50歳以降に必ず訪れ、定年後にどのような仕事をしていくのか?そんな事を現実問題として考えさせられる良書でした。
私自身は40歳前半で、まだ現役世代の真っ只中ですが、定年が近づくに連れて減少するであろう生活費を得るための選択肢の一つとして地域社会に貢献する小さな仕事も視野に入れたてみたいと思います。

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2023年07月16日

Posted by ブクログ

タイトル通り、定年後の実態を、国勢調査をはじめ様々な調査結果から分析した本です。定年後だけではなく、50、60代のデータも取り上げてていて興味深い内容になっています。
特に気になるのは、定年後の貯蓄額や雇用状況かと思います。貯蓄額については、通常はその平均値と自身の貯蓄額を比較することが多いかと思います。しかし、著者は、調査対象者の中に数人でも多額の貯蓄を有している人が存在すれば、平均値は上がってしまうので、中央値を知ることの方が現実的だと指摘しています。
2019年の総務省の家計調査では、60代の貯蓄額の平均は2000万円ですが、中央値は何と1500万円とかなり差があります。
また就業に関しては、70歳までの雇用を努力義務としている企業が増加しています。2020年のデータでは、60〜70代の就業率は大幅に上昇しています。一理には、退職金が下がっていることもあるそうです。
改めて、自分の老後を深く考える機会になりました。

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2023年06月18日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて手にとった本
『ほんとうの定年後』

現役世代の殆どが、定年後の暮らしに不安を感じているのが、今の日本の実態だろう。

先日某番組で、とある教授が「人間は他の動物と違って、神様の想定外に長生きしてるけど、生体機能はまたまだ進歩の過程だから・・・」というなかなか興味深い話をされていた
医学やテクノロジーの進歩、生活環境の改善や人間の抵抗力や知識の向上といった凡ゆる側面が、長生きに影響しているのは言うまでも無いが、誰もが案じるのが健康とお金の寿命だろう。

本作では、数値化されたデータ分析や統計によって、具体的かつ現実的に、定年後の生き方を示している。
読後は、将来の漠然とした不安が少し軽くなり、将来を過度に悲観することなく、現実と向き合おうと思えた。
特に、老後が心配な方にオススメしたいが、若い世代が知識として読んでおくのもオススメ。

そして膨大なデータ量と、それに基づく分析結果、各種グラフの多さから、読み手に訴えかける作者の熱量を感じた。定年まで未だ先の長い作者が、定年を意識し始めた世代に向けてあらゆる手段で訴えかけてくれる・・・
日本は改めて素敵な国だなぁと嬉しくなった。

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2024年05月14日

Posted by ブクログ

久々にいい書籍だった。
分析、対応策とも納得できました。
中小企業経営者の意識を変えていくのは難しいけど、やって行かなければいけない問題だと思います。

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2024年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

定年前後を中心に
リアルな働き方を分析・提案している内容

現役時代は昇進などでストレスの高い仕事をしているが
定年過ぎて 著者の言う「ちいさな仕事」に従事している人は比較的 人生の満足度が高い

定年後の豊かな仕事として 比較的共通している事項
・健康的な生活リズムに資する仕事
・無理のない仕事
・利害関係のない人たちと緩やかにつながる仕事
は覚えておこう

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2024年03月06日

Posted by ブクログ

 数年前に老後資金は2,000万円などが話題になり、「老後資金がたりません」などの映画が作られ、定年後の老後を心配する声が絶えない。バブル崩壊以降の経済の停滞による可処分所得の経年的な減少、年金支給額の減額に物価高騰による生活費の高騰が追い打ちをかけ、退職支給年齢に引き下げと定年延長による労働観の変化、少子高齢化による人生100年に向けた老後の在り方を考えざるを得ない。
 日本人のロールモデルとして、高度経済成長を経験した世代は50~60歳で定年退職し、後は年金で豊かな生活が送れると考えてきた。事実、物価高騰以上に日本経済の好循環は、生活水準を総じて引き上げた。本書は、第1部では各種調査報告を元に定年後の仕事にかかわる15項目の調査から、年金受給額や定年後の平均的な給与所得などの所得を元に、定年後の生活に必要な費用や経済観を詳らかにしていく。一方、第2部では、7人の事例を元に、定年後の人生観や生活観の変化を紹介し、労働人口の減少も視野にいれた社会貢献による「小さな仕事」が社会へのイノベーションになっている事例を紹介する。
 本書を一通り読んだサラリーマン世帯は、概ね納得できるのではないかと思われるのだが、自営業者や長らく非正規で働き続け、満足に国民年金を納めきれなかった経済的弱者や社会的に孤立した人々を捕捉しきれていないのではないか。事実、私が知る社会の一断面では、経済苦で満足に医療にアクセスできず、無料低額診療事業につながるケースも少なくない。また、孤独死や経済的手遅れ事例は毎年のように報告され、しかも氷山の一角とも言われている。少額の年金であるがために、働かざるを得ない高齢者が圧倒的に多いのではないかとも思われる。
 定年まで働き続け、一定額の退職金をもらい、住宅ローンや子供たちの学費も払いきり、厚生年金と定年後の労働で豊かな生活をエンジョイできる事が望ましい。しかし、高騰しすぎた住宅費用や学費により親世代の老後資金は風前の灯火となり、一方親に頼れない子ども世代は貸与型奨学金の返済をしながらでは、結婚も含めて、子育てに躊躇することも当然であろう。
 持続可能な日本社会を考えていく上で、参考になる1刷ではあるが、社会、経済的弱者も含めた、高齢になってなお無理して働かなくても良い社会の実現に向けた社会保障の充実は、現在自民党が進めている武器・弾薬を爆買いする安保3文書を閣議決定する大軍拡路線でないことだけは確かだろう。

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2023年07月16日

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ネタバレ

参考になった。
定年後働くのは不幸なことではなさそうだ。収入はあった方がいいし、健康にもよい。
消費者より働く人優先の社会がこれからは必要との考えに目から鱗。

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2023年06月03日

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最近年を取って、欲しいものがなくなってきたなぁと感じていた。この本を読んで、定年後の仕事についても、収入についてもなるほどと思うことばかりだった。私も、下の子どもが大学を卒業するまであと3年。もしも大学院に進学すればあと5年。
そこまで働いたら、今の仕事をやめて世の中のために小さな仕事をしていくのが理想。

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2023年05月07日

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前半のデータ編は目新しい内容はなく読み飛ばしましたが、後半は定年後の仕事に関してとても納得感のある指摘がされていました。

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2023年05月07日

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ネタバレ

定年になったら必要なコストも減るので、身の丈に合った収入で十分。

月10万円の「小さな仕事」を探して、地域や社会に貢献して、満足度の高いシニアライフを目指しましょう。という、スタイルの一冊。

少し気が楽になった。でも持ち家じゃない人は、厳しそう…

よくある定年後対策本では、独立起業を勧めていたり、現役時の収入をなるべく落とさないように頑張ろう的な攻めの内容が多い。

これからの時代、人は足りなくなるので、業種を選ばなければ仕事はあるよ。現役時の価値観を解体して、緩く長く働きましょうという趣旨。

逆に言えばいつまでも働かなければいけない時代の到来なのだけど、まあ、わたし的には働けるうちは働きたいと思うので、前向きにいろいろ試してみたいとは思ってます。

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2023年04月30日

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事態としては遠い次元の話に思えるが
仕事との向き合い方が老若問わずに屹立する課題である現今において、幸福なライフサイクルの形成にはどういう形がありうるのかの一つの啓示になっているのではないか。

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2023年03月27日

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この本を読んで、以下の理由から現代社会においては60~70歳が黄金時代だと思った。
・お金がある程度自由になる。
・子供が独立して手がかからなくなる。
・役職から外れるので、仕事上の大きな責任から解放されストレスが軽減される。
・自分の人生経験を直接的または間接的に活かせる。
・健康に留意していれば、まだ身体は元気。

7人の普通の人の事例がとてもリアルで参考になった。

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2023年03月26日

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少子高齢化のため、老後に不安を抱く人は多い。
しかし著書では、老後は月々必要なお金が減るため経済負担は多くないこと、現役世代よりむしろ活き活きと暮らす人が多いことをデータや当事者者面談を通じた研究結果より指摘している。

幸せに暮らすには、健康、お金、繋がり、これらを保つことが大切と思います。老後にこれらを得る手段として、小さな仕事は確かに有効だな思いました。

ただし、現在定年後の世代と、これから定年を迎える世代ではその時々の年金財政は同じとは限らない。定年後に稼ぐべき金額が10万円か20万円かでは必要な対応も異なるため、定年後は生活に追われず比較的幸福、とした今回の分析が現在現役世代の人達にも適応できるかには議論の余地があると思います。

本書の後半では、日本のサービス業は、アメリカに比べて質が高い一方で、代金は安いことを言及しています。代金が質に見合う程度に高騰すれば、支出は増え、収入も増える。日本経済を足元の停滞状態から上向かせる方法論として1つの考え方だな、と思いました。

また、日本は世界に先駆けて高齢化が進む。これは経済的に決して有利なことではないが、結果的に高齢化への対処方法を一番に掴む可能性がある。他国は日本に遅れて高齢化するが、その時には日本の対処方法を後追いで導入する可能性がある。即ち、日本は世界各国が将来必要とする商品を世界で最初に商品化する国になり、これは国としてのチャンスなのかも、と思いました。

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2023年03月05日

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統計の羅列に主観的なコメントが入るが、30代のアナリストのコメントはリアリティと説得力が薄い。

か、その浅い内容を読みながら、10年後の自分の定年を思う。周囲のかなり残念なおじさんたち、たまにいる役立つ人(それでも価値観は古い)、稲盛和夫さんみたいな超人的な人を思いながら、自分はどうなりたいかと言えば、当然稲盛和夫に近い人でありたい。

見た目がキレイで、実務的に役立ち、若い人たちを笑わせて元気づけ、収入もそこそこ高く、だけど時々休んで海外に出かける。そんな暮らし。

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2024年06月02日

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第一部は データを元に構成した15の事実
定年後  年齢 生活費は下がる  能力 体力も低下する  非正規雇用 フリーランスの増加
小さな仕事の積み重ね
第2部は インタビューを元にした 実働実例
第3部が著者の提言なのだろう

仕事の定年って何なんだろう

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2024年02月23日

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感覚的に納得のいく内容でした。

高齢化かつサービスデフレ(≒良質なサービスがなぜか安価に買える)している今の日本の問題に対して、この本が提唱する「小さな仕事」をもって解決できないか、という第3章の内容がなかなかイケてると思いました。

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2023年08月17日

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定年後の仕事のあり方について考える3部構成の本書。高齢化社会の現状について知りたくて読む。第一部は様々なエビデンスを示して丁寧に現状を解説してくれており信頼と好感を持った。
第二部では自分自身が定年後の局面でどう振る舞うのかを考えながら読むことが出来た。会社、雇用者そして社会が上手く成り立つことを念頭に定年後の働き手が重要であり、それが自身にとっても有益であること、職業の選び方についても考える機会となり、幾分将来の不安を払拭してくれる本である。

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2023年07月29日

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定年までまだ何十年かあるが、タイトルに惹かれ本を手に取った。定年後は小さな仕事でも周りの役に立つ仕事でやりがいを持って意欲的に働く事が大事だと思った。実際の経験者の章は参考になったし、興味深く読むことができた。

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2023年07月04日

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定年後の状況は一般的にどういったことなのかがわかる。

【概要】
●定年後の仕事の事実
●定年後の豊かな仕事の共通事項
●「小さな仕事」の積み重ね

【感想】
●定年後の就業環境が変わることは理解しているが、具体的にどのように変わるかというのがイメージできる。
●一方で、自己に目標があるならば、定年後の現実を理解した上で目標を追求していくことは「有り」だなと思った。

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2023年06月25日

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定年前後で仕事に対する価値観が変わる方が多い。収入・栄誉・能力発揮/向上 → 貢献・生活との調和・体を動かす。生きていくために必要であった仕事に対する価値観が、定年が迫るに連れて人生の意味合いを問いた上で軟着陸していく方が多い。自分も同じだな。

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2023年06月19日

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 この手の新書は、著者の論旨に従ったデータを集めてくるので、論旨に間違いがあるわけではないが、考え方の一つであるにすぎないと考える。でも、私は本書の論旨に基本的に賛成だ。公的年金をあてにした老後を考えている。

 社会と接点を持つ程度に小さな仕事を見つけられれば、それに越したことはないが、縁がなければそれも良しとしよう。さあ、もうひと頑張りだ。

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2023年06月10日

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本屋で何度か手に取っては置き、結局やっぱり気になって購入。
きっと先日届いたねんきん定期便のせいだ。
どう考えてもこんな金額ではやってけない。

数年前に「AIの進化により、ほとんどの職業がなくなる」2045年問題を知った。それによれば自分の今の職業も、未来がない。
ところが日本には今2040年問題もあるそうだ。
少子高齢化による働き手不足がかなり深刻だそうだ。

考えてみれば、コンビニも警備員さんも、駅や病院の清掃の方も、外国人かシニア世代が目立つ。

日本中隅々まで日常生活に必要なサービスを供給するには、やっぱりまだまだ人の手が必要のようで、シニア世代も大事な働き手となっている。

誰かに老後を養ってもらえるような時代は終わり、自分たちでこれからも生きていかなければいけない。
近くにコンビニがないと困るし、公共の場は綺麗であってほしい。どんなに経済的に豊かな人でも、ひとりで生きられない。そういった全てを他の誰かが変わってやってくれていることをどうしても忘れそうなくらい「小さな仕事」の対価は低い。

歳を重ねるにつれ、多くのシニアが「小さな仕事」に生きがいを感じていることは幸いだ。
でももっと「小さな仕事」が評価される日本になって、シニア世代が日本を支える!ってくらい元気な老後を迎えられるといいな。

そのために今どうするか。考えるいい機会となった。


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2023年06月07日

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定年後の生活に工夫できるかと手にしましたが、想像と違い役所の統計の様な本でした。

後半は、架空の7名を、性別・年齢・収入・雇用形態の設定からその変化を想定していくもの。

参考程度に読むと良いでしょう。

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2023年06月04日

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予想通りの内容で、『衝撃の事実』みたいなものはなかった。自分自身、定年が見える歳になり、役員への出世レースからも早々に脱落したので、50代で仕事観が大きく変わるというデータには納得感がある。子供が独立したら生活費が大きく減りそうというのも見えてきていて、半分ボランティアをしながら、残りの時間をストレスのない仕事に充てられたら幸せな老後になるだろうな、と思った。
ただ、ここに登場するのは皆恵まれた境遇にある人達。現在60代後半以上で大卒なんてエリート層だ。出自も恵まれていたに違いない。そのエリートが高度成長期を経て豊かな老後を送っている姿が、どのくらいこれからのリタイヤ組の参考になるかは不明だ。限られた読者限定の話だと思う。

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2023年04月30日

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そこそこまっとうな正社員として生きてきた人対象で有り、非正規雇用でずっと働いてきた人、もしくは今後正社員にもなれない薄給な人々にはまったくあてはまらない。
今も将来も小さな仕事にしかつけない人は老後どうなってしまうのか。怖

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2023年02月28日

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