あらすじ
俺たち、久々の共闘になりそうなんだ
命を狙われる謎の少女を守る「紅」、全国を騒がす偽札事件を追う「橡」。新大久保を舞台に、探偵バディが繰り広げるアクション活劇。
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Posted by ブクログ
新宿(百人町)を主な舞台とした、バディ物の探偵小説。本来ならハードボルド小説になりそうな物語だが、エンターテイメント小説の顔をしつつも、作者の主題は人と人の関係性(絆)ではなかったのかと思わせる人間性に重きを置いており、どっちつかずの作品となってしまったようにに感じました。主人公の一人の真田紅の描写がしっかり描けており、なかなか魅力的。格闘場面がテンポがよくて、文章の切れも抜群です。戦い中の適度なユーモアもよいアクセントになっていて効果的。また、一つの事象をバディの主人公の真田紅と、黒川橡のそれぞれの視点で描く文章構成も、A級サスペンス映画のように鮮やかです。と非常に魅力満載ではあるのですが、いかんせん物語の筋が雑で、展開の問題山盛りです。また、ミステリー的な出だしではあるのですが、主人公のバディがロクに推理も分析もせずに、主人公以外の登場人物が、事件の秘密にすべきキーポイントを、べらべら話してしまうのでエンターテイメントとして楽しさが消失してしまいます。TVのサスペンス劇場でも、犯人が海沿いの崖に追い詰められて、やっと口を開くという位の考慮がありますが、本小説の主人公以外は、ホンクラ過ぎてなんとも。舞台が新大久保周辺ですが、外国人が登場するから場所として不自然でない程度で選ばれたのか、人と人のつながりが非常に特徴的な街なのに、ほとんど描ききれていません。現地調査不足な印象を受けました。その他、ストーリーは海外にまで広がりますが、その国の経済制度や法律、犯罪への取り組みの調査不足は否めず、無理な話しの流れを増幅しています。最後まで読むと、エンターテイメント性よりも、人の関係性が作者の描きたかったのかなとわかりますが、エピローグと、その前の翌朝のエピソードは、とってつけた感じで、冗長性は免れないと思いました。出版が、文藝春秋社のようなしっかりした出版社であり、雑誌連載でなく書き下ろしで時間的にも余裕があったので、編集者がもう少しフォローできていたら傑作になる可能性もあったのではと感じさせる一冊です。