【感想・ネタバレ】仏教の大東亜戦争のレビュー

あらすじ

日本仏教界最大のタブーに迫る!
「一殺多生」による正当化、軍用機の献納、仏像や梵鐘の供出、植民地での布教。昭和の戦争を推進した仏教界の語られざる真実。

目次
はじめに

廃仏毀釈からのサバイバル──明治維新
・国家にすり寄った仏教界
・島地黙雷と大教院

進撃する仏教──日清・日露戦争
・日清戦争と大陸布教
・日露戦争──仏教の帝国主義化
・植民地支配と仏教

大東亜戦争と皇道仏教
・戦争に熱狂する仏教界
・戦闘機の献納競争
・軍人たちの仏教信仰
・寺院に残る戦争の記憶
・アメとムチの仏教統制

仏像も鐘も武器と化した
・金属供出と空襲
・反戦の僧侶
・農地改革と寺の“敗戦”
・僧侶たちの戦争体験

結びにかえて

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Posted by ブクログ

刺激的なタイトルは著者の”はじめに”の末を参照。

物足りないという評も分からないではないが
ジャーナリストで現役の僧侶でもある著者による
明治維新以降の権力側と仏教教団との関わりの通史として
十分に読み応えのある内容では。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

浄土宗寺院の住職でもある著者は、まだ10代の頃、太平洋戦争時の「開戦詔書」が本堂にうやうやしく飾られていることに気づく。著者の祖父(先々代の住職)は戦時中、志願して陸軍に入隊しており、どうやら「軍国青年」であったらしい。殺生を戒め、慈悲や寛容を説くはずの仏教者が侵略戦争に加担するという矛盾。困惑する著者。それから30年、調べれば調べるほど「仏教界最大のタブー」と言うべき、戦争との深い関わりが見えてきた。

歴史をさかのぼると、その始まりは明治維新の際に新政府が発した神仏分離令にある。それまで分け隔てなくあがめられてきた神と仏を明確に区別することが宣言され、天皇を中心とする国家神道体制が打ち建てられていく一方で、全国的に廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、仏教は大打撃を受けた。これに怯えた仏教界。各宗派が競い合うようにして過剰なまでに政府にすり寄るようになり、やがて植民地政策や侵略戦争までをも正当化していった。

読んでいてとくに驚かされたのは、各宗派・宗門トップの号令のもと、「天皇制の下での仏教ファシズム(皇道仏教)」という新体制が敷かれていたという事実。「絶対的な存在、天皇を支えるための仏教」として、「天皇は阿弥陀仏である」などとのたまい、戦中は「敵はもはや人間ではない、人間でなければ、殺しても不殺生戒を破ったことにはならない」といった極論を唱え、仏教教義そのものまで変質させていたという。

ほかにも、諸宗派による政府への献金とロビー活動、大陸への進軍に付き従っての布教拡大、従軍僧の戦闘への参加、戦闘機や軍艦の献納、などなど、数々の事例が、関係した人物とともに紹介されている。中には、僧籍剥奪・永久追放などの厳しい仕打ちを受けながらも反戦の姿勢を貫いた僧侶が、わずかながらもいたという。有名な大逆事件に連座して逮捕され、獄死した僧もいた(戦後何十年もたってから名誉回復されている)。

本書の主題は仏教界にとどまらず、日本という国そのものの一大タブーと言えるかもしれない。
ベースとなる明治維新からの流れは、同著者の前著『仏教抹殺』を読んでいたので、とてもよくわかった。未読の方には、そちらを先に読むことを強くお勧めしたい。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

明治維新以後、神仏混淆や農地改革の仏教への影響。仏教の生き残り政策として、仏教界が政治と結びつき、戦争に協力していた経緯の記録。著者は寺の住職も勤めている。戦争に加担したことには否定的だが、金属供出で鐘や仏が破壊されたことなどを残念がるところは仏教界の側の人だと思った。著者の意に反して、私は読みながら宗教は本当に必要なのか、どのような役割を果たしているのかなど、考えてしまった。

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

まず、よくここまで取材したのだと思います。
筆者は僧侶でありながら仏教界のタブーに切り込む。
国家神道の影に隠れていますが、各宗門もかなりのものです。戦国時代にも陣僧という従軍僧は存在しましたがそれとは明らかに性格を異にします。
そういえば学生の頃、取材で見せて貰った古い回向本も、戦中のものは、ん?と思う書き換えが多々ありました。
特に若い僧侶の方には読んで頂きたい。

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2023年08月30日

Posted by ブクログ

ざっと。仏教界が、というより、多くの業界が自らの生き残りをかけて戦争を支持し、参加し、賛美し、あるべき姿から曲解して姿で物事を進めていたのではないか。しかし、天皇を阿弥陀如来にしたり、戦勝の祈祷を行なったり、戦闘機まで寄付していたとは驚き。

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2025年05月18日

Posted by ブクログ

現職の住職である著者が、戦時中に全国各地の寺院が政府の要請により、また、むしろ積極的に戦争に協力していた状況を丹念に取材した力作。
それは元々明治の廃仏毀釈に端を発していたが、第二の廃仏毀釈は自らの手による自滅であった。

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2022年10月18日

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