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Posted by ブクログ
人類がこれほど多くの集団で生き続けることができたのは、古くから語り継がれてきた物語の力によるものである。
過去の人々にとって、物語は学びの場であり、結束や共同体の維持に役立っていた。
しかし、現在では、この文明を築くほど人を団結させる力を持った物語の力が悪用されていると著書で説明されている。
その結果、陰謀論、フェイクニュースが世にあふれ、根拠の薄い話や、偽情報を信じたりすることで人々は騙されてしまっている。
これは、物語は人々を結束させるだけでなく、誤解や混乱を生み出す要因にもなり得ることを示唆している。正しい情報を得るためには、事実を確認することや多様な視点から情報を収集することが必要になる。
物語の優れた点は、頭に入り記憶に残り、人々を引きつけ、感情を生むことや、情報伝達が早く、本来なら疑うという心の防御をすり抜ける効果にあるという。
また、物語には危険性が三つある。
それは、人々が物語を求めること、物語が問題を求めること、そして物語が悪者を求めること。これにより、人々は大事か、事実かよりも物語としての良し悪しでしか判断しなくなってしまう。
事実は退屈であり、人々はワクワクするストーリーに取り憑かれてしまうからだ。
善と悪の物語は物事を単純化し、二極化を加速させる。その結果、集団内での分断が生じる可能性があると著者は懸念している。
この本から学べることは、ストーリーテリングは心を動かす最大の武器であると同時に、誤った使い方をすると人々が自滅する諸刃の剣であるということ。
近年は企業やマーケティングで重要視されるようにになってきたストーリーテリングは、人に根付いた欲求であると理解をしておけば、無駄な出費を減らす防御策にもなるかもしれない。