あらすじ
「禍いは、とても美しい姿をしているの。
だから魅入られてはいけない」
人魚を見たという女性。
井戸の底を揺蕩うそれは、恐ろしき凶兆だった…
「人魚」より
静かに心揺さぶる、聞き書き実話怪談。
子供の頃に見た忘れられない街の景色。だが、再び訪れるとそこは墓場で…「景色」
酒蔵が神社に奉納する酒を選ぶ秘儀。酒樽に耳をつけると歌が聞こえてきて…「歌声」
行き止まりの道の先が見えてしまう少年。行って確かめてみたい衝動にかられるが…「行先」
水音を流しながら見えない何かに質問して録音する交霊実験。すると奇妙な声が…「名前」
喧嘩した兄弟。やがて兄はある夢を見始め、弟は不眠に。奇妙な符合の真相は…「監視」
突然家にやってきた従兄。黒子の位置に違和感が…「偽者」
椿柄の着物に異様な執着を持つ女性。祖父の遺品整理でその理由が…「振袖」
幼い頃に人魚を見たという女性。以後恐ろしいことが…「人魚」
錫杖を持った不吉な僧侶の影。父も祖父も僧侶の祟りによって死んだというのだが…「怨環」
ほか、魂に深く食い込む珠玉の35話収録!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
実話怪談はただ怖い怖いと思っているひとにお薦めしたい!
全話の短いタイトルも良かった。
気に入ったはなし。
『骨喰』土地の風習は理解できない。
『景色』見ているものが正しく見えているとは限らない。
『隙間』隙間のはなしって怖い。
『告白』人ではないひとに話しかけられたことありますか?
『無知』無闇に扉は開けないように。
『腐臭』鼬という名前のベツノモノ。
『思い出』西川の毛布。
『幻視』これがいちばん怖いはなしでした。震える。
『偽者』記憶力って大切だわー。
『晦日』尋ねてこられても外に出てはならない。
『歌声』このお酒を造るのはどこの酒蔵なんやろうなー。
『女傑』この世界にはやはり知らない場所につながる道や扉がある。
『行先』このはなしも異界への道のはなし。
『褻の日』神様たちの宴会。
本当に怖いものって誰にでもどこにでも平等にあるような気がする。
それを感知するかしないかだけでどこにでも転がっているのかもしれない。
Posted by ブクログ
これまで読んできた怪談系書籍の中で一番気に入った!
一冊の中に笑える話あり、ロマンチックな話もあり、背筋が冷たくなる正当派の話もありバラエティ豊か。
血まみれの化け物に追いかけ回されるようなおどろおどろしい話よりも、じんわり怖い怪談がお好きな人に特にオススメ。
校正が甘いのか誤字や文体の誤りが多少あるものの文章そのものはとても美しい。
また、どの話もオチがしっかりしていて、出来の良いショートショートを読んでいるような感覚も味わえた。
お気に入りは友人の部屋に落ち武者が出現するエピソード「思い出」。
落ち武者というド鉄板のモチーフがなぜ印象的な怪談に仕上がっているかはぜひ本編にてご確認あれ。
気を衒わず
著者自身の体験談や取材したものが集まった本。ただ怖いだけではなく、大学の先輩に想いを告げられなかった話、最後に体験者が希望を抱く話など、一服の清涼剤のようなものも収められている。陳腐な言い方だが、心が温まる怪談集である。