あらすじ
人混み、車、インターネット……世の中、渋滞だらけである。新しく生まれた研究「渋滞学」により、その原因と問題解決の糸口が見えてきた。高速道路の設計のコツから混雑した場所での通路の作り方、動く歩道の新利用法まで。一方で、駅張り広告やお金、森林火災など停滞が望ましいケースでのヒントにも論及。渋滞は、面白い!
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Posted by ブクログ
そしてネットワーク理論にとってもう一つの重要なアイディアがその後すぐに物理学者バラバシらによって発表された。彼らは航空機やインターネットなどのネットワークを詳細に調べ、ハブという多数の接続道路を持っているものがいくつか存在していることに注目した。このようにある程度ランダムなつながりのネットワークの中にも、実は多数の接続を持つ中心的な役割のものが少数存在することもある。このようなネットワークをスケールフリーネットワークと呼んでいる。長いバイパス枝も短い枝も同じ1本と数えると、ある点から別の点まで行くのにたどる枝の合計数は、スケールフリーの場合、バイパスやハブの存在のために少ないものから多いものまでいろいろあって、ネットワークを特徴付ける代表的なスケールがないことからスケールフリーという名前がついた。
スケールフリーとは、簡単にいえば次のようなことだ。ある100人のクラスのテストの成績は全員異なっていて1点から100点まで分布していたとすると、このクラスにはいろいろな人がいて特徴づけができずスケールフリーになる。この場合、平均点は
50.5点だが、この数字にはほとんど意味
はない。また、高得点の人がハブに相当していると考えてよい。それに比べて、もし全員30点ならばそのクラスは「要努力クラス」と特徴づけられるのでスケールフリーではないし、また高得点者であるハブも存在しない。
<図3>を見るとそのネットワークの様子がわかると思うが、スケールフリーネットワークでは、多数の接続を持つハブとなる点がいくつか存在するのに対して、ランダムなネットワークでは全体としてとくに際立った点はなく、全体がランダムに結びついているだけだ。
航空路線図はこのようなスケールフリーのネットワークを形成しており、その他映画俳優の共演関係のネットワークもこのようになっていることが知られている。つまり一部の際立って有名な俳優がハブになっているのだ。これらの例の場合、一つの点から出ている接続枝の数がその点の「得点」だと思えば、テストの成績のたとえ話と直接対応して考えられる。
スケールフリーとスモールワールドはともに碁盤目状の規則的なものに比べてお互いの距離が近くなるネットワークだ。それではそのちがいは何かというと、まずスモールワールドにはハブは存在しない。そしてスモールワールドの場合は自分の周囲ともある程度強く結びついているのに対して、スケールフリーはそのような周囲との接続に関しては保証していないという点だ。したがってこの周囲との結びつきの強さという意味では、スケールフリーはランダムなネットワークに近い。最近では、自分の周囲ともちゃんと結びついて、しかもハブが存在するような両方の性質を備えたネットワーク
も見出され、その性質の研究が進められている。
スケールフリーのネットワークは、ハブの故障に対して弱いと考えられる。
そしてハブの不調にどれだけこのネットワークが耐えられるのか、などが理論的に研究されている。これはインターネットでの悪意のあるネットワーク攻撃に対する安全性を増す上でも重要な研究だ。
近い将来、渋滞学にこのネットワーク理論の結果が生かされて、新しい渋
滞解消システムが生まれてくることを大いに期待している。
Posted by ブクログ
素晴らしいの一言。
渋滞の解明には、いろいろなアプローチがありますが、まずは適切なモデルの構築がカギ。
そのモデルを用いた説明をしているわけですが、シンプルかつ丁寧で、非常にわかりやすい。
また、そのモデルの応用も素晴らしい。
そして何より、西成先生の、基礎科学と応用科学に対する姿勢、自然科学観には、強く共感します。
是非、たくさんの人に読んでほしい本です。
そして、不快な渋滞を、みんなでなくしていきましょう。
Posted by ブクログ
渋滞はなぜ発生するのか。人込み、車、アリ、インターネットの渋滞を科学する。
特に第一、二章の車の自己駆動粒子系をモデル化して渋滞を計算するところが参考になった。
この最新の論文が読みたいところだが、流体力学なんかまったくわからない門外漢なので困る。
Posted by ブクログ
NHK「視点・論点」で著者を初めてみた。テーマはもちろん「渋滞学」について。
高速道路で渋滞が発生するメカニズムを、10分という短い時間で簡潔に話していて、その「渋滞学」という耳慣れない言葉と、身近さに引かれ、著者にも関心をもった。
そこで一番興味深かったのは、高速道路で渋滞しないための策が「やさしい運転をすること」だという。
つまりごく簡単に言うと、高速道路ではある一定の車間距離より間隔が短くなると、前の車両のブレーキングなどが微妙に直後の車両の運転に影響を与え、余計な減速や加速が繰り返され、それが後続へと連なることでダンゴが発生するのだという。
そこで前へ詰めるのではなく、前の車両とは余裕をもって距離をあけることが、一見、車列が延びて渋滞がひどくなるような気がするが、逆にマクロで見るとかえってスムーズに運転できる結果となるのだという。
オンエアや本書ではもちろん、学術的な論拠も示されており、きちんと自然科学的アプローチから渋滞という現象が解析されている。一方、車の渋滞をはじめとした身近な現象の原理で、いまだ論理的に未解決なものが多いという。
本書では我々の日常のまわりから多くの「渋滞」現象を取り出し、笑うくらい身近なところからも、まじめに学問している。硬と軟、まじめと遊びが絶妙にブレンドされている。研究者らしからぬ“サービス精神”を感じた。著者はメディア向け?なのかもしれない。
(2007/9/10)
Posted by ブクログ
理学と工学をまたぐ学際的な研究と人材の重要性について、この頃から提唱していたのですね。
著者は領域横断に活躍したフォン・ノイマンに憧れていたのだろうか?セルオートマトン、ゲーム理論とノイマンにちなんだ話題が多い。
ウィーナーの『サイバネティクス』やサイモンの『Artificial』を読んでいるような感じ。
Posted by ブクログ
「渋滞学」なる学問があるとは知らなかったので、手に取った本。
第一章「渋滞とは何か」は渋滞自体の説明というよりは、渋滞を説明する理論及び用語の説明が多く見られる。
「ホースで水を撒くときに先を細めると勢い良く水が出るが、人間の場合は当てはまらない」という誰にでも想像できる例をうまく用いて、物理学に疎い人でも容易に読めるように見事に書かれている。この他にも、慣性の法則、作用=反作用の法則を用いて人と水の違いを説明したり、管の中を通る空気の流れも超音速になると管を細くすると遅く、細くしなくても外部から温めると遅くなるという事を、人間は興奮・パニックに陥ると「人の温度」が上がり流れの速度が遅くなるという説明につなげたりとユニークである。
現実を表す「良いモデル」として、更に渋滞の説明にも役立つASEP(Asymmetric Simple Exclusion Process:非対称単純排除過程)という、セルオートマトン法の一種の解説がなされている。
第二章は、年間約12兆円という経済損失を発生させている交通渋滞が起きる原因を考察している。
高速道路で渋滞が起きる原因の第一位は「サグ部・上り坂」であり、すぐには気がつかない程ゆるやかな坂道の為に自分と、その後ろにいる車がどんどん減速してしまい、ブレーキを踏む強さもどんどん大きくなってゆくという連鎖反応で渋滞が発生するのだという。
交通の流れを分析する際に「基本図」が使われ、渋滞していないときのデータは右上に伸びる直線となり、渋滞が発生する所(右下がり:渋滞への相転移が見られる)を見ると、車間距離が40m以下(急ブレーキを踏んで止まれる制動距離)になった時が渋滞になるという。そして、この状態でも自由走行の80km/hを保っているのを「メタ安定」といい、通常10分程度しか持たず、渋滞に変化してしまう。
このメタ安定が現れやすい道路がサグ部であり、これ以外にもカーブ(見えづらい場所にあるとき:夕方の西日の影響)、トンネル(暗さ・閉塞感・水が溜まらないよう為のサグ:夜よりも昼のトンネルのほうが渋滞が多い)、合流部(ただし「弱いメタ安定状態」という60km/hで走れる状態が続くことがある)が主な地点である。また、混んできた時は追越車線でなく走行車線を走った方が良い、というお得な情報が明かされている。
この本が出版される8年前は、料金所が高速道路で渋滞が起きる原因の第であったらしく、それを解決したのがETCの導入であったそうだ。その効果を認める一方で、個人負担が未だに高額であること、ETCゲート通過時に速度を20km/h以下に落とさなければならないという課題が解決される必要があると述べている。
都市交通における基本図は台形をしており、ボトルネック型と呼ばれている。青信号に変わったときに自分が動ける番になるまでには、車一台あたり1.5秒かかることや、よく赤信号に引っかかる人は速度を落とすと解消できる可能性があること、先日日本でも導入されたラウンドアバウトは、交通量が適度に少ない時に最も効果があると述べられている。
第三章は人の渋滞についてである。
明石歩道橋事故の事例を参考に、通常人間は自己駆動粒子として振舞っているが、集団が極端な密着状態になっているとニュートン粒子として振舞うようになってしまうという。そして、群衆の状態は動因によって「会衆」「モッブ」「パニック」の三つに分けられている。
超満員の電車から一斉に出ようとすると詰まってしまう(ボトルネック)構造を「アーチアクション」といい、眼鏡橋はこれを応用している。避難の際に発生するボトルネックは「ミンクの実験」でも追試が行われれおり、競争でなく譲歩し協調することが大切であることを示している。
航空機からの避難には、90秒以内に脱出が可能でなければならないという基準があり、実験ではドアの幅が約70cmより広いと競争し、狭いときは譲歩協力したほうが早く逃げられるという結果になったという。さらに、競争しながら逃げている時には、避難口の付近にわざと障害物を置くことで避難時間が短くなるという、意外な結果がある。
パニック状態でないときの移動では、お互いに衝突を避けようとして自然に進行方向ごとのレーンが発生し、そのレーンがどちらの向きになるのかはその国の走る方向と一緒だという。また、駅構内において歩行速度が遅くなるところでは、周囲に気を配れることもあり広告をみる機会も多くなるため、近年注目されているという。
第四章はアリの渋滞の話である。
アリは車と違い、自分と仲間のフェロモンを利用して移動することもあり、お互いの距離が近いほうが早く動ける、適度に混み合ってくると通常動きが遅い先頭のアリが早く動けるようになる(列が長いので末尾のアリのフェロモンを嗅ぎつけるようになるため)という筆者の推測がなされている。
アリも渋滞問題を抱えていたこと自体初耳だったこともあり、興味深い章だった。今後の研究に期待したい。
第五章は幅広い領域における渋滞問題を考える章である。
インターネットの渋滞は、大量のパケットが「ルーター」という交差点に集中することで引き起こされるが、車が交差点で待たされるのに対し、パケットは物理的実体がないため渋滞すると捨てられるという違いがある。現在、輻輳状態に応じてウィンドウ数(ホストが一度に送り出すパケット数)を変化させる制御を効率的に行うための研究が行われているという。
粉粒体は一つ一つは固体だが、ある程度集まると液体の動きもするようになる(例:アリジゴク)。砂時計で1分を測るための理論的な計算、ブラジルナッツ現象のメカニズムの解明が、まだ出来ていないという事実があるが、その理由には遠くの場所まで瞬時に情報を伝える「非局所性」(例:金属の玉のおもちゃ)と、三つ以上の物が同時に衝突する際にはその動きを予測できない「多体衝突」(例:ビリヤード・カーリング)による「非可換性」(順序を入れ替えると結果が異なる事)によるもと述べられている。
乗り物の渋滞についても触れられている。電車や地下鉄で「時間調整のために停車」しているのは、四章のアリと同様に、ダンゴ運転状態となり渋滞が発生してしまうのを防いでいる(先頭はギュウギュウ詰めで乗り降りに時間がかかるが、末尾はガラガラですぐに発車できてしまう)、エレベーターが勝手に動くのは「群管理」が行われているため、飛行機が離陸許可を得るのに時間がかかるのは、「滑走路の奪い合い」と「航空機が使える空域が限られている」という大きく二つの理由によるものだという。
第六章はこれからの渋滞学をどう考えるかという話である。この章には日本の理科系大学の未来の展望と、数学の重要さが分かる情報が豊富に載っているので、「数学を勉強して何になるんだ!」という人こそ読むべきだと私は思う。
ネットワークをつながりの様子によって分類することをネットワークの「トポロジー」といい、本章ではバス型・リング型・スター型の3種類が説明されている。この考え方は高速道路の建設(首都高速道路とその他の関係)や航空機の路線(高い空港使用料を取るか否かで直通・乗り継ぎに分けている)にも応用されている。
ある程度ランダムな繋がりのネットワークの中に、実は多数の接続を持つ中心的な役割をもつものが少数存在するネットワークを「スケールフリーネットワーク」というが、これは現在悪意のあるネットワーク攻撃にどこまで耐えられるか研究が進められているという。
何でもコンピューターで計算するのではなく、数学的に「紙と鉛筆で」計算しておおよその値を算出してからコンピューターで計算し、さらにその結果を「紙と鉛筆で」計算するという、得られた結果を要素還元的なアプローチをする重要性を、カオス理論である「パイこね変換」の例を用いて解説している他、大学が独立行政法人化している昨今だからこそ、一見お金にならないような数学の基礎分野の研究を国がサポートするべき、理学部と工学部の乖離化が進んでいる今は、両分野を修めた人材が育つことが望まれると述べている。
興味本位で手に取った本が大当たりだったときの喜びは、どう書き表して良いのかわからなくなる。この本も、その一冊だ。
自分用キーワード
定量的 定性的 自己駆動粒子系 臨界状態 臨界密度 相転移 待ち行列理論(リトルの公式) (非)平衡状態 プラトーン走行 映画『スピード』 スルーバンド:グリーンウェーブ(信号機) 個別要素法 ル・ボン『群集心理』 建築基準法施行令(長さ60mを越える地下道では直通階段が設置されている) 二方向避難の原則 ハリネズミのジレンマ 自発的対称性の破れ ボトルネックでの振動現象
Swarm Intelligence ブラジルナッツ現象 排除体積効果 跳ね返り係数 in vivo(in vitro) ロードプライシング ルーティング問題 ワッツ「スモールワールド」(たった6人を通して世界はつながる) パイこね変換
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セルオートマトンって役に立つんだなぁと実感。
本筋とはあまり関係ないのだが、最終章の「複雑系科学においては、複雑な対象を複雑なまま理解する、というフレーズをよく耳にするが、これを文字通りできる人は果たしているのだろうか。」に始まるくだりには、全くそのとおりだと思った。自分自身始めてこの言葉を耳にした時の違和感と、またその時考えたことと同じことを考える人は結構いるのだろうな。
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身の回りにありふれて存在する「渋滞」という現象を力学的、数学的アプローチで分析する試みを紹介し、「渋滞学」という横断的な分野確立のビジョンを示しています。サグによって発生する高速での車の渋滞も順番待ちの行列も山火事の防止も数学的モデル、とくにセル・オートマトンでモデル化できるというのは目からウロコです。どんどん広がって欲しいと期待したい新しい学術分野です。
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渋滞学とはどんな学問かを知るには一番適した本です.
渋滞学関係の書籍を読み始めるなら,最初に読むべき本だと思います.
タイトルが渋滞シミュレーションでなく,渋滞学であることに注目してください.渋滞学は西成先生の構築した学問で,単なる渋滞シミュレーションでなく,あまたある「流れ」を取り扱うことができます.「流れ」には必ず渋滞が存在し,その渋滞が良い渋滞ならより渋滞させる方法を考え,悪い渋滞なら渋滞を軽減する方法を考えるということが基本精神です.実際,例としてアリの行動や脳内の神経細胞の栄養分の渋滞など様々な渋滞を扱っています.
非常に壮大な研究だと思います.読む価値十分です.
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著者と渋滞学という分野に興味があり読書。著者とは学生時代に一回お会いしたことがあるが、とてもバイタリティがある方といった印象。さて、肝心の渋滞学というところは単純な離散的な数理モデルに収まらず、本作では車、人混み、アリ、インターネットを特に多く取り上げ、生物学や粉体モデルなどのより複雑な事象の分析をも動機を与えている。一つに渋滞という現象だけをフォーカスしているのではなく、制御不能(可能)な多体モデルにおいて、科学に基づいた分析をし、より適合できるルールを生み出しているのが面白い。一見すると単純なルールの集まりが複雑な現象を生み出し、それを理解し、最適なコントロール原理を抽出するようなヒントもそこに隠れているのかもしれない。理工の問題は著者の問題意識には根強いことが終章を読んでも分かる。私自身も、理学、工学とそれぞれを学んだ経験から、新しい形の理工学のあり方というのも考えたいと思った。学生時代に触れている分野とはいえ、やはりこうした複雑系、数理系のモデル解析は面白いと素直に感じた。
Posted by ブクログ
少し前に筆者の『クルマの渋滞 アリの行列』を読んでおり、本書とは大体半分ほど内容が被っているので、感想はそちらの方で。
最終章で筆者が述べている「理学と工学の乖離」については、これは全くその通りだと思う。僕自身の今の興味が理論の中でもどちらかというと応用寄りのところにあるので、大学にいるうちに少しぐらいは工学系も勉強してみたいと思っているのだが、目の前の授業や課題をこなすので精一杯でなかなか難しい…
1 渋滞とは何か
2 車の渋滞はなぜ起きるのか
3 人の渋滞
4 アリの渋滞
5 世界は渋滞だらけ
6 渋滞学のこれから
Posted by ブクログ
各章、お手軽な分量で面白く読めた。
これからは通勤で使っている駅の、エレベータ付近の混雑を面白く観察できそうだ。
最終章の文章が熱くて印象は悪くない、、、が、欲を言えば理学と工学以外にも言及して欲しかった。
Posted by ブクログ
ニュートン粒子=慣性の法則・作用反作用の法則・運動の法則が当てはまるもの
非ニュートン粒子=自己駆動粒子
群衆の状態
*会衆:興味の対象への直接行動には訴えず、受動的関心から集まっている【対象に対して行動に訴えない】 ex音楽会の聴衆
*モッブ:強い感情状態に支配され、抵抗を押しのけつつ敵対する対象に直接働きかける【対象に対して攻撃的】 ex集団テロ
*パニック:強烈な恐怖から群集自体が収拾しがたい混乱に陥っている 【対象に対して逃避的】 exビル火災
ブラジルナッツ現象=直径の大きい玉と小さい玉を容器に入れておくと、自然に大きい玉が上に集まってくる現象 メカニズムは解明されていない
ライン生産とセル生産
規則的なネットワーク
不規則なネットワーク(ランダム)
規則と不規則の間のネットワーク(スモールワールド)
人間関係のネットワークは、スモールワールドネットワークモデル
スケールフリーネットワーク=ところどころにハブがあるモデル
単純なものからは単純なものしか生まれないというのは誤り。カオス理論によりごく少数のルールの組み合わせでも、デタラメな現象ができうる
複雑な対象を複雑なまま理解する、ということができる人は果たしているのだろうか。人間は少数の組み合わせしか理解できないと信じている。わかった、といえる瞬間は非常に単純な要素の組み合わせで現象が理解できたときだ。
新しい人材は、基礎と応用両方の精神がわかる人材。言葉を単に右から左に通訳するだけではなくて、両分野の専門的知識をある程度細部まで理解しつつ、その結果を今度は細部にとらわれずに生き生きしたイメージで捉えるような能力がなくては
ならない。
単に、AのプロとBのプロが手を組むのでは意味がない。一人の人間の頭の中に両方を入れることが重要。
異なる専門家同士が集まって意見交換するブレストはたいていうまくいかない。少なくともかなりの程度までお互いの分野のことを知っていないと、議論が本質的にかみ合わないし、真に新しいものは生まれないのだ。
Posted by ブクログ
渋滞に関する最新研究。アリや人や車などの自己駆動粒子の動作分析を排除体積効果を使ってモデル化している。なかなか渋滞の分析というのは面白くまた難しいものである。
Posted by ブクログ
文字どおり、渋滞を真面目に論じている。渋滞を数式モデル化し、交通渋滞のみならずインターネットのトラフィックの渋滞など、話はどんどん広がる。
ヒト、アリ、パケット、エレベータ。
ニュートン粒子と自己駆動系粒子という二分化は単純だがわかりやすい。
かかれたのが2006年と10年以上前。その後の交通網の整備、ネットの発達、AIや機械学習の導入事例増加、という現状を受けて、この筆者現在の考えがどうなっているか聞いてみたい。
Posted by ブクログ
以前読んだ本と大して変りない感想しかないので何を書こうか迷っているのですが(笑)、本書が出版されて10年経過した現在、渋滞学はどこまで進展したのでしょうか。
応用範囲が極めて広いのが渋滞学で、それゆえ本学問の発展は他分野の進展も必要なので、時間がかかってしまうのは仕方ないのですが……今後の発展に期待です。
僕の評価はA-にします。
Posted by ブクログ
交通の渋滞から、人の渋滞、アリ、ネットワークの渋滞まで色々な渋滞があり、様々な分野の問題を単純化して画一的に捉える面白さ。締めに、理学と工学を横断的に理解のある人が今後必要だと作者は説いている。
Posted by ブクログ
●『渋滞学』(西成活裕/新潮選書)
渋滞というのは、目の前にあれば不快だし、どっから始まるかもわかんないし、なんだか正体がわからない「ぬえ」のようなモノという認識だった。ところが、近年ではこの「ぬえ」のしっぽをつかまえているっぽいつーか、ちゃんと「学問」になってるっぽい。
具体的には、簡単なモデルをつくって、それを動かしながら検証していくと。そのモデルというのは、こんなの。
□□●●□●□□●□□□
四角い箱□の1コマに、●は1個だけ入ることができる。で、1コマ先が空いてれば移動できる。こんなふうに。
1)□□●●●□●□□●□□□
2)□□●●□●□●□□●□□
3)□□●□●□●□●□□●□
もちろん、□を0、●を1として(0010101010010)と表すこともできる。こうして渋滞をモデル化することで、コンピューターにのっけてシミュレーションして……ということができるようになって、渋滞を物理学的に研究できるようになってきた。なるほどね~。
で、この本では、車の渋滞に限らず、人の渋滞、アリの渋滞、インターネットの渋滞、はては人の細胞の中での渋滞なんかをとりあげて、それがどういうしくみで起きてるのかを明らかにしてる。「渋滞」という不快な現象の裏に、どんな法則があるのかというのがわかってくると、ちょっとなんだか楽しいぞ。
科学の先端の話というのは、現実生活とどう結びついているのかがわかりにくい話が多い。そこんところ、この「渋滞学」というのは、すぐに役に立つので身近に感じるし、メリットもわかりやすい。最後まで退屈しないで、楽しめる本だった。
Posted by ブクログ
一番心に残ったのは、自然渋滞の発生する原因。体感しない程度の緩い勾配・サグによってもたらされるのね。確かに考えてみればなるほど納得。気づいたら10-20kmスピード落ちてること、確かにありますもんね。
Posted by ブクログ
渋滞学って色んな分野で応用が効くんだな。所謂渋滞の仕組みから始まって、電車の混雑、蟻の隊列、ネットワークの伝送速度、電車の運行などへ。まだまだ分からないことが多い分野の様だけど、研究が進んだら経済に与える営業は計り知れないよね。こういった基礎研究にもちゃんと予算がつけられるような社会にしないとね。
Posted by ブクログ
渋滞はくるまばかりでなく、インターネットのデータや駅の改札口でも発生しています。いかに単純なモデルで渋滞を表現できるか、なんか物理学にも通じる考え方です渋滞をシステム工学的にかんがえて、いろいろな分野に応用するのは、けっこうおもしろいと思いました。
Posted by ブクログ
会社の研修時に参考本で挙げられていたので興味があり、読んでみた。
理系でない自分が読むと、理系の人の考え方が多少なりとも理解できたような。ただし、結構真剣に読まないと頭に入ってこない内容。電車の渋滞理由やインターネットの渋滞など興味深い事例もあり。
手にとって理系の内容に挫けず、最後まではきちんと読み終えられて、一安心できた。
Posted by ブクログ
頂き本。
大学自体に先輩が検証してましたね。
渋滞とは何かと高速道路で渋滞が発生する理由から始まって、
人、アリ、世界、ネットワークなど様々な渋滞について原因を含めて説明してくれている本。
一部は流し読みですが、勉強になりました。
Posted by ブクログ
普段た体験したことのある渋滞や待ち時間を計算や式に表して説明しているのがすごいと思った。イライラすることもここまで式にしたり、何で起きるのか分かるようになったなると怒りなどの感情はなくなると思う。だから勉強しようと思った。
Posted by ブクログ
理系分野をあんまり勉強してない人にも読みやすい本かと思ったら、結構ちゃんと読まないと次の内容を理解できなかった。多分普段から触れてる人はめっちゃすらすら読めるんだろうなって思いながら...
事例紹介は楽しかった。
Posted by ブクログ
渋滞の原因て聞いたことはあったが、この本がネタか。
モデルで考えることの効率と効果をいろんな事例で語っていて面白い。
理学部と工学部の違いなんて触れてるのもいかにも現場の先生みたいで。
でもこの本で、誰かが仕事の提出を遅らせると、後の工程がどんどん遅れるという話に還元させる上司がいるのも困ったもんだりした。
Posted by ブクログ
半分わかったかどうか。全体を通して思ったこと。何故か会社の会議の動員予測について、「うちの会社の会議は微分化し過ぎかとおもう。得られた結果を要素還元的なアプローチで料理できてないなあ、科学的でないな〜」と、しみじみおもってしまいました。
Posted by ブクログ
さまざまな流れの停滞を数理モデルによってシミューレーションしている。内容は、高速道路の車の渋滞、地下街や航空機から避難する時の人の渋滞、アリのフェロモン走行による渋滞、ネットのパケット渋滞、山火事(渋滞が起これば拡散しない)、人体内の分子モーター(神経繊維内部でタンパク質を運搬する)などである。基本的には、人や車は自己駆動粒子であり、ニュートン力学に従わないし、流体の運動法則であるベルヌーイの定理(流体の速度は通過する部分の断面積に反比例する)もなりたたない。数学的モデルとしては、ASEP(前方が空きならば進め、同じ場所には一つしか入れない)で解析するのだが、高速道路の渋滞などはスロースタートルールを加えると、渋滞特有の「人」字カーブがあらわれるそうである。しかし、アリでは追い抜きが怒らず、バッファに収まらないパケットは破棄されるなど、流体によってそれぞれに特長がある。また、建築法も引いており、一つの非常口から逃げられる人数は幅1mあたり1.5人/秒、60mをこえる地下道では、どの場所からでも30m以内(普通に歩いて23秒)に直接地上へ抜ける道があり、粒体でも人でも出口が粒体の直径の6倍あれば、「目詰まり」がおこらない。こういった知識は渋滞がおきた時にどれくらいで逃げられるかを計算できるので重要な知識だろう。粉粒体の運動は「ブラジルナッツ運動」(大きな粒が浮く)などまだ数学的に解けないものが多く、砂時計の内部の動きもまだ嚴密に示す式がないそうだ。今後の渋滞学はネットワーク理論やゲーム理論(協力や譲りあい等)と連携して進める必要があると指摘している。お金が貯まるなどといった現象も渋滞として考えられるそうだが、これはまだ分からないらしい。
Posted by ブクログ
渋滞をシミュレートする理論として有効なセルオートマトンモデル。その単純版ともいえるASEP(非対称単純排除過程Asymmetric Simple Exclusion Process)。もっとも単純な例ではセルの半数以上に玉があれば、どんな初期状態でも最後はクラスターが発生するという。おもしろい。臨界状態で1/2おきる。閾値か。
平均速度×交通密度=交通流量。これが基本式だと。フジテレビでやっていたサーキット場で渋滞を再現した実験は、筆者たちがやったんだ。
これらはおもしろかったが、本書ではアリ、インターネットの渋滞にも議論がおよび、これらの渋滞もセルオートマトンモデルで再現、解析が可能という。
ただ、個人的には車の渋滞の発生過程をもう少し突っ込んで解説してほしかった。
坂道などのサグとブレーキの連鎖はよく言われる理屈と変わらない。驚くような解説を期待したこちらが間違っていたか。