【感想・ネタバレ】大久保利通―「知」を結ぶ指導者―(新潮選書)のレビュー

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Posted by ブクログ

 著者の瀧井氏は10年以上も前に伊藤博文を「知」の政治家としてとらえて中公新書に上梓したが、本書はその「知」を誰から、どのようなものとして継承したのかを明らかにした書といえる。
 それは攘夷という狂乱の騒ぎの中で福沢を始めとする洋学の徒が説いた近代的な意味の「公」publicという観念を大久保や木戸も倒幕の嵐を潜り抜けるうちに体得し、それがあってはじめて尊皇攘夷の薩長が新政府になると尊皇開国に転じて文明開化の新政府を演ずるという曲芸もどきの大転換ができたのだろう。
 たいへんな労作である。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

衆に動かされない、ある意味真っ直ぐな人として浮かび上がらせる視座からの本。違う見方もあるだろうとは思うが、木戸孝允への態度などはこのような見方からすんなりと頷ける

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2023年01月02日

Posted by ブクログ

これまで強権的な冷酷なリアリストと評価されてきた大久保利通を、「羊飼いとしての指導者」たる、知識の媒介者としての政治家であったと実証的に描く。
大久保利通を通して幕末維新の政治史の理解が深まった。大久保利通日記など随所でナマの史料が引用されていて、説得性があった(本文には史料の現代語訳が記載され、註でその原文もつけるという形式が多用されていたが、とても丁寧なつくりだと思った)。
伊藤博文が漸進主義者だとの認識はこれまでも持っていたが、大久保利通こそ明治政府の漸進主義の淵源であったとの認識を新たにした。近代日本でまがりなりにも立憲制が定着したのは、大久保や伊藤の漸進主義的方針の賜という面が少なからずあると思う。
大久保をはじめとする幕末の志士たちの学習の在り方としての、討議を重視する「会読」という概念は初めて知り、勉強になった。また、大久保と木戸孝允の関係性がこんなに密であったというのも発見だった。あと、これも今まであまり知らなかったが、台湾出兵時の清との交渉の場面が実に興味深かった。

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2022年12月25日

Posted by ブクログ

司馬遼太郎の大久保利通観というか、単なる私自身の偏った見方という方が正しい気もするが、大久保利通に対して、実行力や交渉力のある知的で理性的な存在として思い込んでいた。それが本著を読む事で揺らぐ。

一例として、岩倉具視の大久保評。
木戸は先見あるも、すねて不平を鳴らし、表面に議論をせず、陰に局外の者へ何かと不平咄をなすは木戸の弊なり。大久保は才なし、史記なし、只確乎と動かぬが長所なり。

木戸孝允の評価は、何となくこんな感じという気がする。司馬遼太郎も同じような人物評だ。大久保は才無しというのは意外であった。その根拠が本著に示される。ただ、そうは言っても幕末に影響を行使した人物。決して才がないと言う事では無い。この辺の見方が面白い所である。

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2023年07月12日

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