あらすじ
殺人というタブーにふれる行為において、殺人者を最も魅了し興奮させた手段は毒を用いること……毒薬には妖しい魅力が満ちている。それは殺す者と殺される者の間に、劇的シチュエーションをもたらす。数ある殺人のなかでも、「毒殺」こそが犯罪の芸術なのだ! 毒薬と毒殺事件をめぐる異色のエッセイ集。
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Posted by ブクログ
毒の文化史。挿絵つき。紀元前から人は毒を使ってきたのか。。挿絵、真剣なものから気が抜ける緩さのものまであって面白いです。
大好きボルジア家に1章割かれているのが嬉しいです。内容はまぁ…こうなりますよね、と。毒関係で取り上げるとこうなるしかないです。
有名な(?)毒殺事件の数々も興味深いです。
…そういえば、わりに最近読んだ小説でシアン化合物を服用した人を解毒するエピソードありました。脱臭用の炭と合成甘味料と水だった気がします…配合がわからないので知ってても実行は難しそう。解毒出来ないか窒息させてしまうかどっちかになる素人は。。
Posted by ブクログ
毒をモチーフに文化史を語るエッセイ。独自の美意識がこれでもかと眼前に示され、本当に興味深かった。
出てくる毒殺魔について、より知りたいと思ってネットで調べると、Wikipediaなどにほとんど同じことが書いてあり、出典に「毒薬の手帖」とあることがたくさんあって、さすが澁澤龍彦、と思うのと同時に、ネット上とはいえ百科事典の出典がそれなりの書物ではなく本人も堂々名乗っている「エッセイ」でよいのか?という気がした。まあ、これは、本書には全く関係ないことだけれど。
端々の文章のフレーズ、組み立て方に『虚無への供物』を思わせるものがあり、中井英夫も澁澤龍彦も幻想文学の人であるから、文体、文のつながりにそういう特徴があるのかしらと思ったりした。どうかしら。
序文にあるように、毒殺は女の手段というのはよく聞く言葉だけど、実際どうなのかわからんし、男尊女卑的というか、固定観念的な決めつけなのでは、と思ってた。
でも、このエッセイを読み進めるにつれ、まあ、偏執狂的、殺人のために殺人を行うような人はともかく、そうでない限りは妖術師や黒魔術や黒ミサに頼って夫を殺そうとした中世や近世ヨーロッパの貴婦人たちは、それ以外に夫・男性から逃れるすべがなかった人もいたのではと思ったりした。
離婚を認めないカトリックで別れたくても別れられず、または別れたらたちまち生活が立ちゆかないなど。あと、それこそルイ14世のフランス宮廷のような、夫が出世のために妻を公娼として差し出すようなことが当然の習わしになってしまったら、もしかしたらそういう非常手段に訴えることも、あるのかも。
殺すのはどうかと思うけど、まあ、そういう人たちにとって、解剖もろくに行われないような当時であれば、毒殺は他の方法と違って自然死と思わせ、自然と未亡人なり、恋人に死に別れた人になれるという点で、女性にとっては便利な殺人方法だったんだろうな。
澁澤龍彦はそんなこと考えてないし、恐るべき女殺人者、みたいな書き方してるけど、女が毒殺を選ぶ歴史的背景みたいなものはすごくありそうだよなー。実際男を殺そうと思ったら、刃物やらの凶器を使うより、そっちが確実だものね。