【感想・ネタバレ】わたしはあなたの涙になりたいのレビュー

あらすじ

これは、涙で始まり、涙で終わる物語。

全身が塩に変わって崩れていく奇病「塩化病」。その病で母親を亡くした少年・三枝八雲は、小学校の音楽室でひとりの少女と出会った。

美しく天才的なピアノ奏者であるその少女の名は、五十嵐揺月。鍵盤に触れる繊細なその指でいじめっ子の鼻を掴みひねり上げ、母親の過剰な期待に応えるべく人知れず努力する。さまざまな揺月の姿を誰よりも近いところから見ていた八雲は、我知らず彼女に心惹かれていく。

小学校を卒業し、ますます美しく魅力的に成長した揺月は、人々の崇拝と恋慕の対象となっていった。高校に進学する頃、すでにプロのピアニストとして活躍していた揺月はイタリアへと留学してしまう。世界を舞台にする揺月と、何者でもない自分との間にある圧倒的な差を痛感した八雲は、やがて小説を書き始める。

揺月との再会はある日唐突に訪れた――その再会が、自分の運命を大きく変えるものになることをその時の彼は知る由もなかった。

これは、涙で始まり、涙で終わる物語。

第16回小学館ライトノベル大賞にて、最高賞である大賞を受賞。
ゲスト審査員を務めたアニメ監督・磯光雄氏は、「審査なんかとんでもない。美しい物語をありがとう」と、本作へ最大級の賛辞を送った。

※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

美しい物語だった。
所々作者の考えの芯のようなものが見え隠れして情熱が伝わってきた。
2人が幼少期から大人になるまでの全てを物語に起こしているので当然ではあるが、それ以上に彼らの人生の全てを綴っているように感じた。それが登場人物の心の深みを生み出していて、まるで仲のいい友達の話を聞いているかのようだった。
細々とした比喩も綺麗で、コミカルな擬音も物語の可愛らしさを演出していて読んでいて楽しかった。
この本は長い間心の片隅に残り続けると思う。美しい作品に出会えてよかった。

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2025年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても綺麗な話だった。題名の理由に涙した。キーワードも特殊設定も上手く生きてる。体が塩になる病気が登場する小説はあったけれどこれは完全に別物。現代社会にうまく溶けてる。自分が福島県出身故に『そうなるか…?』みたいな疑問は残ったけれどご愛嬌。ピアノの美しさや引用されている過去の方達が主人公に反映されてていい。『物語化』をひとつの物語で語るのが好き。人生がコンテンツになってしまうこと、それを消費してしまうことへの提示が鮮やか。最後のビデオが別れと未来を象徴していて辛くも美しい。すごく、小説を書きたくなった。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少し前にミリ猫を読み、感想を書きたくなりまして。

作中でも出てきますが、
ショパンの、花に隠された大砲という表現がそのまま当てはまる作品なのでは? と読後しばらくして思います。
「感動」といった帯が巻かれたり、そうしたレビューが増えるほど、この作品はさらに完成していくのだと思いました。

大砲を探してもよいし、花を眺めるももちろんOK。感動してもよいし、感動しなくてもよい。あらゆる姿勢を許してくれるといいますか、優しい物語を作られるなぁと思いました。

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2023年04月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

泣いた。涙で始まって涙で終わるって書いてあったから2回も泣くのか…と思ってたけど最後だけ泣いた。揺月ちゃんの優しい、でも自分の芯がちゃんとあるっていうところがかっこよかった。八雲くんはとてもダメダメだけど素直な所もあって優しいんだなぁ~。と思う所が多かった。柚月ちゃんが死んでしまうときの八雲くんの優しさが包み込まれるようで優しい涙になった。どんな人でもこの本を読んでいるときは優しくなれるような気がした

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2022年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ぱっと見の「よくある難病もの」というコーティングを剥がしてみれば、根底にあるのは感動を消費することへの批判と、世の中に溢れる「泣ける作品」への肯定。
特に災害や病気を当事者の意志関係なく勝手にお涙頂戴として軽く消費することについての否定は、揺月だけじゃなくて著者自身の気持ちでもあるんじゃないかなって思った。
(著者さん、地元郡山でなんかそういう嫌な目に遭ったのかな……)

もちろん素直に難病ものとして読むのも正しい楽しみ方だと思う。
この小説自体が「泣ける作品」のガワを纏っている以上、読み手が感動したならそれもまた「アリ」な読み方なんじゃないかなって。

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2022年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

舞台は福島県郡山市。
福島、、、、となると、タイトルとあいまって震災が題材かなと思った。ピアノを弾く少女が表紙なので、あの「奇跡のピアノ」かな、と思った。
ダイビングシーンがプロローグにあるので、
震災で沈んだものを連想して、なおさらそう思った。(震災の物語、ではなかった)
2022年、今年の夏の高校野球。ベスト4まで勝ち進んだ聖光学院の野球部が実名で出てくる。
主人公八雲の母が、塩化病という難病にかかってしまうところから物語は始まっていく。
震災や聖光学院、太宰治の『トカトントン』や、
ショパンコンクール、ワルシャワ侵攻、という本物が出てくるので、塩化病がなんかポーンと突き抜けた不思議な感覚だった。
天才ピアニストの揺月との出会いと成長。
母を失い、心のよりどころを揺月に見出していく八雲。揺月もまた、八雲は心の支えだったようで。。。その後イタリアに留学した揺月は、塩化病になってしまう。。

私としては、清水のエピソードと、ポーランドワルシャワ(ショパンの物語)がいいなと思った。
軽さと軽やかさの違い、という文章があって、
揺月の魂は軽やかだけど軽くはない、と書かれていた。なるほどなと思った。

たまたま重なってしまったのだろうが、
戦禍のワルシャワは現在のウクライナを思わせ、
さらに聖光学院が出てくるので、それら「現在」と
震災という「少し前の過去」が、実生活の時間の経過という妙なリアリティを持って、
病でも戦でも災でも、愛するもの(人も街も、腕や足も)が失われるということ、を私に突きつける気がした。それらを何か別のことに利用する是非も。

ただ、あちこちに小さな違和感があって、ん?と、ひっかかると、スッと引き戻される気がした。
たとえば、母を失ってひとりになった小3の八雲が
ひとり暮らしをしてる違和感。これは父のところに行くか施設に入るとこだよなと思ってしまう。
(児童相談所に保護される案件だわ)
揺月を失って家に引きこもるにも、大量の食料を買い込んでいるところも違和感。
憔悴してたら食べることなんて考えないと思うが、、、と思ってしまった。
連絡がつかなかったら心配して家に来そうなものなのに、2年もの間、清水も父さえも来ないのかという違和感。とか。。

ともあれ、読んでいてピアノの調べが聴こえる気がしたし、
あの義手や義足は本当に出来ればいいなと思うし、
揺月のビデオはすてきだった。ラストで初めてタイトルの意味がわかった。
リアルとファンタジーを合わせた「濃い」物語だった。

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2022年12月20日

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