あらすじ
断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは日本は何も変わらない。
これは冷笑ではない。もっと大事なことに目を向けようという呼びかけだ。何がもっと大事なのか? 選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることだ。ゲームのルールを変えること、つまり革命である――。
22世紀に向けて、読むと社会の見え方が変わる唯一無二の一冊。
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Posted by ブクログ
【総評】
- インターネットの普及に伴う社会変容と、民主主義における意思決定の遅れとのギャップはますます深刻化している
- この課題にどう向き合い、どのような未来を描くべきかを考えるための重要な視点を提供する一冊
- 著者が提唱する「無意識民主主義」は、現行の民主主義の限界を鋭く指摘し、興味深い構想を提示している
- 100年後には、類似のシステムが実現する可能性があると感じさせる
- 思考を更新したい人や、民主主義の未来に関心がある人におすすめ
〜以下、内容メモ〜
【0】民主主義の衰退
- インターネットの普及が民主主義を危機的状況に追い込んでいる
- SNSがイデオロギーの分断を加速
- 社会の急速な変化に対して、従来の民主主義による意思決定が遅すぎる
【1】闘争
- 選挙のUI設計や液体民主主義導入など、民主主義を改善する動きが存在
- しかし、現行の制度内で当選した政治家が改革を進める可能性は低い
【2】逃走
- 民主主義に対する失望から、一部のエリートが政治から距離を置く傾向
- ただし、この個別的な動きでは社会全体の変革には繋がらず、根本的な解決には至らない
【3】構想 〜無意識民主主義〜
- 人間のデータをセンシングし、政策ごとの重要度を明確化
- アルゴリズムに基づき政策を決定し、社会の意識や行動データを反映
- これにより、従来の民主主義の遅れを克服し、社会の変化に即応できる可能性
- 結果として、民主主義の質と速度を向上させる可能性を秘めている
Posted by ブクログ
成田さんがメディアで発信している内容を更に詳しくまとめたもののように感じた。
中学生にも分かる言葉で噛み砕いて説明してくれているので、どの年代でも読みやすいと思う。
特に行政DXによる民主主義の再生のところは、かなり面白かった。
また、執筆に関して全て自身で完結されていることを知り、本の重みが強くなった気がした。
Posted by ブクログ
本作『22世紀の民主主義』は、「既存の民主主義は故障しており、選挙に行くだけでは社会は変わらない」と断じます。その上で、民主主義再生のために「闘争(改革)」「逃走(民主ヘイブン)」、そして「構想(無意識データ民主主義=アルゴリズムによる意思決定)」という三本柱を提示。特に無意識データ民主主義では、膨大なデータとアルゴリズムで政策決定を自動化し、効率と公平性を高めようとします
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成田氏といえば、近頃テレビでもお見掛けをすることが多くなった若手の学者さん。
本作では鋭く(既存の)民主主義の終焉を宣言。
初めの1、2章を読んでいて氏の民主主義への絶望、人間への絶望を深く感じました。
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民主主義と資本主義という対立するような主義の二本立てにあって、資本主義の先頭にいるいわゆる新自由主義的な人たちは独自の国家をつくろうという動きもちらほら。タレントが税率の低い国などに国外移住するはその一番分かりやすい形かと思います。
他方、民主の人たちは「下方に引っ張られる」方向。SNSの浸透により、政治家のレベルもまた下がる傾向。挙句は、なるべく優しい簡単な言葉でしゃべらざるをえない。いきおい、口当たりの良さ・ウケでしか政治家は選ばれなくなる。そうした中で、利害の異なる幾つかの世代の多数決にあっては、少数派の若者は負け試合をせざるを得ない。
こういう背景にあって、新たな民主主義の構築を模索するという話です。
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私の理解するところでいうと、氏の提案するアップデート版民主主義とは、AIとビッグデータによる問題洗い出しと政策決定です。
例えばネット上のつぶやきだったり、動画だったり、そうした膨大なデータから世の中の人の不安や問題点・関心を洗い出し、それに対して適切なイシューの整理と優先順位、そして適切な政策を打つ、と。
具体的に想像してみます。
あるいはもう少し卑近なデータも収集されるかもしれません。例えばスマートウォッチから収集される睡眠データや体重・エクササイズのデータ等はあまねく国のストレージに送信され、ここから国民の健康状態とそれに対する政府の施策を決定。
あるいは、コンビニやスーパーのPOSのデータや各種の金融動向データから、今後の金利政策や通商政策をAIが決定。
このようにしてデータ至上的ではあるものの、意識した問題しか捉えられない人間とちがい、無意識の問題をもデータとしてAIがあぶり出してくれよう、というものだと思います。
まあ確かに、今の少数の支持を得ただけで当選するポンコツ政治家が一部の利害関係者の問題しか議論できないとすれば、このようなデータを背景にAIでハンドルした方が良いかもしれません。
少なくともマイノリティにとっての切実な問題も俎上に上がるでしょうし、握りつぶされることはないでしょう。問題は優先順位付けのアルゴリズムだけかもしれません。
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もちろん、私も読んでいて恐怖は感じました。
すわ、ビッグブラザー世界の爆誕だ、と。
選挙や民主主義とは話が違いますが、それこそ浮気なんかもうできない時代がそこまで来ている気がします。
ケータイやスマートウォッチやらのデータが常に吸い上げられて、それがスパコンで計算されるようになると、仮に異性の部下が悪い酔いしてしまい、終電間際に送っていくなんていうシチュエーション。政府から『終電30分未満。あなたは既婚者です。会社の異性と一緒に居る可能性があります。至急行動を変えてください』なんてLINEで来たりして。
パターナリズムと愚行権はAIとどう折り合いをつけるのでしょうかね。
あるいは、こうして政治もAIに取り上げられ、人間は人間にしかできないことをしてください、なんていうと一体人間にしかできないことってなんだろう?とか考えてしまいます。
人間同士で喧嘩でもしているか?あるいはセックスでもしまくるのか?というか若ければそれもあるのかもだけど、老人は?
ただ、こうしたことは本作の本筋からは外れますね。
飽くまで不平等で欠陥の多い民主主義をアップデートしようとするために、データとAIによる開かれた政治を展開するという話でした。
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ということで成田氏の斬新な提言でした。
変わりゆく未来に一抹の不安はありますが、政治に限って言えば私は成田氏の意見は非常に面白いと思います。今のところ賛成。
自分の子どもたちの未来・将来世代の世の中を憂うる現代人ならば、一度読んでみてよいと思います。