【感想・ネタバレ】おかえり横道世之介のレビュー

あらすじ

人生のダメな時期、万歳。人生のスランプ、万々歳。
青春小説の金字塔、待望の続篇。

バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐこの男。名を横道世之介という。いわゆる人生のダメな時期にあるのだが、なぜか彼の周りには笑顔が絶えない。鮨職人を目指す女友達、大学時代からの親友、美しきヤンママとその息子。そんな人々の思いが交錯する27年後。オリンピックに沸く東京で、小さな奇跡が生まれる。
『続 横道世之介』を改題。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

とても良い。世之介の行く末が判っているから盛り上げにくいはずだけど、それを逆手に取って今現在の皆の立ち位置を描く。概ね世之介のいない人生を立派に生き抜いている。
大きな影響を受けたと思われる人が殆どいないのが一層面白い。でも思い出すと何故だかほっこりしてしまう。
今回もいい出来でした。もう一個続編が有るのね。
この魔法のような話がまだまだ続くのかしらん。
楽しみです。

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前作があまりにも衝撃的な終わり方をしたもので、続編なんて全く考えられなかったけれど、読んでみたらあまりにも世之介が変わっていなくて、泣けてきそう。

世之介は変わらず頼りなくて押しが弱くて、どこか鈍くてピント外れで、優しくてポジティブで、ちょっといい加減でせこい。
でも、善良。

例えば知り合いの女の子が頭を五分刈りにした時、「なんで?」って聞かない。
言いたければ自分で言うでしょ、というスタンス。
自分のことばで理由を話せるようになった時、問題は乗り越えられていたり、答えが本人の心の中に生まれていたりする。
世之介は決して人を否定しないので、緩やかに背中を押してもらえた気がするだろう。

人生が上手くいかない時期に、それでも当たり前の毎日の中で笑って過ごしていた世之介。
思い出すエピソードも、大したことないものばかり。
今はもう会うこともない世之介とのそんなささやかな繋がりが、浜ちゃんや、コモロンや、桜子と亮太や、隼人までをも変えていく。

自分自身をも持て余しているような世之介の自然体な生き方が、損得で考えると圧倒的に損なはずなのに、たいしてそれを気にしていないように見える(本人的には気にしているらしいが)おおらかさといい加減さが、ささやかな善良さが、確実に誰かの人生を好転させる。

日当たりのいいリビングのソファで読んでいたせいか、ずっと胸のあたりが温かく感じられて、きっと笑顔で読んでいたと思う。
桜子の運命の人ではなかったかもしれないけれど、桜子と亮太という母子の運命を確実に替えた人ではあった。

続編がとっくに出版されているのは知っていたけど、少年編の予定もあるとは嬉しい限り。
さえないけれども温かい世之介の人生を、もっと楽しみたいから。

0
2025年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文庫化で購入。
バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐこの男。名を横道世之介という。いわゆる人生のダメな時期にあるのだが、なぜか彼の周りには笑顔が絶えない。鮨職人を目指す女友達、大学時代からの親友、美しきヤンママとその息子。そんな人々の思いが交錯する27年後。オリンピックに沸く東京で、小さな奇跡が生まれる。

構成が素晴らしすぎる。
未来の描写の時、ここに世之介がいたらどんな感じだったのかなぁと思わずにはいられない…。
世之介は本当に優しい人。自然と人に寄り添う優しさで。
線路に落ちた人を助けようとして亡くなるっていうのがまさにそう。
“本当に不思議だった。世之介兄ちゃんが亡くなったという話には、まったくピンとこなかったのに、線路に落ちた人を救おうと、そこへ飛び降りる世之介兄ちゃんの姿はすぐに浮かんだ。”

本当に好きな物語だ。


<2025.5再読>
1993.4~1994.3、24~25歳の世之介の一年間。
一応大学は卒業したものの、就職できずにバイトとパチンコで食いつないでいる世之介。
普通に就職してる姿が想像できない笑
てか留年してる!
花小金井→祖師ヶ谷大蔵→荻窪、そして今は池袋に。

加藤も倉持も祥子ちゃんも出てこなくて、交友関係が変わったんだなぁと少し寂しくもあり。
同じ留年組のコモロン、鮨職人を目指す浜ちゃん、桜子と息子の亮太、桜子の家族が世之介の今の身の回りの人々。
世之介の亮太への対応が見習いたい。
子供を育てた経験もないのに、なんでそんなに寄り添えるんだろう。すごいよ。

最後の方で、世之介の撮った写真が地方の写真コンテストの佳作に入り、その審査員のおじいちゃんの手伝いをすることに。

ラストの桜子の兄・隼人から亮太への手紙。
亡くなってなお、思い出される存在の世之介。
“世界中を船で回っていると、本当にこの世界にはいろんな国があります。そしていろんな問題があります。目を覆いたくなるようなこと。悲しみ。痛み。憤り。本当に奇跡でも起こってくれないかと思います。そんなとき、ふと浮かんでくるのが、あの頼りない世之介の顔なんです。”

この手紙の一文を読んで、前作で助けたボートピープルの人たち、特にあの赤ちゃんは元気に生きているのかな、と気になった。

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2025年06月02日

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