【感想・ネタバレ】決闘 ネット「光の道」革命のレビュー

あらすじ

2015年をめどに日本中の全所帯に光ケーブルを引き、ブロードバンド環境を整えようという「光の道」構想。「光の道」推進派のソフトバンクの孫社長と、これに「全面不同意」を表明したITジャーナリスト・佐々木氏の“時間無制限・一本勝負”。ツイッター上の果たし状から始まった白熱対談のすべてを収録し、あらたに佐々木氏による「いざ、巌流島へ!」と「ソフトバンクは“モンゴル帝国軍”である」の2章を加筆した増補版。孫正義は“平成の龍馬”になれるのか?

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 研究室の先輩に貸して頂いた本。とても面白かった。ただ内容が、というより、2人の登場人物の人間性に面白味を覚えた。

 本書は2010年5月13日に行われた孫正義さんと佐々木俊尚による対談のまとめである。当時民主党政権は"光の道構想"を掲げており、その構想の提案・実行者として孫さんが注目を浴びていた。孫さんは当時"国費0円で光ファイバー普及率を100%する"と主張していた。そこへ佐々木俊尚さんがTwitter上で真っ向から反論。これがきっかけとなり、対談が実現した。

 個人的に思うのは、孫さんと佐々木さんは似たような考え方を持っているが、人間の気質としては間反対である、ということだ。孫さんは事業者で、佐々木さんはメディアであることがそれを如実に表わしていると思う。片や断固たる決意を持って物事を進めていく人であり、片や状況を俯瞰しリスクを批判しつぶしていく人、という言い方もできるかもしれない。別にどちらの方が良いという話ではないが、個人的には孫さんの発言の方が共感を覚える瞬間が多かった。"光の道"に関する対談なのでどうしても孫さんがプレイヤー色を帯びてしまうのは仕方のないことであり、もちろん佐々木さんの批判も的を得ているように感じる時も多々あったが、後半になればなるほど、佐々木さんの発言は屁理屈のように聞こえたり、整理されているように見えて実は整理されていない発言が目立ったように感じた。特に序盤の"コンテンツ・コンテナ・コンベア"という概念を用いた佐々木さんの発言は一見的を得ているようだが、各ワードの意味する範囲が広く、全く汎用的でないように感じた。

それに対し孫さんは繰り返し、「明確なVisionを打ち出し、それを叫び続ければそのVisionは叶う」と繰り返し発言していた。これに関しては強く共感した。ただ孫さんの発言もなんとなく、ところどころに誇張表現が含まれているように感じた。

また2人の対談以外にとても興味深かった内容があった。それは「ソフトバンクはモンゴル帝国である」という佐々木さんのコラムである。特に13世紀のモンゴル帝国が権力を極めたため、西ヨーロッパ諸国は陸を追われ、海に追い出され、それによってヨーロッパの帝国支配の歴史がスタートしたという説は、知的好奇心を刺激された。佐々木さんが紹介していた
『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』は是非読んでみたいと思った。

議論の内容には良かった点や、よくわからなかった点、よくないと感じた点等多くあるが、何よりこのような対談が二人の直接対話から始まり、オープンな場で議論されたという事実が大きな進歩なのだと思った。

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2013年03月18日

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