あらすじ
★日本初「買わない人=未顧客」を理解するための教科書
★ノンユーザーやライトユーザーの獲得に特化した理論やフレームワークを紹介
★100ブランド以上で活用された、市場拡大のエッセンスを1冊にまとめて解説!
「買わない人」から目を背けるのは、もう止めませんか?ビジネスでは買う人=顧客が大事にされますが、事業を成長させるには買わない人=未顧客にも目を向ける必要があります。
どの企業のどんな商品でも、「知らない・買わない・興味のない未顧客」が市場の大半を占めています。売上を増やして事業を成長させるには、そうした「買ってくれない未顧客」を理解して、新しく1回買ってもらわなければいけません。
本書は、「未顧客を理解して市場を拡大するための教科書」です。
日本ではあまり知られていませんが、未顧客へのマーケティングは、ファンやロイヤル顧客へのマーケティングとは大きく異なります。本書は、海外の豊富な先行研究に基づくエビデンスを示しながら、未顧客を理解して事業成長するためのマーケティング原則を、マンガや図表を用いて丁寧に解説します。
また、本書は実践を重視した内容になっています。実務で大切なのは「だから、どうすればよいのか?」という手の動かし方です。本書を読み終わったとき、「買ってくれない人とどう向き合えばよいのか」に答えが見つかることでしょう。マーケティング担当者はもちろん、販売、企画、開発などに携わるビジネスパーソン必携の1冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
◾️マーケティングは依然として数のゲームである。ブランドの成長は主に浸透率の増加によってもたらされるのであって、ロイヤルティではない。
(1)ヘビーユーザーは絶対数が少ない
(2)ヘビーユーザーにさらに購入してもらうのは難しい
(3)既存顧客の認識や行動を広告で変えることは難しい
(4)既存顧客へのアクティベーション施策は効果期間が短い
(5)ROIを成果指標として追っても売上のトップラインが増えるわけではない
(6)ロイヤルティは、ロイヤルティ施策によって高まるのではなく、浸透率の増加に伴って高まる
先の保育士さんの方法は、お風呂の機能をただ伝える(体をきれいにする)のではなく、子供の欲求(遊びたい)を満たすように、お風呂の特徴(水回り)を生かした体験(髪を泡で変形させる遊びの楽しさ)を提案しています。これにより、遊びたいという「欲求」、お風呂に入るという「行動」、楽しい水遊びという「報酬」の間に新しいループ(利用機会)が生まれ、そこにブランド(お風呂)を位置付けているわけです(図表1-5)。このように再解釈したブランド(お風呂)の価値を効果的に伝えるためのメッセージが、「お庭で土遊びをしたら、次は、お風呂で水遊びしよう」「泡で変身しよう」といった声掛けです。ブランド(お風呂)が未顧客(子供)にとって、どんなシーンでどんな報酬になるのかを端的に表す良いキャッチコピーです。
もちろんこれだけで、全員がお風呂を好きになるわけではありません。大事なのはそこではなく、「ブランドへの入り口が1つ増えれば、それだけ浸透率も高まる」ということです。繰り返しになりますが、未顧客に対してはまず手数を増やして、ブランドへたどり着く確率を高める必要があります。ですからこのように、ブランドへのミクロな入り口を生活の中に作っていくことが市場拡大のカギになるのです。
未顧客をこのようなペルソナで理解しようとすると失敗します。まず、人となりとブランドへの無関心は関係ありません。関心がないとは、特定の価値観や考え方をしている「から」関心がないのではなく、「ただ」関心がないのです。自分の価値観に合う合わない以前に、合うか合わないかの検討対象にさえならないから無関心なのです。ですから未顧客のペルソナを作ったり、未顧客をプロファイリングしようとしたりしても徒労に終わります。
ブランドのフォロワーやファンコミュニティなどで購買率が高くなるのも同じ理屈です。もともとブランドに興味関心があるからフォローもするし、購買率も高いというだけの話であって、それをもって興味関心が薄い別の集団、つまり未顧客の興味喚起ができるとは言えないわけです。詳しくは4-5で解説しますが、これはロッサー・リーブスの誤謬といって、広告効果測定の分野では何十年も前から「やってはいけないことリスト」のトップに来る間違いです。
・NBDディリクレ
ブランドがどれだけ売れるかは、
1)そのブランドが属する商品カテゴリーがどれだけ利用されるか
2)そのときに自社ブランドがどれだけ選ばれるか(購買の選択肢に入るか)
という2段階で決まる
CEPとブランドを結び付ける施策を作り出すフレームワーク「未顧客理解の5原則」
原則1:文脈が変われば意味が変わり、意味が変わると価値も変わる 再解釈の重要性
原則2:未顧客は本来戦うべき市場を見通すための「レンズ」である 市場の再解釈
原則3:行動の背後にある欲求、抑圧、報酬から「顧客の合理」を理解する ターゲットの再解釈
原則4:「ブランドの特徴」×「顧客への報酬」=文脈最適のベネフィット ベネフィットの再解釈
原則5:モノの売り方ではなく、モノが使われる行動の増やし方を考える ポジショニングの再解釈
・新しいCEPの仮説を立てるためのアプローチ
(1)現在の用途から新しいCEPを見つけるアプローチ
(2)便益競合から新しいCEPを見つけるアプローチ
(3)未顧客の行動から新しいCEPを見つけるアプローチ
・着目すべき未顧客 (少数派)の行動例
▶不合理、矛盾:マーケターから見ると説明がつかない、合理的と思え ない行動
▶想定外の使い方: マーケターが想定していた用途や利用シーン以外で の使われ方
▶工夫や自助行動: 専用の商品やサービスを採用せず、自分なりの工夫や代替品を用いた問題解決が行われる行動
▶極端な購買行動:利用額や利用人数、購買量や間隔、時期など、特定の側面が極端に偏った行動
▶イベントやシーズン: ある特定の時期や季節に集中する行動
▶繰り返される行動: 特定の時間や場所など、同じ条件下でのみ繰り返 される行動
▶準拠集団への帰属意識:特定の文化や集団への帰属意識が表れている 行動。その集団の価値観やルールが色濃く表れている行動
しかし未顧客は、その場で思い付いたブランドの中から、最も簡単に手に入れられるもので済ませます。こうした傾向は一般的に「利用可能性ヒューリスティクス」として知られています(Tversky and Kahneman,1973)。この視座に立つと、先ほどの式の分母(商品にたどり着くまでのコスト)の重要性がうかがわれます。コストと言っても価格だけの話ではありません。どこで買えるか、どんな種類があるのか、どういうときに使うのか、どんな体験が得られるのかなど、処理する情報が増えるほど未顧客にとっては負担になります。お分かりかと思いますが、差別化するほど未顧客に処理させる情報は増えます。
一度原点に立ち戻ってみましょう。そもそもブランドの役割は消費者に「考えさせない」ことです(Binet,&Carter,2018)。なぜこのプランドを買うべきか、他と比べてどこが優れているのかといった情報収集、理解、比較や検討などのプロセス(コスト)を省略し、「こういうときはこれ」と選ばれるからこそ「ブランド」なのです。であれば、知覚できない差別化や競合のまねごとをするのではなく、いかに「自社ブランドから文脈に適した報酬が得られる」と思ってもらうかを突き詰めるべきです。
マーケターの合理:SNSやファンコミュニティ強化→未顧客もブランドを好きになってくれ るのでは?
しかし、そうはなりません。ファンの間では「ブランドが好き→だからブランドを買う」が成り立ちますが、未顧客では成り立たないからです。「ある変数間の相関が高くなるのが当たり前の集団」からデータを集めて相関が高いことを確認しても、それ以外の集団に外挿できる(当てはまる)因果関係を証明したことにはなりません。ファンはもともとブランドが好きな人たちですから、ファンヘアンケートを実施し、「コミュニティやイベントなどの施策(ファン施策)に魅力を感じたか」「それらの施策が購買につながったか」と聞けば、肯定的な答えが返ってくるでしょう。しかしそれをもって、「ファン施策」が未顧客に対しても効果があると言うことはできません。例えば、釣りが好きな人ほど天気予報には敏感になるでしょうが、天気予報を見たからといって、釣りに興味がない人が釣りを始めたりはしないですよね。
ひゅうこれは「ロッサー・リーブスの誤謬(Rosser Reeves Fallacy)」と呼ばれ、半世紀以上前から知られている間違いです。大事なことなのでもう少し詳しく説明しましょう。図表4-24を見てください。ファンの合理には「ブランドが好き」という交絡因子が存在するため「ファン施策→ブランド購入」が成立します。このとき、データとして残るのは「ファン施策→ブランド購入」という事実だけです。そこだけを切り取ると、未顧客にも「ファン施策→ブランド購入」が通用するかのように見えますが、未顧客の合理には「ブランドが好き」が存在しないので、バックドアの経路がありません。その結果、「ファン施策→プランド購入」の相関は消失する、つまり未顧客には効果がなくなるわけです。
逆に、このループを利用して行動変容を促したり、強化したりすることもできます。ここで、英国ロンドンのごみリサイクルを活発化させる「One bin is rubbish」というキャンペーンを紹介しましょう。
もし皆さんが、ごみのリサイクルを促す広告を考えてほしいと言われたら、どんな施策を考えますか。例えば、生物への影響や環境被害の深刻さを説いて、「今、自分たちにできることから始めよう」といったメッセージを思い付くかもしれません。環境意識を高めることでリサイクルをしてもらおうという図式ですね(図表4-26)。
ロンドンで採用された案は、「なぜリサイクルすべきか」を説得するのではなく、「どうしたら家のごみ箱周辺がきれいになるか」に着目したキャンペーンです。ごみ箱が1つしかないと、入り切らないピンや缶、小分けのごみなどが周辺にたまっていきます。それならごみ箱をもう1つ置けばいいわけです。つまり「One bin is rubbish (ごみ箱はすぐあふれる)」とは、「だから、もう1つごみ箱を置こう」という行動を促すメッセージなのです(Sutherland,2019 金井訳,2021)。
このメッセージが秀逸なのは、考え方や価値観を変えて行動を変えるというやり方ではなく、行動が起きやすい状況を作り出すことにフォーカスした点です。理由を説明して行動してもらうという視点だと、「環境や生き物を守るためにごみを分別しよう」「環境への責任があるからリサイクルすべき」というメッセージになります。しかし、行動の理由に納得してもらい、かつ行動も起こしてもらうというのは2段階の行動変容になります。
それに対して「もう1つごみ箱を置こう」というのはシンプルです。ごみ箱が2つあれば人は自然と分別するようになります。その結果、友人や近所の人に見られても恥ずかしくないという報酬が得られます(図表4-27)。それが次のリサイクルにつながります。つまり、ごみ箱をもう1つ増やすことが、行動経済学でいう「ナッジ」になっているわけです。
Posted by ブクログ
素人分野だけどとても面白かった。データを見て考えるのではなく、データから見える行動の文脈を考える事が重要。ペルソナの意味も自分は勘違いしてたし浸透率の重要性も改めて認識されられる。
Posted by ブクログ
●私が考えるこの本の結論
数式が示唆する規則性や法則性に基づいて文系的なアイデアを発揮することが大切
ブランドの成長はロイヤルティではなく、浸透率を増加させること
企業の合理ではなく、顧客の合理に目を向けること
①この本を読んだ目的
よりマーケティングを深掘りすること
②学んだこと
<はじめに>
・ペルソナ設定ではなく、顧客の行動原理(顧客の合理)を理解することが重要
・顧客が不合理に見えるのは、マーケター自身が慣れ親しんだ既知の枠組み(ex; 平均的な顧客像)の中で顧客の行動を解釈しようとするから
→今自分が陥っている点
・未顧客に購買してもらうにはまず
Posted by ブクログ
良書だとは思うのだが、いかんせん読みづらいのよなぁ…(私の読解力が足りないだけの可能性は大いにあるが)。個人的に左開きの本ってなーんか読みづらい。右開きにして欲しい。
Posted by ブクログ
モノの価値もそうだが、購入は文脈次第。特に、未顧客は使ったことがないから入口の文脈がないと買えない、それが何になるのかを考える必要がある
顧客理解の実務はインタビューや行動観察。選択盲があるので、なぜそうなのかと理由を聞かない。行動や事実を聞いてそこから欲求を探る
Posted by ブクログ
書籍「未顧客理解」を読み終えて
~新しい顧客を獲得するための「視点」とは?~
【はじめに】
ビジネス書「未顧客理解」は、営業活動や採用活動において新しい顧客や社員を獲得するためのヒントを提供する一冊です。未顧客とは、まだ契約を獲得していない相手を指し、彼らを理解することがビジネスの成功に繋がります。この本を通じて、未顧客をどのように理解し、アプローチするかを学びました。
【未顧客理解の重要性】
未顧客とは、自社とまだ接点がない相手です。営業活動では見込み客、採用活動では面接前の候補者を指します。彼らを理解するためには、まず自社の存在を知らない、関心がない、関係がないという現実を認識することが重要です。このスタート地点から、未顧客に対してどのようにアプローチするかを考える必要があります。
【未顧客理解の難しさ】
既存顧客の分析には購買データやアンケートデータが役立ちますが、未顧客にはそのようなデータがありません。そのため、未顧客の行動の原則やルールを理解することが求められます。未顧客を取り囲む状況を洗い出し、それを文脈として理解することが重要です。
【未顧客を文脈で理解する】
未顧客を文脈で理解するためには、以下のポイントを考慮します:
•感情:未顧客はどんな気持ちでいるのか?
•抑圧:何を懸念して購買を躊躇しているのか?
•報酬:どのようなメリットがあれば前向きに検討してくれるのか?
これらの要素を理解することで、未顧客に対して効果的なアプローチが可能になります。
【まとめ】
「未顧客理解」は、売るという発想から脱却し、未顧客の状況や文脈を理解することの重要性を説いています。自社製品を利用するシーンを起点に、未顧客の不安や懸念を払拭するメッセージを考えることが求められます。この本を読むことで、未顧客に対する新しい視点を得ることができました。ビジネス書が苦手な方でも、具体的な事例や分かりやすい解説が多く、読みやすい一冊です。
ぜひ、未顧客理解を深めるために手に取ってみてください。
Posted by ブクログ
評価に困る。自分の実力が評価するのに足りていない気がする。分かりやすくいいと思った部分と、分からなかった部分が混在する。
○良かった点
・売上を構成する顧客数と購買頻度の関係は負の二項分布に従うため、ノンユーザーおよびライトユーザーに購入してもらうことが重要、というロジックは分かりやすかった。
・未顧客はデータに現れてこないため、ペルソナやSTPなどが無意味である。
・ダブルジョパディの法則は数式を見たのが初めてだったので非常に勉強になった。購買頻度と浸透率のどちらを高めればいいのか。購買頻度の上限はどの程度かが分かるというのは新鮮だった。
○微妙だった点
4章が抽象的で腑に落ちなかった。例も著者が持ってきた例であり、実務でどう役に立つのかイメージしにくかった。
○まとめ
全体的に知らない知識が多く、興味深かった。マーケティングに関わる業務をしているなら一読の価値はあると思う。
Posted by ブクログ
前著もHowゴリゴリだった記憶があるが今回も。消費財マーケターに対しての思考フレームワークとしては、相変わらず超わかりやすいし使いやすさもありそう。
一方、第1提案でまずはこのフレームワークで企画持っておく、ぐらいの初手のイメージ。で、それをどう定量的または定性的にエビデンスを固めていくか、が本当のノウハウという理解。
Posted by ブクログ
大変に評価は悩む
未顧客理解とあるが何が未顧客なのかが若干疑問。文脈で混ざってる気もする。定義はあるが、いまいちしっくりこない。
どちらかというと、顧客や顧客へのエンゲージメントを高めようというところに対してのアンチテーゼという意味だったら理解はできるかもしれない。
そういう意味でもう1回読んでもいいかなと思う。
ただ、この辺突っ飛ばしてマーケティングという意味合いで言えば面白いと思う。
Posted by ブクログ
今はまだ顧客ではない人たちに対し、どのように買ってもらうのかをマーケティングの学術的研究などの理論を交えながら学べる本。
今の顧客に対してロイヤリティを高める施策も大事だが、それ以上に未顧客への購買施策を充実させたほうが良い理由などが明確に説明されており、なぜその視点が抜けていたんだろうと反省しながら読んでいた。
Posted by ブクログ
ターゲットが狭いのをニッチ狙ってるからと言い訳しないように考えるための本。
未顧客の分析はジョブ理論にも通じるところがあるなと思いながら読んだが、コンテキストにより顧客としては合理的に売る側から見ると不合理に見えるのをどう解き明かすかなど、色々と頭の整理になった。
浸透率とダブルジョパディの法則がキーワードとして残った。
Posted by ブクログ
ブランディングの科学を読んだことがあったので既視感のある内容が多かったですが、未顧客理解の5原則は学びが多かったです。
「モノの売り方ではなく、モノが使われる行動の増やし方を考える」という視点に切り替えることの重要性を改めて認識し、その手順もとても参考になりました。
Posted by ブクログ
未顧客理解は理由→行動ではなく行動→理由が肝要。行動の背景にはきっかけ、抑圧、欲求があり、行動結果のベネフィットが顧客に提示できる価値。ベネフィットを再解釈するためにオルタネイトモデルは有用と感じた。