あらすじ
なぜ日本的組織は硬直化するのか? 変革を阻むものの正体は? 日本史における巨大組織の盛衰から組織の「死に至る病」を検証し、未来への処方箋を提示する。作家・経済評論家にして経済企画庁長官を務めた著者の二十年以上にわたる組織論研究の集大成。著者解説「今こそ、読んで欲しい作品」を収録した決定版。
〈目次〉
はじめに
第1章 巨大組織の生成から崩壊まで――三つのケース・スタディー
(1)豊臣家――人事圧力シンドロームと成功体験の失敗
(2)帝国陸海軍――共同体化で滅亡した機能組織
(3)日本石炭産業――「環境への過剰適応」で消滅した巨大産業
第2章 組織とは何か
(1)組織の要素
(2)「良い組織」とは
(3)組織の目的
(4)共同体と機能体
(5)強い機能組織を作った織田信長――もう一つのケース・スタディー
第3章 組織管理の機能と適材
(1)人間学と組織論
(2)トップの役割
(3)現場指揮者と参謀
(4)得難い補佐役
(5)後継者
第4章 組織の「死に至る病」
(1)機能体の共同体化
(2)環境への過剰適応
(3)成功体験への埋没
(4)組織体質の点検
(5)組織気質の点検
第5章 社会が変わる、組織が変わる
(1)知価革命と組織変化
(2)情報技術の変化
(3)高齢化社会と人事圧力シンドローム
第6章 これからの組織――変革への五つのキーワード
(1)経営環境の大変化
(2)三比主義からの脱却
(3)「価格-利益=コスト」の発想
(4)「利益質」の提言
(5)ヒューマンウェア(対人技術)の確立
(6)経営の理念=あなたの会社の理想像は
著者解説
今こそ、読んで欲しい作品
(1)日本経済の曲がり角に著した自慢の著作
(2)二〇二〇年のあとこそ重大
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった。日本史や日本軍を例にして、組織の衰退について、詳細に分析している本。
どの組織も成熟してくると、人事圧力シンドロームに陥り、それが衰退の要因になるといったことが印象深い。この事象は、組織の安定欲求と個人の成長欲求の軋轢によるもの。
例えば、ベンチャー企業が規模を拡大して大企業になる際に起こる。創業時からの成長意欲の高い社員や成長を期待して入社する社員は、更なる成長を求めるものの、会社側は仕組みや制度づくりで安定させたり、新たな市場を開拓する必要がある。組織内の成長欲求の圧力に屈して、拡大しようとした結果、失敗してしまう。
これを本書では、豊臣秀吉を例にして説明している。秀吉は、貧しい身分から組織を大きくすることに成功するものの、天下統一した後は家臣に分け与える土地がなくなり、新たな領地拡大のために朝鮮出兵をする。しかし、これが失敗に陥り、秀吉の組織は崩壊していく。
このように現代の大企業も拡大路線に走り、失敗に陥っている例は多い。
また企業は量的拡大ではなく、質的拡大に注力して行くべきといった主張もしている。量的な指標の代表例は、三比主義、つまり前年比、他社比、予算比である。これらの指標に依存している以上、苦しいラットレースは続くため、質的評価に移行すべきと述べている。
指標としては、外延性や継続性、好感度といったものを重み付けした回帰モデルのようなものを提唱している。モデルの内容はともかく、量から質への転換は、これからより重要になる。というか、未だに多くの企業は、売上高の対前年比何%増加みたいな指標から抜け出せていない。
まだまだ企業の価値や考えを転換するのは時間がかかるだろうし、そのうち環境への過剰適応によって衰退して行くんだとも思う。
本書は90年台に出版されているものの、現代にも通じる内容になる。筆者の慧眼に驚く。再読したい。
Posted by ブクログ
なかなかちゃんと組織を論証できている本が存在しない中、科学根拠ではなく仮説ベースではあるものの、歴史を振り返りながら納得感ある整理をしている本。組織論の本としては名著ではないだろうか。
Posted by ブクログ
組織論について考えたことのない私には、高い視座を求められる本だった。大切なことが書かれているのに、理解しきれない歯痒さ。同時に、未知の世界に足を踏み入れることのできる本の楽しさも感じた。