あらすじ
本書は、経営に貢献できる工場を造るために、深く理解をしておくべきことを解説した工場長のための教科書です。工場長や製造部長といった生産拠点を経営するトップ層はもちろん、製造課長や技術課長など、工場において重要な位置を占める工場マネージャーのための教科書でもあります。また、近い将来に工場を統括する職責に就くべき人にも向けています。
今の日本の製造業は、どこも限られたヒト・モノ・カネの経営資源の中で四苦八苦しています。中でも苦しんでいるのが、ヒト。特に工場経営を担うべき中核人材の育成です。必要な知識やスキルがないままにOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)と称していきなり工場経営の任に就いても、期待通りの経営成果を出すことが難しいのは言うまでもありません。本書は、あくまでも現場視点に立った上で、経営に貢献できる工場を経営できる工場長や工場マネージャーに必要なスキルを網羅した内容になっています。
経営に貢献しつつ、世界レベルで戦える強い工場を造り上げるために重要なのは、工場としてやるべきことの本質を深く理解し、そしてやるべきことを確実に行い、かつ工場を含めたサプライチェーン全体を俯瞰して考えるスキルです。本書では、工場管理の基本、サプライチェーンを通してきちんと造るための条件、改善活動を通して品質をより良くするための条件、原価管理を通してきちんと儲(もう)けるための条件といった、世界で戦える工場長に必須のスキルの習得を狙っています。
机上の議論ではなく、実際にグローバル市場で戦っている企業の人材育成の現場で、何度も議論を重ね、練りに練られた内容になっている実務者必携の1冊です。
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Posted by ブクログ
工場長を読書として意識した、競争力をもった工場をどう作っていけばいいかを描いた書。
簿記1級の工業簿記と、大野耐一先生の「トヨタの生産方式」を合わせたような内容。基本的な内容を網羅しているとおもいますが、具体的な例があればもっと良かったと思います。内容は量もあって結構抽象的なので、ちょっとイメージを持ちにくい。具体的な事例がほしかった。巻末に参考文献があったのは、よかった。
内容はオーソドックスで、MRP,CRP,ERP,RPA,IOT,AI などの要素はさわりぐらい。Industry4.0は次のテーマか?
気になったのは、以下です。
工場運営をどうすべきか、工場のものづくりとはどうあるべきかに焦点を当てている。「当たり前のことをすれば、当たり前に成果が出る」
組織のリーダとしての視点と、組織の管理者としての視点で、工場を見る
管理の基本は、PDCAを回すこと
工場管理者の10の視点
<対人関係> ①組織の長として ②組織のリーダとして ③対外的な窓口として
<情報> ④情報収集 ⑤情報拡散 ⑥スポークスマン
<意思決定> ⑦起業家 ⑧問題解決 ⑨資源配分 ⑩交渉者
・事業存続の観点 ①外部環境の把握 ②自社内部環境の把握 ③課題を踏まえ、中期経営計画を策定 ④年度計画を策定 ⑤年度計画の実行
・キャッシュフロー 先に支払いが発生し、後になって顧客からの代金が入る 黒字倒産にならないように
・在庫は悪
・QCD
・VE(価値工学)
・5S 整理・整頓・清掃・清潔・躾
・生産管理 計画、実施、統制
・生産計画の見える化、生産進捗の見える化
・運転資金の把握
・標準時間、標準在庫など水準の導入
・品質は造り込むもの ①要求品質 ②設計品質 ③製造品質 ④使用品質
・QC工程図 作業標準書 教育訓練
・データの捏造、改ざん、等、品質不正を防ぐには、「仕事の見える化」が必要
・三現主義 ①現場、②現物、③現実 を確認する、しかも直ちに
・過去の経験や、思い込みを排して、現実を直視する
・生産性改善 インプットを減らす、アウトプットを増やす、どちらもやる
・トヨタの7つのムダ ①つくりすぎ、②手待ち、③非稼働、④動作、⑤運搬、⑥加工、⑦停滞(仕掛、在庫)
+2つのムダ ⑧不良の作成(手直し)、⑨検査
・工場を俯瞰する 人時間、機械時間を分析してムダをさがす
・現状把握と現状分析(ASISーTOBE)、QC7道具、課題の統合整理
・最終章は、管理会計と生産管理の分析です
・原価の分解、変動費と固定費による損益分岐点、限界利益分析、直接原価計算、コストドライバー、ABC分析、セールスミックス等
目次は次の通りです。
はじめに
第1章 「強い工場」をつくるための向上管理とは
1.1 工場マネージャーの役割を理解する
1.2 工場マネージャーが知っておくべき経営の基本とは
1.3 工場のあるべき姿を描けるようになる
1.4 経営に貢献できる工場づくりとは
第2章 工場のものづくり力を世界レベルに強化する
2.1 ものづくりの基本「5S」と経営的な意味とは
2.2 生産計画と在庫管理は工場運営の肝
2.3 品質の造り込みの考え方を理解する
2.4 品質・安全のコンプライアンスなくして生産はない
第3章 工場の競争力を世界レベルに磨き上げる
3.1 改善のベースは徹底した三現主義へのこだわり
3.2 生産性改善はムダ・ロスの徹底削減から
3.3 工場全体を俯瞰するための人時間・機械時間の概念を知る
3.4 現状の改善から、現状の延長線上にはない改革へ
第4章 工場の稼ぐ力を世界レベルに引き上げる
4.1 製造原価の構造を理解せよ
4.2 原価の構造が分かれば外注品・調達品のコストもわかる
4.3 現状の原価をあるべき原価にもっていく
4.4 これからの時代に勝ち残れる工場になるために
おわりに