【感想・ネタバレ】当確師のレビュー

あらすじ

来年秋に行われる次期市長選で、圧勝が確実視される現職を倒して欲しい――。当選確率99%を約束する選挙コンサルタント・聖達磨の元に、莫大な報酬と共に無謀な依頼が持ち込まれた。候補者の選定から任された聖は、首都機能補完都市にも選ばれた高天市に向かう。この勝負、勝ち目はあるのか!? 人間臭い選挙戦をリアルに描いた傑作ポリティカル・フィクション!

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Posted by ブクログ

『当確師』
選挙戦の裏側を抉る真山仁の傑作

1.真山仁さんの小説
社会の仕組みや人間ドラマを鋭く描き出してくれます。

参院選が迫るこの時期に『当確師』を読んだことは、非常にタイムリーで、その魅力に強く惹きつけられました。

この小説は、単なる政治ドラマに留まらず、私たちの固定観念を打ち破る「逆転劇」の舞台裏を鮮やかに描いています。

2.下馬評を覆す選挙戦の醍醐味
『当確師』の最大の魅力は、まさに「下馬評を逆転させる」という点にあります。誰もが当選不可能だと思っていた候補者が、当確師の手腕によって勝利を収める過程は、読んでいて胸がすくようなカタルシスを感じさせます。

世間の注目やメディアの報道に惑わされず、独自の視点と戦略で戦局を分析し、勝利への道を切り開いていく当確師の姿は、「物事は見かけによらない」という大切なメッセージを投げかけてくれます。

3.候補者選定から組織票の切り崩しまで
当確師の仕事は、私たちが想像する以上に多岐にわたります。

小説の中では、まず「候補者選定」から、徹底した「内偵」によって候補者を深く掘り下げていきます。
そして、対立候補や有権者の心理を読み解く「心理戦」が繰り広げられ、さらには、「組織票の切り崩し」といった、裏舞台での熾烈な戦いが描かれます。

これらの描写は、選挙がいかに複雑で、緻密な戦略が求められるものであるかを痛感させられます。

4.一年以上前から始まる勝利への準備
驚くべきは、これらの準備が「一年以上前から」進められているという事実です。選挙戦が公示されてから始まるものではなく、そのはるか前から水面下で周到な調査と準備が進められていることに、私は大きな衝撃を受けました。

当確師の冷静沈着な分析力と、先を見越した計画性、そして何よりも勝利への執念が、この物語を現実味のあるものにしています。

真山仁さんが描く『当確師』は、選挙という舞台を通して、人間のしたたかさ、賢さ、そして時に残酷な一面をも浮き彫りにする、まさに傑作と呼ぶにふさわしい一冊でした。

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2025年06月29日

Posted by ブクログ

真山仁『当確師』光文社文庫。

当選確率99%を約束する選挙コンサルタントの聖達磨を主人公にしたリアリティーあふれる選挙小説。

当選と落選とでは天国と地獄。選挙の時ばかりは平身低頭で有権者に御願いするのだが、当選するや手のひらを返したようにふんぞり返り、利権を貪る議員ばかり。今も昔もそれは同じで、そんな選挙にまつわる政治の裏側を面白可笑しくドラマチックに描いてみせた真山仁の手腕には感心する。

『当確師』を名乗る聖達磨という選挙コンサルタントはなかなかの策士で、過去に当選が危ぶまれる候補者を大逆転の大差で当選させるなどの奇跡を起こしてきた。

そんな聖達磨の元に来年秋に行われる高天市の次期市長選で、圧勝が確実視される現職を倒して欲しいという無謀な依頼が持ち込まれる。聖は三人の候補者から一人の立候補者を選定し、圧倒的に不利な選挙戦を戦い、当選させることが出来るのか……

~蛇足~

特に地方選挙は選挙戦が身近で行われるためか、国政選挙には無い生々しさがある。かつて自分が在籍していた会社が市政選挙に候補者を擁立し、会社をあげて選挙戦を行ったことがある。

天の邪鬼でへそ曲がりな自分は選挙活動には一切関わらず、端目でお祭り騒ぎを眺めていた。後援会や励ます会だのと訳の解らぬ会費を徴収されたり、出陣式や演説会への参加や投票を強要されたりと当時はとんでもないことが罷り通っていた。

それらを完全に拒否した自分の人事評価は当然の如く最悪だった。議員を送り出せば会社の宣伝にはなるし、会社にとって優位な政策が実行されることを期待したのだろうが、全く意味が無かった。

立候補者に選定された方も気の毒なもので、何期か議員を務めた後に力尽きて落選すると、会社側は彼を管理職に昇進させ、非組合員にするや強制的に退職させるという荒業に出た。下手すると社長や役員よりも貫禄のある元議員の肩書きを持つ社員の扱いに相当困ったのだろう。

本体価格640円
★★★★★

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2022年04月15日

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