あらすじ
GHQによる日本占領期、民間情報教育局(CIE)は「ウォー・ギルト・プログラム」を実施した。評論家の江藤淳はこれを「日本人に戦争の罪悪感を植え付けるための政策」と位置づけ、保守論壇では「洗脳」言説が支持を広げていったが、学術的な根拠に基づくものではない。この政策はどのように計画・実施され、日本人はどう受け止めたのか。複数の資料を通じて、日米双方の思惑と変化を明らかにする。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦争の本質は、負かした国の精神(正確に言えば『憲法』)を思い通りに染め上げることだ、とはルソーの言葉である。どうやら土地も奴隷も本質ではないらしい。本書にあるようにGHQがプロパガンダをやろうとしたことは確かだ。日本国民の精神を彼らの理想に合うように変えようとしたプロパガンダは、しかし、成功したのだろうか?昨今、一部で盛んなの陰謀祭の一角を占める保守系陰謀露店では、日本人の精神はGHQに洗脳されたという言説がしばしば叫ばれているという。この言説は、かつて1人の文芸評論家が著した本を拠り所としている。江藤淳の『閉ざされた言語空間』だ。江藤のこの著書には、しかし、問題がある…。
以上が本書の要旨である。一部の保守論壇が愛してやまない洗脳言説を、著者の賀茂道子氏が終始、冷静かつ丁寧に検証していく。
全5章構成だが、洗脳言説につては4章までである。最終章では、戦後の映像作品を通して、東京裁判で捕虜虐待の罪に問われたBC級戦犯についてを考察している。あまり扱われない内容だけに新しい視点を得ることができて、さらに、敗戦から現在に至るまでの日本人の戦争認識の変化への理解が深まるため、1〜4章のより深い理解の手助けにもなりそうだ。